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【連載】大石孝次の「音楽な日常」第153回

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「夜明けの海は寝ぼけているんだよ」

これは語り草になっているお話です。
ティーンエイジャーの頃の思い出。

16歳になった証として先ずは原付の免許を取得しました。
学校まで隠れて原付で通って来る奴のを借りて、ちょこちょこ乗っていたりしました。

バイトを始めた頃に中古のバイクを購入しました。
地元の駅裏にある店の常連になっていたので、そこの駐車場の隅っこにバイクを置かせてもらうことが出来ました。
駐輪場の整備など行き届いていない時代だったので、置ける場所があるのは本当に感謝でした。
中型や大型の免許はとある事情から取得する気がなかったので、原付道がその頃に本格的に始まりました。
今でも原付ラブです。乗っております。
いったい何台のバイクに乗ってきただろうか。

あの時代は若さ故の機動力が高かったなぁ。
特に横浜市南部に在住していたので、鎌倉街道や当時出来たばかりの釜利谷街道を使って、鎌倉逗子湘南エリアは身近な場所。
2年後の自動車免許を早く誕生日を迎えた奴が車を導入して活動の仕方が変わるまで、バイクを足として活動しておりました。
寒い時期も暑い季節も風にまかれながら走り回っていました。

その頃のバイクは力が弱いものが多く、長い坂や急な坂を上っていると途中でへたれてしまう事がありました。
最初に乗ったロードパルは坂の途中でスピードダウンしてしまうので、地面を足で蹴って上がるようなことも(笑)
そんな頼りなくもカワイイ愛車と過ごしておりました。

面白いことに次から次に、バイクをパワーアップし乗り換える事が出来ました。
ロードパル⇒パッソーラ⇒パッソル⇒イブスマイル⇒ジェンマ⇒スーパータクト⇒ジョグなどなど。
スクーターが中心でしたがARにも乗っていた時がありました。

ある初夏の週末、他校の奴と三人で関内~山下町方面に行きました。
当時は24時間営業のファミレスも殆どない時代。コンビニも23時に閉まっていました。
バンドが入っての演奏とDJが交代でフロアーを行うディスコが関内にあり、そこで深夜まで過ごしました。
深い時間になって外へ出ました。

フットワークが良かった頃ですから、こんな会話になりました。
「今から行けば江の島で日の出が見られんじゃん」
「余裕でしょ」
「4時過ぎには外は明るくなるよ」
「なら丁度いい」
そんな軽い調子で江の島を目指して移動する事に。
バイク3台連なって走ります。

その当時はまだ原付にヘルメットは強制ではなかったのです。
身体一つで乗ったらスタートできる時代でした。今となっては想像し難いですよね。
夜の間は空気が静かで過ごしやすく、半袖のシャツを揺らしながら進んでいきます。

先頭を走っている奴はお調子者でアホっぽい性格。
何故かバイクのフロント部分のボディパーツを外していました。
特にそこから改造的な事をする予定はないみたいでした。
サングラス、短パン、アロハ(記憶が正しければ)みたいなカッコをしていたような…
なんにしても小僧にしてはチョロいスタイルでしたが、お調子者には丁度良く似合っていたかもしれません。

もう一人は自分とは別の学校に行った相棒。ちょろりんは相棒が高校で遊んでいた仲間です。
振り返れば、ちょろりんとは相棒の葬儀で会ったのが最後なのかなあ。
奴のクレスタを下取りして乗っていた頃もありましたので、それなりに親交はありました。

そんな3人が深夜の道を江の島に向けて進んでいきます。
鎌倉街道をひたすら走り、途中で北鎌倉方面に左折。
鶴岡八幡宮の横を抜け、鎌倉駅前辺りで休憩。
缶コーヒーを飲んでいると空は白んできており夜の色から薄い青に変わります。
ここからは朝の訪れを感じられる時間帯。
とても気持ちが良いのです。

そこからまっすぐ行けば突き当りは海。
滑川の交差点を左に進めば逗子、葉山。右に進めば江の島方面です。
今日は江の島を目指しておりますので右折。

海風は弱かったですが、涼しく体を通り抜けていきます。
海沿いから少しの上り坂を上がっていき切り通しを抜けると稲村ケ崎。
七里ヶ浜、夜明けの海沿いを走っているのは他に車もなく最高に気持ちがいい。

先頭を走っているバイクから我々2台が遅れて走っていると、向かい側からパトカーがやってきました。
我々の後ろでUターンして追っかけて来ます。
相棒も気づいて徐行をして左に寄せるとパトカーが横付けしてきて
「先に走ってたのは友達?」
「いえ、違います」
それで聞いてパトカーは急ぎ足で走り去っていきました。
先頭のバイクはボディパーツを剥がしてあったので、整備不良か盗難車かと思ったのかなぁ。
まあ、とにかく捕まらないでいてほしいものです。面倒くさいから。

そのまま腰越を抜けて134号から江の島に左折。
橋を渡って一番奥の駐車場まで進むと、先を急いだ友人が待っておりました。
「パトカーは?」
「知らないよ」
と、とぼけたことを言っているだけでした。
一休みして帰途につくことに。

まだ夜は明けきっておりませんが、海側は白いモヤに包まれていて、朝の寝ぼけた空気に満ちています。
来た道を戻り海岸線を走っていると、海側に一台の車が停まっています。
中から女子が数人降りてきて海を見物しに来たみたいです。
するとすれ違いざまに目が合った人は自分のバイト先の隣の店でバイトをしている女子大生のお嬢さんでした。
向こうも気づいてお互いに「あ~っ!」と声を上げました。
こんな早朝にこの辺ですれ違うなんてお洒落じゃん。
僕等のジェネレーション、ライフスタイルとしては象徴的な一つの出来事でした。

そのシーンの事は今でもくっきりと覚えています。
なぜ急にこの事を思い出したのかというと、今読んでいる小説がきっかけになったのだと思います。

高校生の頃に戻ってとある出来事を修正したいと思う主人公の物語。
なんとなくその主人公を通して、当時の自分のイメージと重なったのか分かりませんが、不意にこの日の事を思い出したのです。
たま~に思い出すことはありますが、今回はホント不意だったんです。
そんなきっかけで昔話をしてみました。

この頃の思い出の曲は何だろう。
思い出すものは沢山ありますが、やはりこれもありなのかなぁ。
先日、これも不意に頭の中で鳴りだしたことがあった曲です。
そういう意味としては象徴的な何かを感じているのかもしれません。

では、そんな曲でお別れいたします。
佐野元春で「彼女」。

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