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【連載】大石孝次の「音楽な日常」第74回

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アメリカンコンプレックス

1980年はまさにアメリカ文化が大きなウェーブとして雪崩込んできた時代です。
子ども心にも70年代後半はまだ垢抜けていない雰囲気、イタリアンシャツにべルボトムな風潮が残る雰囲気が好きではありませんでした。
子どもの着る服にも少なからずそのトレンドは影響しており、自分が着ていたロングスリーブのプリントシャツはそんなテイストでした。
まだまだバンカラが主流だった時代です。「俺たち」シリーズがテレビの人気シリーズとして燦然と輝いていたのです。

しかし、80年を一つの機に音楽産業に転換が訪れます。その急先鋒がミュージックビデオです。
それまではFMラジオを中心としたラジオ文化が音楽発信の最先端でした。
FMのチャンネルごとの番組表をまとめた「FM Fan」や「週刊FM」など、音楽記事と連動した雑誌は音楽好きの必読本でした。
FMのエアチェックと「ぴあ」のライブ情報が自分たちにとって二大ニュースソースでした。

その当時から、唯一テレビで最新の音楽を紹介してくれていたのは「ベストヒットUSA」だけです。
そんなモノクロな時代に煌びやかな新しい音楽を教えてくれたのがミュージックビデオでした。
いち早く、広大な大地というアメリカの物理的世界観の中で、情報ソースを共有するツールとして有効だったのです。
文化・エリア・主義主張・宗教など様々なジャンルの共通する問題点を単純にクリアーするアイコンとして役に立ったはず。
数え切れないほどのFM局が乱立していたアメリカにおいて、ケーブル配信文化の成長と多チャンネル化は広大な面積に対して有効でした。

ラジオからテレビへ。
更にビデオカセットレコーダーの普及がさらに後押しをして、カセットテープから映像作品の記録へ進歩が始まりました。
ミュージックビデオを集めいち早く番組化していたのが、当時のUHF放送であったTVK(テレビ神奈川)です。
独自の音楽番組を70年代から制作していた同局は、他局と一線を画す番組作りを行っており、MVという新しいメディアを逃すことなく番組化していくのです。
当時は現在より番組は数多かったと思います。そのメインターゲットだったのが我々学生世代であり、そしてそのメインストリームに飛び込んでいくのです。

当時のUHF局はキー局と違い、別の存在価値が強かったのです。
地方では地元局がキー局など他局の番組を多く放送する役割がありました。
時代に合わせてそのあり方は進化しており、現在でもローカルな匂いは残しつつもデジタル放送開始後は存在感が変化いたしました。

70年代の終わり頃はFMラジオもワンスピーカーのモノが多かったです。
ステレオで番組聴取をするにはステレオ受信に対応しているオーディオコンポのチューナーで聴くことがヒエラルキーの頂点でした。
一番憶えているのは、床屋さんに行くと聞こえてくる独特な奥行きのある声と音の質感。
これが特別な感覚で、小学生の自分は異空間に入っていくような気持ちになりました。
個人店のヘアサロンに共通してあったそのステレオコンポが生みだす独特の雰囲気で、装置とラジオ番組が大きく貢献していました。
またそれがヘアカットに行く楽しみの一つでもありました。
ラジオのスピーカーから聴こえてくる音楽番組、外国人が流暢に喋り日本で紹介されていく様々な曲たち。
それは非日常であり、新しいものに触れワクワクした気持ちになる特別な時間でありました。
そんな音に対する憧れが音楽と向き合う人生の中で、現在に至るまで大切なファクターであると思います。

洋楽といわれる音楽に触れる機会は、MVをテレビで観る事が出来るようになり、日常の生活の中に確実に浸透していきました。
これはそんな話を当時していなかった友人と話をしてもみられた兆候で、少しづつ確実に我々少年少女の中に浸透していたのです。
夕方、学校から帰るとMVだけを流し続ける番組が延々と続いていました。その時間は誰にも邪魔されず自分がテレビを占領できる時間でした。
たっぷりと毎日、聴いたことのない曲や最新の人気楽曲を繰り返し聴き続けていました。
音楽のメインストリームが世界的に変化していたその時期、新しい手触りの音楽達はとても刺激的でした。

時同じくして、アメリカの西海岸から届いた手紙は、当時の若者たちに多大なる影響を及ぼしました。
雑誌の「POPEYE」や「Hot-Dog PRESS」などは、新しいカルチャーをどんどん運び込んでくれました。
広大なスペースをバックボーンにしたアメリカ大陸の文化をちっちゃな日本に浸透させていく、新アメリカプログラムは簡単に進行されていきます。

日本には西はLAから東はマンハッタン・NYまでの全ての情報が満載されたコピーアメリカの時代。
そして今ではアメリカを飲み込んでオリジナルな進化まで果たすようになりました。

細々した面白いアメリカナイズされたものについて話したかったのですが、先ずはどのような土壌があってアメリカンに仕上がっていったのか、そんな事情を非常に偏った側面から簡単に話してみました。
80年は新たに動き出した時。みんなその時を待っていたのです。大好きな時代が始まったのです。

そんな時代を象徴した映画「波の数だけ抱きしめて」この作品は最高に楽しいんです。
この映画の象徴的な曲を今回はお届けします。

松任谷由実で「Valentine’s RADIO」。

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