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【連載】芳田賢明「memorygram」第12回

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「写ルンです」のレンズ×デジタルライカ×銀座

みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第12回です。

まだLeica Q2買ってません(笑)
だんだん各販売店ともに予約なしで買えるようになってきましたね。

ネガカラープリントの色調と質感が好きで写真を始めて、デジタルに移行してから15年間「フィルムっぽさの正体とは何か」を追求し続けてきた私。
著書に収録した座談会の中でも、「いわゆる『フィルムっぽさ』というのは実は『写ルンですっぽさ』なのではないか?」という仮説に触れています。
そこで今回は、「『写ルンです』のレンズをデジタルライカに付けて銀座を撮ってみた」をお送りします。

APC_0501
 
レンズはGIZMON Utulens。写ルンですのレンズを再利用してつくられているレンズです。
焦点距離は32mm、絞りはF16で固定。暗いです。実際の「写ルンです」のF値は10なので、カメラ用に加工されて1と1/3段暗くなっています。
マウントはL39マウント(ライカのスクリューマウントのLマウント)で、各種ミラーレス機のマウントアダプターを1種選択してセット購入する形になっています。

カメラはLeica M10にしました。
M9と迷いましたが、レンズが暗いのでそれなりに感度を上げないといけなくなるのと、何より撮影当日が雨だったので。
UtulensはL39マウントなので、L-M変換マウントアダプターを使って装着します。
なるべく「写ルンです」と同じ条件になるように、シャッタースピードは1/180秒、感度はレンズが暗くなる分を補正してISO1000にしておきました。ホワイトバランスもデーライトに設定し、カラーバランスはRAW現像で調整します。
 
UtulensとM10を組み合わせれば、ピント合わせ不要、薄型軽量、雨でも積極的に使える、ある意味最強のスナップカメラとなります。
約5,000円のレンズと約100万円のカメラ。素晴らしい組み合わせでワクワクしますね!
 
繰り出したのは雨の銀座、しかも日没2時間前。
連載のネタに困った結果、ギリギリの判断でやってきました。
しかし…そんなときにF16のレンズなんてノーフラッシュで使えたもんじゃない。まあ暗い暗い。
L5009764
「よくISO400のフィルムとこんな暗いレンズで写真撮ってたもんだ」と背面液晶を見て思うわけです。

なるべく「写ルンです」と同じようにするには、それでも暗いまま撮ってRAW現像(「写ルンです」でいうところのフロンティアでの補正にあたるでしょう)で無理やり明るくするのが正解ですが、そこはビビってしまい、ISO感度を3200〜10000と日没に向けて徐々に上げていき、そこはデジタルの恩恵にあずかりました。

しかしさすがM10、そこまで感度を上げても、カラーノイズですら粒揃いが綺麗。
それを活かすため、現像時の輝度ノイズ補正はゼロ、カラーノイズの補正のみ若干入れる程度で仕上げました。
L5009936
今回の撮影で一番気に入った写真。ISO10000ですよこれ。

L5009771
濡れた路面、バスのヘッドライトの光、部分的に広がるアンビエントライト。こういうのが好き。

RAW現像をしながら「あー、フィルムで撮ってた頃ってこういう感触だった」と思い出す。
L5009776
L5009821
もともとフィルムの頃って、「暗いものは暗く、明るいものは明るく」仕上げてたと思うんですよね。
デジタルで撮るようになって、いつしか「暗いものは明るく、明るいものはボリュームをつけて」仕上げるようになった気がします。

しかしライカを使っていると、さらにこういうローファイなレンズを使うとなおさら、暗いものを明るくしようとしたり、明るいものにボリュームを与えようとすると、なんだか画がつまらなくなる。
L5009844
L5009941
自ずと「ありのままを受け入れよう」という感情になる。

L5009779
もともと雨の撮影は好きじゃなかったんですが、ライカを使うようになって好きになりました。
それはライカの質感表現が素晴らしいから。
L5009902
L5009794
L5009803
雨のしっとりとした質感や、滴の粒感をとらえてくれるから。
晴れた日には光の粒を、霧の日には水蒸気の粒を、夜には様々な演色性を持った人工光の動きをとらえてくれるからです。
 
「写ルンですのレンズで撮影」なんていうと、ちょっとイロモノ感があると思うのですが、作品や作家性の高い仕事になら十分使えますね。
L5009876
この日は大きな台風が去った翌日で、人が少ない分、いつも以上に外国人の割合が多く、なんだか不思議な雰囲気でした。
 
最近はあまりスカッとする天気の日がないですが、しっかり晴れた日に再度この組み合わせでスナップしてみたい。
L5009787
それとやっぱり、いつもの小型フラッシュも使いながら、ポートレートで使ってみたいなぁ。
L5009937
ちなみに全てノーファインダーで撮ってます。


【プロフィール】
芳田 賢明
(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/


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芳田賢明 著、プロカメラマンに向けた[仕事に即役立つ本]
「誰も教えてくれなかった デジタル時代の写真づくり」
好評発売中

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