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【連載】大石孝次の「音楽な日常」第143回

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『青春を振り返る事などなくなった』

大人の定義とは何なのか。
個人個人の感覚で差があるものです。
成人というのが一つの目安でしたが、成人の年齢が引き下げられ18歳の人に出来る事が増えました。
でもお酒とたばこは20歳からね。
何だか余計に大人の定義が分からなくなってきました。

自覚の問題と言えばその通りなのです。
無自覚のままだったら永遠にピーターパン症候群なのです。

コロナの弊害はこれから先も沢山出てくるのでしょうね。
やるべき事を果たせなかったり、楽しい思い出に水を差されたり。
年齢に合った出来事はしっかりと体験しないといけないのだと思うようになりました。
学校のプログラムとか、時間をかけて進化しながらも良く出来ているのだと再認識します。

テレビで地方の小学校の卒業式のドキュメントを観ました。
1クラスの卒業式は他学年の生徒は出席せず、保護者と先生が見守る中で執り行われました。
卒業という一つの大きなターニングポイントに、その姿を見つめる大人の眼は温かったです。
でも今まで通りに式は行えず、コロナ対応の式になっていました。
先生たちに見送られ、保護者と一緒に学校を後にするその姿はなんとも言えない切なさがありました。

さすがにそのころの時代から遥かに時を乗り越えてくると、昔話こそする機会はあってもその頃の記憶は時の彼方。
思い出すこともすら少なくなりました。

唯一、その時代を蘇らせてくれるのは、その時々に聴いていた音楽達です。
今たまたま、フツと聴きたくなったアルバムがありました。
佐野元春の「No Damage」。
当時リリース時にはテレビスポットも入っていました。
ジャパニーズロックポップスのアルバムでCMが入るのは珍しく先駆け的でした。

3枚のアルバムをリリースした後に発売された編集版のアルバムです。
ベストの定義ではなくパーティアルバムという定義付けで曲間の作り方も考えられており、
それまでのアルバムとは同じ曲であってもフェイスが違って、クールでお洒落な編集になっています。
ジャケットワークも秀逸で、今にして思うとアナログLPならでは良さが際立っていました。

2ndアルバムの「Heart Beat」はポップでラジカル。
3rdアルバムの「SOMEDAY」は大きなスケール感に挑んだ意欲作。
スプリングスティーンよろしくのロックロールの大いなる夜に挑んだ後、
「もっとハッピーに音楽を楽しもうぜ」というメッセージが散りばめられたアルバムが「No Damage」です。
なので、とてもポップでセンチメンタルな仕上がりになっています。

このアルバムにチョイスされた曲には「14のありふれたチャイム達」とサブタイトルされています。
アッパーな曲だけではなく選曲された「モリスンは朝、空港で」「グッバイからはじめよう」「こんな素敵な日には」「情けない週末」など、当時の秀でたセンスの曲がキラっと光っております。
そういう意味でも佐野元春のアルバムの中で一番耳馴染みの良いアルバムになっています。

それぞれのアルバムに収録の好きな曲をテープにまとめてカーステで聞いて楽しんできました。
そんな中でも「No Damage」は名編集の傑作版だと思っております。

このアルバムを聴けばその当時の事柄が思い出されます。
本当に音楽が記憶を彩っていてくれているのだと感じる瞬間です。
忘れてしまいそうな記憶がギリギリ脳のアーカイブから取り出せたりします。

青春時代と言われる時期だってそうそう長く続くわけではありません。
その時期にいったい何が出来て何が出来なくてイラついたり爆発しそうになったり。
そんな言葉に出来なかったエモーションやシチュエーションですら、すぐに消えて行ってしまうのです。
だからこそ音楽と共に深く記憶に残していくのだと思います。
ちょっと気恥しくもキラっとした青春の香りを記憶の中から少しだけ引っ張り出してニヤッとしています。

このアルバムには後々そんな役割が課せられていたのですね。
改めて音楽の素晴らしさに感謝する次第です。

最後に、このアルバム「No Damage」より1曲お届けいたしましょう。
佐野元春で「彼女はデリケート」。

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