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【連載】大石孝次の「音楽な日常」第28回

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『WALKMANと私』

今の時代に生まれた方には想像も出来ないことが、昔は沢山…というかほとんどそうだったかもしれません。
そんな今と昔のギャップについて思うお話です。

この時期になると思い出す事があります。
自分が中学生の頃、とにかく音楽が好きで毎日の日課がレコードショップに行く事。
学校が終わると、家の近所にあるショッピングセンターの中にあるレコードショップに向かいます。
お店のレコード棚に入っているレコードを端から順番に見ていきます。
そんなに毎日見ても中身が変わる訳ではありませんが、それが楽しく仕方がありません。

レコード(当然アナログ盤です)のジャケットを何度も見て、帯の説明や収録曲などくまなく読みました。
聴いた事のないアーティストの音楽を想像しながら楽しんでおりました。
もちろん、毎日店にやって来る少年はお店のスタッフさんと顔見知りになり、色々な話や音楽を教えてくれました。

今のように何でも簡単に知ることが出来ない情報過少社会でしたから、人づてに聞く情報や雑誌の記事、ラジオのDJの話など、全てが新鮮でワクワクするものでした。
友達と相談して購入するレコードを決めたり、買ったレコードをみんなで交換しながら知識と情報を深めていきました。
少ないおこづかいでLP(アルバムの意)レコードを購入するのは、それ1枚で1ヶ月のおこづかいがなくなるようなもの。
それでも、時間をかけて吟味したレコードを購入する喜びは何よりも勝っておりました。

恵まれた事に、我が家はなかなかに寛大で、子供が出入り出来る時代ではなかったライブハウスに行くことを許されておりました。
自分には兄がいたおかげで、そんなに物騒なところではないとの助言があり、中学時代から地元横浜のライブハウスには出入りしておりました。
音楽は憧れであり、身近な存在であり、無くてはならないモノでした。

音楽を聴くには道具が必要です。
テレビ、ラジオ、レコード、カセットテープなど。
当時としてはラジカセ(ラジオとカセットレコーダーのコンパチ)が一番小さな持ち運べる機材でした。

そんな時代に、正に奇跡の発明と言っても過言ではない機械が登場しました。
それがSONY「WALKMAN」です。
ハンディサイズでカセットテープを再生できるポータブルカセットプレイヤーです。
その翌年、満を持して発売されたのが「WALKMAN2」。
その卓越したデザインとセンス、革命的な小さなサイズ、そして洗練されたCM戦略。
この全てに少年は打ちのめさせられ、「WALKMAN2」の虜になってしまいました。

価格は今も覚えておりますが、当時としては半端ない値段で子どもが買えるような代物ではありません。
お年玉を集めてもとても買えない高額商品でした。

今となってはどんな交換条件で交渉したかは覚えておりませんが、誕生日とクリスマスプレゼントをセットにして…なんと買って貰えたのです!
これは凄いとしか言えませんが、両親の優しさに本当に感謝以外の何物でもありません。

当時の最新機種を手に入れた訳です。
自分の通っていた中学校で、これを持っている生徒は1000人いても他には一人としておりませんでした。
逆に怖くて人に自慢は出来ませんでした(笑)

毎年大晦日の夜の9時に家の近所に仲間と集まり、初詣に行く恒例行事の最初の年でした。
買ってもらったばかりの「WALKMAN2」に入れたカセットテープはThe Beatlesの『マジカル・ミステリー・ツアー』。
仲間と歩きながらお喋りしたい気持ちと、音楽を聴きたい気持ちとごっちゃになりながらも、Beatlesを聴きながらお喋りに参加しながら歩きました。
その時にかかった曲が『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』でした。
当時の録音方式とBeatlesの卓越した音楽センス、アレンジのドラマ性とギミック、自分の知っている音楽観とは違うサウンドがヘッドホンの左右のスピーカーから流れてきて、耳を通って脳に新しい刺激を伝えました。
その衝撃は一生消えることのない程の衝撃でした。
思わずその凄さを一緒に歩いていた仲間たちに聴かせて、共感させていきました。

体験した事のない方は、ステレオが分かりやすい環境でぜひ体験してみて下さい。
これが人生における『音楽の道への第一歩』でした。
音楽のジャンルやライブの楽しさ、そういうものとは違う音楽の形や芸術性、そして自由な発想と革新的なセンス。

音楽を持ち歩くという最初の文化に触れた人間として、ある意味自然な発見と出会いだったのかもしれません。
この大晦日の体験は数十年経った今でも鮮明に覚えており、あの日の空気や景色、息づかいや仲間の笑顔も色あせない映像としてインプットされております。
音楽から紐づく思い出や景色の代表選手のような夜でした。
あの日があって今があると思うと、それもまた珍妙な人生の遍歴の1ページであるのですが、大切な人生の節目でありました。

今、自分が使用しているポータブルプレイヤーは「iPod」です。
本当に手の中で握りつぶせるくらいの大きさです。容量も多くいくらでも曲が収納出来ます。
正直、凄い進歩です。

当時の奇跡のサイズの「WALKMAN2」をもってしても、サイズは何十倍も大きい訳です。
そんな当時最小のプレイヤーを学生服の内ポケットに忍ばせて、モノラルのイヤフォンで音楽を聴きながら朝礼の校長先生の訓示を眺めていました。
今となってはあの当時の苦労(?)も良き思い出です。
そんな苦労を知らない今の若人は楽ちんでいいですね。
でも、苦労して聴いていた音楽だからこそ、いつまでも胸に残る出来事と共に存在し続けているのです。

体験を通じて発見したり学んだり、そして成長したり。
音楽は人生の良きパートナーであり師でもあります。
そんな音楽との出会いがみなさんにもありますように。
そんな出会いがあると、きっと人生も楽しくなりますよ。

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