60回と駄目の関係性
この連載も気が付けば60回を迎えました。
なかなかに60回続けるというのは難しい事で、それほど根気の良い方ではない私としては頑張っているほうなのであります。
60という数字について何か語ってみようかと思ったのですが、特別60という数字が私にアピールしてくるものはあまりないのです。
そんな中、唯一気付いたのが60歳「還暦」です。
私の周りにいる大人であり、先輩である人たちの中に、今年還暦を迎える人が実は多いのです。
ふた昔前までは還暦と言えば会社を定年退職していた年齢であるので、それを体験している世代の人間からすると、やはりひとつ襟を正さないといけない年齢なのであります。
最近は65歳定年と世の中が変化しているので、なかなか昔のように簡単に引退は出来ないし、引退など出来るほどやさしい世の中でもなかったり。
そんな今年還暦の皆さんを一部勝手に紹介しますと、以前私が勤めていた会社の一番仲の良い先輩(このコラムで紹介した、一緒に列車の旅をした人)。
元の会社でご一緒した業界の先輩であり仲間である方。
地元横浜のどうしようもない本牧辺りの酔っ払いの先輩たち(私が主宰の「駄目な大人の会」の幹部たち)。
なかなかに迫力で社会的にもそれなりの人たちなのですが、この世代の人たちとどういう訳かご縁があるのでした。
そしてみんな酒好き。そして酔っ払い。でも皆さん仕事はちゃんと固い仕事だったりする。
なので社会性とプライべートの反社会的一面(各自酔っ払い方が違う)にさんざん振り回され続けているのです。
そんな先輩方の中で最も奇なる存在感を発揮する集団について少しお話ししたいと思います。
私が横浜で一時バーをやっていたころ、その店を蝕むかのようにやってきてくれた(感謝してますよマジで)アブナイ大人たち。
まず横浜中華街のバー業界では有名人でほぼすべての店を出禁になったような伝説の酔っ払いをはじめ、連鎖的に集まって来た不思議な人たちの溜まり場となったのです。
店を開店した最初の頃、仲間内のシンガーを呼んで狭い店ながらアコースティックライブをやったりしてました。
カウンターのみの小さな店にしてはなかなかに無謀な企画ではあったのですが、仲間内も楽しんで演ってくれていたのでレギュラー企画として行っておりました。
そんな模様を覗きに来てくれたのがきっかけで仲良くなったお客様が多数いらっしゃいました。
そこに友達を連れてきてくれたりして、アットホームな雰囲気を楽しんで頂いていたのでした。
そこまでは良かったのですが、その友人達が…なんとも様々な癖を持った奇人集団だったのです!
それは後から判明するのです!
そしてその友達を呼んでくれた人が、後に結成される横浜中華街あたりの出禁キャリアー集団的な曲者集団「駄目な大人の会」の会長に任命されるその人なのです。
今となっては10年程前のお話になるのでただの笑い話です。
社会的にこんなに駄目じゃ駄目でしょ!って言いたくなるような集団という事なのですね。
人は多かれ少なかれ『駄目』な要素を持ってはいるかと思います。
しかし、その駄目な感じが本当に可笑しいとか、アブナイとか、ありえな〜いとか、そんな不思議な性格や特技を持っている人たちが、ナントカホイホイに捕らえられたかのように我が店にやって来るのでした。
人は「無くて七癖」などと昔から言われるように、何らかの癖も持ち合わせていたり致します。
その中でも顕著に表れるのが酒癖と言われるものだったりします。
後に会長まで上り詰めた人(以下、会長)は、お酒が深まっていくと、とにかく熱く面倒くさく語りたくなる人でした。
最初は面白がっていたのですが、だんだんだんだん面倒になってまいります。
しかし、会長は酒量が増えるにつれてどんどんどんどん面倒度がアップしてまいります。
その様があまりに衝撃的でしょうもなくて、こんな人を見た事ない!という奇人変人、愛される駄目なおじさんとして「駄目な大人の会 会長」に任命されるに至りました。
会長の酔っ払い奇譚は語りだすと留まるところがありませんで、ここではほんの少ししかご紹介出来ませんが、その駄目っぷりは想像をはるかに超えた駄目なのです。
も〜笑えないくらい酷かったりするのですが、つい笑っちゃうのです。全く残念なのです。
数あるストーリーの中から1つだけご紹介しましょう。
ある日(確か平日でした)会長から「久しぶりに会う友人と行くからよろしく」との連絡があり、2人は中華街で夕食をしてから来店されました。
その頃、会長には不思議なブームがやってきていたのですが、心ゆくまで酒を飲もうと気合が入っていたみたいで、近所のホテルを予約して飲みに来る本気飲みモードに突入しておりました。
自宅までそんなに遠い訳でもないのですが、酔っぱらってすぐにベッドに倒れ込みたかったのか、家に帰るまでに倒れるのを回避するためなのか…店から歩いて1分程のホテルをキープして飲みに来ておりました。
こちらとしては懐かしい話に花を咲かせて楽しそうに飲んでもらえるのは嬉しい限りなのですが、この久しぶりのご友人も会長のお友達という事で相当の曲者だったのです!
