BSで放映されていた映画に面白いものがありました。
週替わりの特集でクレージーキャッツの作品が数本ピックアップされていました。
クレージーの出演映画のタイトルは「クレージーの~」というように、頭にクレージーが付いたり、「無責任シリーズ」ではタイトルの中に無責任が、「日本一の」シリーズなどでは日本一の文字が埋め込まれていました。
そんな中にシンプルに「大冒険」というタイトルの作品があります。
遥か昔に観た記憶はありましたが、中身はすっかり覚えておりませんでした。
昭和40年に制作された作品でクレイジー創立10周年記念作品として制作された作品です。
映画のオープニングシーンで総理大臣役で森繁久彌が登場。のっけから通常のシリーズ作品と一味違う豪華さでスタートします。
主人公は植木等、相棒は谷啓、谷啓の妹役でヒロインは団令子、もちろんクレージーのメンバー総出演。
そして謎の女性役が越路吹雪。劇中に登場するクラブの歌手がザ・ピーナッツ。
となんとも豪華版です。
監督はクレージーシリーズを手がける古澤憲吾。
いつも通りの奇想天外で破天荒なストーリーが展開します。
そのバックに映し出される50年以上前の、都内の風景はなかなかに見ものです。
高度成長時代の真っ只中、古き日本と欧米化の波、東京オリンピック翌年といえば、新しい一歩を進み出すべき時代の過渡期です。
そんな町並みを歌い踊りながら闊歩するお馴染みのミュージカルシーンで植木さんがアクロバットをするのですが、その撮影に使われたのがなんとワイヤーアクション! 世界初と言われているそうで、フィルムの編集は荒っぽいですが、普通では出来ない動きを街中で行っております。
しかし、この作品の凄いところはそんな物ではないのです。今の世界事情を鑑みると絶対に作る事は出来ない、恐ろしいストーリーが待っているのです。
作品の舞台は日本から海外に展開されていきます。そのシーンは、ミニチュアや特技が多様されており、特技監督として円谷英二が参加。
東宝としてもかなり力が入った作品であった証です。
この作品のストーリーは世界に蔓延している偽札が発端となっています。まさに時代感のある設定です。
世界を混乱に巻き込もうとする悪の集団、なんと越路吹雪の役所はその日本支部の幹部!
そしてその組織とは…
この組織の設定が今では恐ろしくて絶対に出来ないシロモノです。1965年当時はまだまだ世界情勢もイロイロで、日本でこのような設定の映画を作っても誰も知る由もない時代でした。
ストーリーを忘れていたので、映画を観ながらこのハチャメチャな展開に衝撃が走りました。
今となっては、むかしむかしのお伽話です。
お家で楽しく鑑賞するのがちょうどよいですね。
クレージーの作品の中でも、異彩を放つ内容でした。
シンプルに社会風刺がキラリと光る無責任シリーズなどと、比べて観てみるのも楽しいですよ。
今回はこの作品に敬意を払い、一曲ご紹介いたします。植木等で「遺憾に存じます」。
この記事へのコメントはありません。