珈琲をめぐる物語3
オーガニックとフェアトレード
最近ではスーパーマーケットの野菜売り場で見かけることが増えた、生産者の顔が見える表示。
また、指定業者などの表示によって、健康志向に応えた商品など増えております。
無農薬、有機農法など、野菜作りに於いて難しくて手間のかかる方法で生産された野菜が、健康志向のユーザーのリクエストに応えております。
もちろん値段は高くなりますし、生産されるものは完全に季節ものが中心です。
ハウス農法も格段に進歩し、減農薬や肥料の改良など、日進月歩の技術革新が図られています。
ある日、読んでいたマガジンにとある珈琲豆専門店の記事が載っていました。
自家焙煎と豆にこだわった、珈琲豆の販売のみ行っているお店でした。
記事を読んでいくと、全てオーガニックの豆を使用し、自家焙煎を行っています。
「自家焙煎のコーヒー豆小売店として日本で初めて有機JAS認証を取得、創業以来無農薬・有機栽培にこだわりを持って取り組んでいます」
というのがショップのポリシーです。
普段から珈琲を豆から淹れて飲んでいました。
豆のチョイスや挽き方などもある程度理解しているつもりです。
珈琲業者の担当やショップの人ともよく話をし、美味しい珈琲の定義なども自己流で固まっておりました。
そんな折に、ふと出会ったこの記事。
なぜか心に残るものがあり、大いなる興味を持ったのでした。
オーガニックの豆自体は出会ったことはありましたが、大きく興味を持つことはありませんでした。
今回、何故興味をひかれたのかは自分でも分かりませんでしたが、とにかくその珈琲を飲んでみたいと思ったのです。
早速、通販で注文し豆を購入しました。
オーガニックとなると値段も高めですし、送料もかかるので少し考えましたが興味が勝りました。
注文後は豆が届くのが待ち遠しかったです。
数日後、届いた豆で珈琲をいれてみました。
数種類購入した中から、店の顔である『ブレンド』を選択し、ペーパードリップで落としていきます。
ふむふむ、香りが柔らかいな。
早速飲んでみます。すると…ビックリするのです。
苦さがない!
珈琲ならではの味わいはすっきりと美味く、そしてなんといっても甘みを感じる。
雑味がないので、豆の味をしっかりと確認できる。
とにかく、体験したことのない旨さを感じることが出来ました。
そして気づいたこと。
珈琲の苦さは焙煎や豆の味だけではなく「農薬」だったのです。
それに気づいてから、珈琲にある濁りや嫌な苦みを認識するようになりました。
オーガニック至上主義の人と話をしたりもしましたが、別に無農薬に対してこだわりを持ってはいません。
野菜も普通のものを購入していますし、どちらかというと無農薬には興味がありません。
しかし、この珈琲のようにはっきりとした違いを感じると、美味いを選択してしまいます。
さらにこのショップはフェアトレードを応援しています。
貧しい国や貧富差のある農園労働者たちは、正当な報酬を得られずに労働させられていることがあります。
そんな労働者に対し、フェアな取引により正当な配分を届ける手助けをすることが目的です。
オーガニックにもフェアトレードに対しても、珈琲豆の販売店や専門家でアンチな考えをもっている人は多いです。
オーガニック自体を都市伝説と思っていたり、そこにあるものに対して批判や非難すらする声も。
世の中には割り切れないものが沢山ありますし、考え方もそれぞれですし、それでいいのです。
ぼくはこのお店の珈琲が大好きになり、そして美味しく飲んでいます。
ただそれだけのことです。
美味しいものは多くの人に同じく楽しんでほしい。でも分かち合える人だけでいいです。
嗜好品に誰もが好きなんてものはありませんが、好きになって楽しむことは幸せなことです。
日本でフェアトレードを謳おうとすると、団体が認定したラベルシールを貼ることになります。
団体は対象品に対して審査をし、審査を通過させてラベルを購入し商品に貼ることができます。
フェアトレードで輸入購入した商品であっても、申請しなければ日本でのフェアトレード承認ということはできません。
なんかそれも不条理に思えなくもないですよね。
労働者を守ることに利権が発生しているようにみえてしまいます。
正しく取引するための組織。
ラベルが1枚いくらかは知りません。でもそれが持つ意味に料金を設けることに?マークが浮かびます。
それってフェアなことなのかな。なんて考えると、確かに物事に対して濁った見方をしてしまいます。
フェアトレードで仕入れたものを、シールを貼らずにそのように仕入れましたと伝えるだけで十分です。
仕入れた段階できちんと生産者に対してフェアな取引がされていればよいことですから。
有機栽培の珈琲が旨いのではなく、その珈琲を美味しく仕上げて提供していることに対してのファンであるのです。
たまたまそこで販売している有機栽培の珈琲が美味しかったということなのです。
本当に美味しいんですよ。
珈琲は苦いのではない。
本当の珈琲は甘いんです。
これがぼくの答えなんです。
ウマいコーヒーは人と時間を豊かにしてくれるパートナーです。
苦手な人でも美味しく飲める、素晴らしいコーヒーの世界を体験してほしいです。
いつかそんなコーヒーを飲みながら、一緒にお喋りをしたいものですね。
それでは、そんなひと時に似合う曲をお届けいたします。
JAZZボサノバの名盤より。
スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルべルトで「イパネマの娘」。
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