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【連載】芳田賢明「memorygram」第31回

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テーマが変われば視点も変わる

みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第31回です。

先日、10年以上ぶりにポートレートの「作品」を撮影しました。

普段撮影している人物写真は、基本的にはコマーシャル用途やそれに準ずるものですから、その人の魅力をいかに伝えるかということがテーマになります。それはあくまで「その人」を撮っているわけで、自己表現のための写真ではありません。
それが「作品」となると、写真の性格が根本的に変わってきます。その写真で作者が何を表現するのか、何を伝えるのかが問われます。言ってみれば、物理的には他者を撮っているとしても、写真としては「自分」を撮ったものになるでしょう。

作品制作についてはずっと考えてきてはいたのですが、なかなか踏み出せずにいました。しかし今回機会があり、なぜ私は写真を撮るのか、なぜ人は写真を撮るのか、そんなことと向き合いながら、コンセプトを固めていきました。
まあ、やはり私の根本にあるのは「memorygram」で、もう一度その原点に戻り、これまでの思考をなぞるような作業にもなりました。
また同時に、自分がそれなりの歳になったことによって、目指す写真のビジョン(像)のようなものが、「未知」だけでなく「過去」を含むようになってきたように思います。

撮影を終えて、普段のコマーシャル向けの撮影とは違う、自分の視点に気づきました。
面白いなと思ったのは、モデルが写っていない写真を撮っていること、モデルの後ろ姿を撮っていること、モデルが遠くにいて小さく写っている写真を撮っていること。
コマーシャル用途であればほとんど切ることのないシャッター。撮っても基本的に使われないような写真です。
でも自分の表現となれば、コマーシャルでは採用されないような画だったとしても、必要なものであればどんな場面でも撮るわけです。

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こういう写真はライカじゃなきゃなかなか成立しないよなぁ、と思う。本当いつもいい仕事をしてくれます。

それともう一つ思ったのは、コマーシャルの時ほど光を意識していない、ということでした。
コマーシャルの場合は、いかに美しい写真を撮るか、いかにエモい写真にするか、そんなことを重視しています。そうなれば、光の入り方や、光の粒の見極めがとても重要です。おそらく、光を最重視してシャッターを切っています。
しかし今回は、自分の記憶や潜在意識のようなものとどれだけその写真が呼応するか、を最重視していたように思います。光についてももちろん見ていますが、美しさやエモさを追いかけて、あざとくなることは絶対に避けたいと思っていました。
今回はコンセプト的にズミクロン35mmを使っていたこともあるかもしれません。光で描くことよりも、状況を描くことでストーリーを浮かび上がらせることを考えていたように思います。

いずれ、しっかり発表できるときが来ると思います。
できれば、リアルの展示の形で。


【プロフィール】
芳田 賢明
(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/


dgpc_cover
芳田賢明 著、プロカメラマンに向けた[仕事に即役立つ本]
「誰も教えてくれなかった デジタル時代の写真づくり」
好評発売中

(ヨドバシ・ドット・コム)
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