M11-Pレビュー
みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第64回です。
ライカM10-RをM11-Pに買い換えました。ブラックからブラックです。
もともとM10-Rは、M9-Pのセンサー剥離の補償でアップグレードしてもらったものだったのですが、どうも身体に合わなくて。
いちばん嫌だったのは謎に固いISOダイヤルでしたが、なんというか全体的に息が合わない感じでした。
なので、基本的にはM10を使いつつ、シャッター音をなるべく小さくしたいときにM10-R、という使い分けをしていました。
もともとM9をM9-Pにアップグレードして使っていたくらいなので、赤バッジがボディに付いているのってあまり好きではなくて、M9-Pからアップグレードするときも本当はM10-Pにしたかったのですが、当時できなかったんです。
そういうこともあり、M11-Pが出たらM10-Rから買い替える、と密かに決めていました。
ライカを使っている人はよく「リセールバリューが良い」と言いますが、今回もそれのおかげで買い替えができました。
さすがに今の価格で元手なしにM11-Pを買うのは大変です。。
購入にあたって、いろいろレビューなど見ましたが、絶対数が少ないんですよね。
なので、購入を考えている方に少しでも参考になればと、私なりのレビューをしてみます。なるべく他では言及されていないところに触れたいと思います。
まず、ブラックボディの軽さは想像以上でした。フィルムライカ並み、それより軽いかも? レンズなしの状態で持ち上げると驚くほどです。
一度M11を持ち慣れてからM10を持つと、重くて使いたくなくなるレベル。
スナップしていても疲れが軽い気がします。これは大きい。
軽いというだけでM11を使う意味があると言っても過言ではないと思います。
外装でいうと、ブラックペイントではあるもののマット調というかザラザラしているので、指紋の心配がないのは良いですね。
ただ、このザラザラが結構鋭くて、カメラが傷つきにくいのはいいのですが、逆にカメラが他のものを傷つけます。
テーブルに置いて少しでも擦ると、テーブルの素材によっては細かい傷がテーブルに入ります。これは驚いた。
そんなことしたくないのですが、底面のエッジに黒パーを貼りました。こればかりは、ベースプレートだけ別塗装でもよかったのでは、と思います。
さらに言うと、底面のUSB端子が剥き出しなのがどうしても気になってしまいます。
ノートPCもそうじゃんと言われればそうなのですが、これも黒パーで塞いでいます。
金額が金額なのだから、シャッターとか付けてもいいと思うんですけどね。
どちらもハンドグリップをつければ解決かと思ったのですが、軽さがスポイルされてしまうし、USB端子のところにカバーがないのでダメだなと(笑)
黒パーの劣化に気をつけながら運用します。
M11-PのM11との大きな違いであるコンテンツクレデンシャルの機能ですが、よくわかりません(笑)
付与されるようにしてRAWで撮っていますが、RAWからは読み出せないし、現像したら消えるし、何が正しいやり方なのか。
一応オンにはしてますが。誰か教えてください(笑)
色調に関しては、早速カメラプロファイルを作成して、現像で色を完全にM10に合わせられたので一安心。今までと同じ色が出せます。
ただし、とにかくAWBが赤いですね。なんで? と思うレベルで。まあRAWでしか撮らないので問題ないですが。
ダイナミックレンジが広くなったというのは確かに感じます。
ハイライトが飛びにくくなったので、アンダー目の画づくりがしやすくなった感じがします。これはM9の頃の良さがまた出てきた感じで嬉しいです。
画質に関しては、ノイズの多さが気になります。
圧倒的な画素数なのでそりゃそうですが、M10までの品のあるノイズ感ともちょっと違って、純粋に嫌な感じです。
さすがにISO64は綺麗ですが、200くらいになるともうちょっと気になってきます。
MRAWやSRAWにすると改善するかと思ってテストしてみましたが、縮小されてノイズ感が軽減されるわけではなく、むしろSRAWのノイズが一番ひどかった。
トリプルレゾリューションテクノロジーは「まるで複数のセンサーを使っているような」という説明があったので、その意味では正しい出方ではありますね。
先日PureRAWのアップデートでM11-Pも対応になりましたが、これのリダクションをかけると見違えます。
PureRAWはM10で使うことはまずなかったですが、今後は使う場面が増えそうです。
あと、基準感度がISO64になって、さらに電子シャッターで最高速度が上がったのは非常に嬉しい。
ライカレンズは基本的には開放で使うものだと思っているので、仕方なくNDフィルターを使うことも多いです。
それが、ほとんどの場合でNDフィルターなしで開放での撮影ができるようになって、自由を手にしたような感じがします。
ただ、電子シャッターのローリングシャッター歪みは普通に出ます。歩きながらのスナップでも歪みます。
不具合系は、今のところ一つだけ気になる点が。
電源投入後1枚目の撮影データが破損することがあります。そこまで頻繁に出てはいないのですが、ちょっと不安。
これはブログで書いている人もいて、ファームで修正されるとよいですが。
その他、フリーズがよく言われていますが、今のところ大丈夫です。
ただ、電源オン時とオフ時の処理は時間がかかりますね。その間に何かするとフリーズします。これは待ってあげるしかないなと。
あとSDカードの相性もよく言われていますね。私はずっとサンディスクしか使っていないのもあるのか、今のところ大丈夫。
一応UHS-IIが推奨みたいなので、UHS-IIで、かつあまり容量の多くないものを使うようにしています。
M10系はそういうのが全くなかったのですが、M9系ではいろいろありましたね。
ここにきてまた「デジタルライカのお作法」が復活したようで、微笑ましいです(笑)
購入前に最後まで気になっていたのは、撮像素子で測光することによるタイムラグでしたが、使ってみると問題ないレベルです。
M11でファームアップされる前のタイムラグは「これは無理だ」と思いましたが、現状なら大丈夫です。
電源オンから撮影可能になるまでの時間の長さはかなり気になりますが、電池の持ちも良いので、電源を入れっぱなしにすればいいかな、と。
結論としては、買い換えてよかったです。
気になる点もありますが、全体としてM10-Rよりも圧倒的に良い印象です。
特に、軽くなったこと、基準感度が下がったこと、シャッター最高速度が速くなったこと、何より感度ダイヤルが固くない!(笑)
そして赤バッジがないこととエングレーブが入っていること。
今後はメイン機がM10からM11-Pになっていくと思いますが、まだそこまでガッツリ使えてないので、検証しつつ徐々に移行していきたいと思います。
【プロフィール】
芳田 賢明(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/
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