Professional

【連載】芳田賢明「memorygram」第33回

title_yo

Zfc、たぶん買う

みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第33回です。

Zfc、発表されましたね。
噂で流れていたときは「今更こんなデザインのカメラをニコンが出すか?」と少し懐疑的だったのですが、見事ですね。ここまで振り切ったからこそ、ここまで話題になっているのだと思います。
そして何より驚いたのが、ターゲットを若い女性に絞っていること。自分の感覚では、こういうカメラが刺さるのはフィルムカメラを知っているおじさんとか、それなりに年齢の行った人だと思うのですが、マーケティングで導き出された結果が「若い女性」ということなのでしょうから、非常に興味深いです。

デザインはFM2の印象を再現したもの。フィルムカメラを「オマージュ」したくらいのデザインならよくありますが、できる限り忠実に再現しようとしている、中途半端にまとめていないのがとても好印象。
Dfと同様、シャッターダイヤルに赤と青を使っているのもやっぱりニコンらしい。
機構上レンズに絞りリングを付けられないのは残念とはいえ仕方ない。その代わり軍艦部に7セグメントの絞り値表示を付けたのがまた憎い。おそらくフィルムカウンターのイメージでしょう。
シャッターボタンにレリーズ穴がないのは少し残念ですが、ファインダーアイピースを新設計してまで丸型にしたのは高く評価したい。
そして何より、Zシリーズで初めて搭載されたバリアングル液晶。動画を意識して、自撮りもしやすくなったという評価が多いですが、私としては「ひっくり返して隠せる」ことを重視したいのです。フィルムカメラライクなデザインのデジタルカメラは少なくないですが、液晶を隠せないというのは中途半端な仕上げに感じてしまいどうも冷める。X-Pro3のように完全に割り切ったデザインがあってもいいわけです。その点Zfcはちょうどよくまとめている。液晶を隠せばシボのテクスチャ。ラバーになっていないのが残念ですが、ここにそこまでのコストをかけるまでもないという判断なのでしょう。

さて、こういうデザインのカメラは、プロの仕事では使われず、アマチュアのマニア向けかライト層向け、という扱いになります。ボディ内手ぶれ補正がないとか、メモリーカードスロットがシングルだとか、確かに仕事で使うには少し不安があります。
ただ、M型ライカをメインで使っている立場から、一つ言えることがあります。カメラの見た目が被写体に与える影響です。
なぜ私がM型ライカを使うのか、その理由の半分は、被写体に威圧感を与えないから、そして、街に溶け込むからです。
スタジオでバシッと撮るときは、サイズもシャッター音も大きな一眼レフを使います。その方がモデルさんはアガるからです。
しかし、カメラを向けられることに慣れていない人の自然な表情を撮るのに、そんなカメラで良いわけはありません。それで「カメラは意識せずに」なんて矛盾にも程がある。
以前連載でも書いたことがあるかもしれませんが、ライカを向けられた人の反応は主に二つ。ライカを知っている人の「それライカですよね? 高いんですよね? やっぱり良いんですか?」、あるいはライカを知らない人の「それってデジカメですか? かわいいですね」の二つ。見慣れた一眼型のカメラとは違い、興味を持ってくれる。ライカは話題を生み出してくれるカメラなのです。
「それってデジカメですか? かわいいですね」……おそらくZfcもこれに近い印象を与えるはずです。小さなフィルムカメラのようなデザインが若い女性にウケるはずというマーケティングにも沿っています。
そういうことから、Zfcはライカ的な使い方ができるのではないかと少し思っています。ライカ的な印象を被写体に与えつつ、AFが効いて動画がちゃんと撮れる。そう考えると、ライカと一緒に使う一眼ミラーレスとしてなかなかのカメラなのではないか。意外と安いですしね。

ということで、とりあえず買おうと思っています。
で、MマウントレンズをAF化できるマウントアダプターを買って、ライカレンズで使いたいなと。ズミルックス35mmで動画とかいいんじゃないかなぁ。

当初は早々に予約してしまおうかと思っていたのですが、まあ何か必要に迫られているわけでもないし、まずは様子をみようかなと思っています。

これがニコン逆転の起爆剤に!? と言っている人もいますが、そこまでのパワーがあるか……どうかなぁ。
それよりもZ9がしっかりしたスペックで出てくることこそ重要ですし、そしてZfcの好評につきフルサイズ版が出て、そこまでいけばもしかしたら、があるかもしれませんね。
決定的に不足していたZマウントのマクロレンズも出ましたし、今後の巻き返しを期待したいです。


