Professional

【連載】芳田賢明「memorygram」第1回

title_yo

memorygram

みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。

このサイト「6notes」の編集長であり音楽家の近藤薫さんとは、縁あって4年ほど前からお仕事をご一緒しており、6notesの制作にも2年前から協力しています。

今月から6notesは、作家からの発信を強化していこうということで、月初に近藤さんの連載がスタートしましたが、加えて私も連載を持たせていただくことになりました。

どんなことを書いていくかはまだ具体的に考えていませんが、写真のこと、私の好きなこと、好きなものに触れながら、音楽をビジュアル制作の面で支える裏方のことを、少しでも知っていただける連載にしたいと思っています。

さて、私の人生には3つの夢があります。

1、著書を出すこと(自費出版ではなく出版社から)
2、ラジオのレギュラー番組を持つこと(配信ではなく地上波で)
3、プロインタビュアーの吉田豪さんにインタビューしてもらうこと

なのですが、連載のお話が立ち上がったときにふと思ったのは、「ラジオのレギュラーだと思ってやってみようかな」ということでした。

もし自分のラジオ番組を持てるようになったら、番組のタイトルに付けようと思っているのが
「memorygram」
そこで、この連載のタイトルもそれにすることにしました。

この「memorygram」というのは、私が2009年に初めて開催した個展のタイトルでもあるのですが、作家として写真作品をつくっていくにあたって、初めてテーマとして意識したものです。このテーマは今も私の中で生き続けています。

当時、個展の図録に記した言葉に「記録はいらない。記憶が欲しい。」というものがあります。

まぁ、この通りなのですが、少なくとも作家としては、「事実を記録するためではなく、記憶を呼び起こさせ、真実を浮き上がらせるために写真を用いるのだ」という考え方を持っています。
事実の記録であれば、今やスマホの写真で良いし、撮りっぱなしのJPEGをカメラロールに蓄積させるなり、SNSに載せるなりすれば良い。
だけど、敢えてカメラというものを使い、作家として、表現手段として写真を選ぶのであれば、表層的な事実を追求するのではなく、奥深くにある真実に向き合い、失った記憶を追求したいと思うのです。

こう書いてみて、写真を始めた頃から基本的な軸は変わっていないのかな、と改めて。

ですが、当時大好きだった撮影場所である晴海や豊洲は、オリンピックの開催や市場の移転で急速に変貌を遂げました。

R0010401
2006.9/豊洲/RICOH Caplio GX8

この写真は2006年、開業したばかりの ゆりかもめ市場前駅の駅前から晴海方面を撮ったものです。
見渡す限り人は一人もいませんが、視線の先に広がるのは東京タワーを中心に、所狭しと並ぶビル群です。豊洲や晴海のこのアンバランスな光景が大好きでした。

しかしご存知の通り、当時から12年が経過し、「都心の秘境」とまで言われた市場前駅は、名実ともに豊洲市場の前にある駅となりました。これから多くの人が利用する駅に変貌することでしょう。
こうして街はやがて過去ではなく未来を向き、点在していた、記憶を呼び起こす空気は消滅していきます。

変わるものと変わらないもの。
現実が変わり続けるからこそ、記憶を探し続けるのだと思います。

写真は一瞬を永遠にすることができる。
だからこそ、視線の先にあるわずかな光に、真実を求めるのだと思います。

まずは、タイトルにまつわるお話でした。


【プロフィール】
芳田 賢明
(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/

関連記事

  1. L1034274 【インタビュー】完全新体制のStella☆Beats、2年3ヶ月…
  2. titleimg2 【連載】大石孝次の「音楽な日常」第153回
  3. 結花乃3 【ライブレポ】唯一無二のブレッシーボイスの持ち主、稀代のシンガソ…
  4. titleimg2 【連載】大石孝次の「音楽な日常」第67回
  5. titleimg2 【連載】大石孝次の「音楽な日常」第76回
  6. titleimg2 【連載】大石孝次の「音楽な日常」第25回
  7. titleimg2 【連載】大石孝次の「音楽な日常」第116回
  8. titleimg2 【連載】大石孝次の「音楽な日常」第40回

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ピックアップ記事

  1. LINE_ALBUM_BON.井上 使用可能写真_240318_6
  2. title_yo
  3. 1
  4. EN
  5. LINE_ALBUM_2.20_240311_2

特集記事

  1. 「新しく切り開いてくぞ!!」という想いの強い曲だからこそ、新生Siriusとして『Fly High』を届けたいなと思いました。Sirius インタビュー! Sirius集合2024
  2. 70.(XANVALA)から、Λ(ファン)たちへ向けたメッセージが到着!! 繧、繝ウ繧ソ繝偵y繝・繝シYuhma
  3. Siriusは、夜空で一番明るく輝く星と言われています。私たちも、その名前に羞じないバンドになりたくて、Siriusと命名しました。いつかSiriusが一番のガールズメタルバンドだと言われるくらい、みんなが燃えるバンドになれたらなと思っています。 Sirius集合
  4. 涙を隠した笑顔が、興奮という思いで胸を掻きむしった、 コンビニ推進アイドル(仮)、第一部ラスト公演。 IMG_5575
  5. ぶっトび!パンデミックから超鉄板曲のサブスク解禁!メンバー生誕公演の解禁も! ぶっトび!パンデミック

スポンサーリンク

Push!!

  1. 「新しく切り開いてくぞ!!」という想いの強い曲だからこそ、新生Siriusとして『Fly High』を届けたいなと思いました。Sirius インタビュー! Sirius集合2024
  2. 70.(XANVALA)から、Λ(ファン)たちへ向けたメッセージが到着!! 繧、繝ウ繧ソ繝偵y繝・繝シYuhma
  3. Siriusは、夜空で一番明るく輝く星と言われています。私たちも、その名前に羞じないバンドになりたくて、Siriusと命名しました。いつかSiriusが一番のガールズメタルバンドだと言われるくらい、みんなが燃えるバンドになれたらなと思っています。 Sirius集合
  4. 涙を隠した笑顔が、興奮という思いで胸を掻きむしった、 コンビニ推進アイドル(仮)、第一部ラスト公演。 IMG_5575
  5. ぶっトび!パンデミックから超鉄板曲のサブスク解禁!メンバー生誕公演の解禁も! ぶっトび!パンデミック

New Comer

XT040192 SAY-LA、東名阪ツアー、ファイナル公演レポート!!

 4月よりスタート、SAY-LAの東名阪ワンマンツアー「東名阪SPRING ONE MAN TOUR…

AC0I7218 新生Empressが描いた生まれ変わった明日の景色は、まさにキラキラと希望という輝きを放っていた。彼女たちがこれからどんな明日の地図を描きだすのか。その景色を一緒に見たくなる始まりが、そこには生まれていた。

新体制第一弾柵となったシングル『Rebuild』を手に,Empressが初となる全曲披露ワンマン公演…

S__44957714 XANVALAのライブには、”ざんばら”と乱れ舞う無数の髪が波打つ景色がとても似合う。XANVALA、3周年公演でついに声出し解禁!!

結成から丸3年。1月31日にXANVALAは、渋谷clubasiaを舞台に、ワンマン公演「XANVA…

PAGE TOP