「コマフォト」寄稿の舞台裏
みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第6回です。
今回は、ライカの話を一旦お休みして、私としては大ニュースである、雑誌「コマフォト」さんへの寄稿とその裏側についてお話ししたいと思います。
「コマフォト」と略されるこの雑誌は、正式には「コマーシャル・フォト」といい、「プロフォトグラファーと広告クリエイターのための専門誌」と謳われている、写真や映像、広告関係のお仕事をされている方にはおなじみの雑誌。私も学生時代から長らく読んできています。
この「コマーシャル・フォト」の2019年4月号(3月15日発売)の解析特集「Panasonic LUMIX S1 & S1R」にて、解説記事と人物撮影を担当しました。
【15日発売・コマーシャル・フォト4月号】
◎別冊付録 CM・映像キャメラマン&ライトマンファイル2019
◎特集:男を撮る。(表紙:Jimi Franklin×吉沢亮)
◎解析特集:Panasonic LUMIX S1&S1R
◎うたテクネ 日本の名曲と6人のディレクター
◎フォトグラファー特集 皆倉亮https://t.co/UPwqFMpJFn pic.twitter.com/aaaCCqarzP— COMMERCIAL PHOTO (@genkoshacp) March 8, 2019
「LUMIX S1」「LUMIX S1R」は、パナソニック初の35mmフルサイズセンサー搭載のミラーレス一眼カメラ。
これまでのミラーレスのイメージである「小型軽量」とは一線を画し、プロをターゲットにした機種になっています。
この発売に先駆け、業務を想定したデモ機による人物と静物(いわゆる「ブツ撮り」)での実写テストを行いました。
今回はカラー8ページで、ファーストインプレッション、ロケでの人物撮影(朝・夜)、スタジオでの静物撮影について書いていて、なかなか濃い内容になっています。
多くのカメラ雑誌でこのカメラについてのレビュー記事が先行していたのですが、それらはメインの読者層がアマチュアカメラマンということもあり、ポートレートや風景撮影によるレビューが主なものでした。
しかし「コマフォト」はメインの読者層がプロや広告業界ということで、他のカメラ雑誌とは異なる視点・切り口での言及を心掛けました。静物撮影を盛り込んだのも、コマフォト独特のものだと思います。
人物撮影パートでは、ここ1年の作品撮りで組んでいるネリさんにモデルをお願いしました。
ネリさんは元アイドルなのですが、私としては完全にアーティストとして認識していて、その良いセンスを何らかの形で世の中に認知してもらえないものかと思っています。モデルとして活動しているわけではないのですが、「一緒に作品をつくりあげていく」という意識のある方です。
なので今回、人物撮影を行うことが決まって、モデルとして真っ先に思い浮かんだのはネリさんでした。
スケジュール上、先に夜の撮影になったのですが、当日はまさかの雨。
ですが、このカメラは防塵防滴。雨の夜というのはむしろテストには絶好の環境なのではないかと考えました。
ライカを使うようになって雨の撮影が好きになったということもあり、むしろテンションが上がりました(笑)。
幸い、雨は降ったり止んだり、たまに強めに降る程度で、楽しく撮影することができました。撮影は楽しいのがいちばん。
そして再び翌朝に集合。
この日は一転して雲ひとつない晴れ。誌面的にも暗い画が続かないので助かりました(笑)。
ロケ地は、元々ネリさんとの作品撮りを検討してロケハンを行っていた場所。スムーズに撮影が進みました。
普段はライカでポートレートを撮影しているため、カメラを振りながらシャッターを切ったり、9割方のピントでシャッターを切ったりする癖がついていて、完璧な解像力を持つこのカメラでそれをやってしまうと「ただの失敗写真」になってしまうため、気をつけながらの撮影でした。
午前中に撮影を終えて解散。私はそのままスタジオへ向かいます。
スタジオに着くと、すでに静物撮影のセッティングがほぼ完了していて、私とカメラの到着を待つばかりという状態。
静物撮影パートでは、これまで合成を前提にした物撮りを中心に組んできている、静物撮影に長けたフォトグラファーの小室さんに撮影をお願いしました。
小室さんはこの撮影の直前まで通販カタログのイメージ撮影を行っていて、その仕事の担当デザイナーである砂坪さんも参加してくれることになりました。
別のプロジェクトで砂坪さんと一緒に動いていることもあり、3人でわいわいと、楽しい撮影でした。撮影は楽しいのがいちばん。
砂坪さんはフードコーディネーターの資格も持っていて、スタイリングのスタッフとして活躍してくれました。カットした食品の撮影って、断面の綺麗さが非常に大事なんですね。解像度の高いカメラだと尚更に。
撮影が全て終われば、あとは編集さんのラフを見ながら、写真のセレクトと執筆です。
執筆は慣れている方なのでサラッと書けてしまうのですが、これまではWebや長編の執筆が多く、雑誌のような限られた文字数の中で無駄なく的確に書くということが今まであまりなく、勉強になりました。
デザインが組み上がった後も、写真のトリミングなど最後まで細かく指示してしまい、編集さん的には面倒な執筆者だったかなぁ…と心配しつつも、「できるだけ良い形で記事を届けたい」という気持ちで、やらせていただきました。
今回の記事はあくまでカメラのテストなので、画像は全てカメラから書き出されたJPEGで、レタッチや作り込みができません。
これまで私は例外なくRAWで撮影し、現像でいかに表現を突き詰めるか、ということをやってきたので、撮って出しのJPEGをお見せするというのは初めてのことでした。
最初は不安だったのですが、いろいろやっていくうちに、撮りの段階で設定を詰めていくということもまた勉強になり、良い経験でした。
でもやっぱり、しっかり現像して仕上げたものも見てほしいなぁと思います(笑)。それだけ良い撮影でした。
ここまで、誌面へのクレジット表記がある方の紹介をしながらお話ししてきましたが、その他に撮影チームのマネージャーである松井さんにも、コーディネーションを助けてもらいました。
多くの方のお力添えで良い記事ができ、「周囲の支えがあって初めて仕事が成立する」ということを改めて実感した制作でした。
ちなみに、「コマーシャル・フォト」2019年4月号は、巻頭が俳優の特集ということもあって発売前から在庫僅少の状態で、リアル書店・オンライン書店どちらも完売のところが多数出ています。
重版がかかるのかなとは思うのですが、もしチェックしていただける方は、在庫状況にご注意いただけたらと思います。
【プロフィール】
芳田 賢明(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/
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