【プロフィール】
芳田 賢明
(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/


dgpc_cover
芳田賢明 著、プロカメラマンに向けた[仕事に即役立つ本]
「誰も教えてくれなかった デジタル時代の写真づくり」
好評発売中

(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4870852349/
(honto)
https://honto.jp/netstore/pd-book_29714615.html

現在各店品薄状態ですが、版元在庫は豊富にありますので、予約や取り寄せ注文をご利用ください。


関連記事

  1. _D554642 カラオケ好き青年からアーティストへ。静岡を中心に活動するシンガー…
  2. titleimg2 【連載】大石孝次の「音楽な日常」第90回
  3. titleimg2 【連載】大石孝次の「音楽な日常」第130回
  4. titleimg2 【連載】大石孝次の「音楽な日常」第67回
  5. titleimg2 【連載】大石孝次の「音楽な日常」第53回
  6. titleimg2 【連載】大石孝次の「音楽な日常」第120回
  7. titleimg2 【連載】大石孝次の「音楽な日常」第138回
  8. title_yo 【連載】芳田賢明「memorygram」第23回

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ピックアップ記事

  1. XANVALA_0424
  2. misui_9975
  3. P3
  4. title_yo
  5. LINE_ALBUM_516用画像_230519_1

特集記事

  1. 70.(XANVALA)から、Λ(ファン)たちへ向けたメッセージが到着!! 繧、繝ウ繧ソ繝偵y繝・繝シYuhma
  2. Siriusは、夜空で一番明るく輝く星と言われています。私たちも、その名前に羞じないバンドになりたくて、Siriusと命名しました。いつかSiriusが一番のガールズメタルバンドだと言われるくらい、みんなが燃えるバンドになれたらなと思っています。 Sirius集合
  3. 涙を隠した笑顔が、興奮という思いで胸を掻きむしった、 コンビニ推進アイドル(仮)、第一部ラスト公演。 IMG_5575
  4. ぶっトび!パンデミックから超鉄板曲のサブスク解禁!メンバー生誕公演の解禁も! ぶっトび!パンデミック
  5. 元CRAZE二代目ヴォーカリストの緒方豊和。16年ぶりに自身のバンドTUBTRACKの音源を発売!! 「この5曲を一つの流れを持って響くことで生まれる(心揺さぶる)ドラマをぜひ感じてほしい」と語る、今の時代に突きつけた胸を揺さぶるメッセージとは…。 TUBTRACK 

スポンサーリンク

Push!!

  1. 70.(XANVALA)から、Λ(ファン)たちへ向けたメッセージが到着!! 繧、繝ウ繧ソ繝偵y繝・繝シYuhma
  2. Siriusは、夜空で一番明るく輝く星と言われています。私たちも、その名前に羞じないバンドになりたくて、Siriusと命名しました。いつかSiriusが一番のガールズメタルバンドだと言われるくらい、みんなが燃えるバンドになれたらなと思っています。 Sirius集合
  3. 涙を隠した笑顔が、興奮という思いで胸を掻きむしった、 コンビニ推進アイドル(仮)、第一部ラスト公演。 IMG_5575
  4. ぶっトび!パンデミックから超鉄板曲のサブスク解禁!メンバー生誕公演の解禁も! ぶっトび!パンデミック
  5. 元CRAZE二代目ヴォーカリストの緒方豊和。16年ぶりに自身のバンドTUBTRACKの音源を発売!! 「この5曲を一つの流れを持って響くことで生まれる(心揺さぶる)ドラマをぜひ感じてほしい」と語る、今の時代に突きつけた胸を揺さぶるメッセージとは…。 TUBTRACK 

New Comer

XT040192 SAY-LA、東名阪ツアー、ファイナル公演レポート!!

 4月よりスタート、SAY-LAの東名阪ワンマンツアー「東名阪SPRING ONE MAN TOUR…

AC0I7218 新生Empressが描いた生まれ変わった明日の景色は、まさにキラキラと希望という輝きを放っていた。彼女たちがこれからどんな明日の地図を描きだすのか。その景色を一緒に見たくなる始まりが、そこには生まれていた。

新体制第一弾柵となったシングル『Rebuild』を手に,Empressが初となる全曲披露ワンマン公演…

S__44957714 XANVALAのライブには、”ざんばら”と乱れ舞う無数の髪が波打つ景色がとても似合う。XANVALA、3周年公演でついに声出し解禁!!

結成から丸3年。1月31日にXANVALAは、渋谷clubasiaを舞台に、ワンマン公演「XANVA…

PAGE TOP