RAWデータで、写真がもう一度生まれ変わる
みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第35回です。
「RAWデータで撮る理由」みたいな話をすることがしばしばあります。
「画像の劣化を起こさずに済むから」といった一般的なことの他に、「RAWデータを持っておけば、現像時点での最新の技術で現像ができるから」といったこともよく話します。
それと合わせて、「現像時点での自分を反映させられるから」ということもいえます。
ネガを保存しておけば、プリントをするときの自分をその都度反映させられるのと同様です。
「ネガは楽譜、プリントは演奏」というアンセル・アダムスの言葉のように、楽譜をしっかり保管しておけば、その時の自分を演奏に反映させられるわけです。
年月が経って演奏の腕が上達し、過去にはうまくできなかった表現が可能になったり、年月が経って物事の見方が変わったり。そんな最新の「自分」を反映させられる。楽譜、ネガ、RAWデータにはそんな共通点があります。
たまに、過去の作品を振り返ることがあります。
フィルムからデジタルに完全移行して1年程度の頃、2005年の作品。
ニコンD70に標準キットレンズ。610万画素ですから、今見ると驚くほど小さな画像です。
当時はこんな感じで現像してたなぁ、と。
「ネガプリントっぽさをいかにデジタルで表現するか」というのは当時から取り組んでいましたが、今見ると稚拙な感じがします。
LOMOのカメラを使っていたり、Agfaのフィルム感を狙っていたりしていたので、どちらかというと「トイカメラっぽさ」を追いかけていることが伺えます。
もう16年前の写真ですが、RAWデータをしっかり保存しておくことで、最新の技術と最新の自分をもって、再度作品にすることができます。
今の自分なら、こんな感じに解釈するかな。
16年前の自分と今の自分、もはや他人です。
16年前に撮ったRAWデータともなれば、完全に新しい自分がそのRAWデータと向き合うのです。
そこから生まれるのは、16年前とは違う新しい写真。同じ写真がもう一度生まれ変わるのです。
その作業は、16年前の自分と向き合うことでもあり、自分の表現とは何かということを改めて考える機会なのです。
【プロフィール】
芳田 賢明(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/
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