ま〜〜〜トークの癖が強すぎて、普通に話をしているだけで相手は怒り出すだろうと言うような、なぜだかわからない挑戦的挑発的激情喧嘩腰的な荒くれおやじなのでした。
こんなオヤジも見た事ないっていうような強者。この2人が何故だか仲がいいのだから面白いものですね。
他のお客様の迷惑にならなければ別にいいのです。そういうことの無いようにだけ注意をして、何気に深酒のお付き合いをしておりました。
気が付けば随分と深い時間になっておりました。午前2時を過ぎた辺りでそろそろ閉店のお時間です。
2人とも大分に酔っぱらってしまいましたね。
結構フラついているんじゃないですか?
やばいやばい、当店の入り口には8段ほどちょっときつめの階段があるのです。
階段から落ちたら危険なので、先に出口に回ってフラついている会長に肩をかして「ハイ、手すりを使ってゆっくり降りますよ」っと酔っ払い介護的に付き添って一段づつゆっくり降ります。
この状況だけでも結構笑える状態なのですが、後ろからご友人の叫び声が聞こえます。
友「お〜〜〜〜い!」
私「なになに?どうしたの?」
友「馬鹿野郎!俺にも手を貸してくれ!」
だって。
会長が降りるのを待たせておいて、会長は電柱のところまで連れていって電柱にもたれかかせます。
真っ直ぐ立っていられないのね、かなりフラフラ。
戻って階段の上で待っているもう一人の酔っ払いおじさんの肩を持って、手すりに掴まらせて、ゆっくり一段づつ降ろしました。
こっちのおじさんも一人で立っていられないようなフラフラ加減。
もうどうしようもありません。
電柱から離れてフラフラとひっくり返りそうになっている会長に、もう一人のおじさんをよっかからせます。
正面から前倒しになっているおじさん2人をお互いによっかからせる訳です。
おぉ!これぞ「人」と言う字じゃないか!
金八先生が言っていた「人という字は人と人が支えあって出来た文字である」という事を体現している美しい姿だったのです。
真夜中の中華街の交差点、もたれあう2人のおじさんのシルエットだけが、静かな夜に奇妙にそびえ立っておりました。
店を片付けなきゃ…そう言いながら後ずさりした私は、笑いと恐怖の2つの気持ちが交錯する中、その場を去っていくのでした。
こんなようなことがしょっちゅうあったら、こりゃ駄目だ!っと思うでしょ。
まだまだ面白話は山のようにあるのですが、久しぶりに思い出してみると不思議な楽し〜い思い出になっておりました。
そんなみなさんが今年還暦ですよ。いや〜感慨深いものがありますね。
みんな赤いちゃんちゃんこを身にまとって、暴飲暴発してくれていたら嬉しいですね(笑)
久しぶりにみなさんと会って楽しくお酒を飲みたくなりました。
さあ、この「駄目な大人の会」のテーマソングである曲をご紹介したいと思います。
駄目会の幹部にミックと言うメンバーがいるのです。突如ミックジャガーが降臨してしまう神をも恐れぬロックおじさん(見た目はぜんぜんイメージ無し)。
ストーンズの曲が流れるとなぜか立ち上がってエアギターをかましたと思ったら、ストーンズになりきって曲を一緒に歌いだすのです。
もうその瞬間は狂気としか言えないボルテージなのです。
初めて見た時は怖い!としか言えなかった!
そんな私たちの「駄目な大人の会」テーマソングです。
The Rolling Stonesで「サティスファクション」お聴きください!
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