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【インタビュー】女優・針谷早織、熱く語った90分。

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2017年7月にアイドルを卒業し、舞台女優として歩みを始めた針谷早織。
卒業発表から1年、休む間もなくあらゆる舞台に出演する中、長い髪を切り、ファンを驚かせた。そこにはどんな理由があったのか。
ショートにした理由から、女優として今考えていること、アイドル時代との違いなど、約1時間半熱く語ってくれました。


──今回の取材は「針谷さんがショートにした!」っていうのがきっかけになっていまして、髪を切った理由、気にしている人も多いと思うんですが、何か理由があったんですか?

針谷「2年前に切ったときは、気持ちの切り替え時期だったんです。TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)の初出場が決まった年でもあり、ちょうどその時期にグループとしてもいろいろ入れ替わりとかがあった時期で。自分としても第2のスタートとして踏み切るときだったので、髪も切って気持ちも切り替えて、っていう感じでした。今回はもう単純に髪が伸びてきてたので、切りたいと思ってて。本当は年明けに切りたかったんですよ。1月から男装の舞台もあったんで、その役になりきりたいって思って、2018年のスタートからバッサリいきたいって思ってたんですけど、「あくまで男装女子の役だから、ショートにするほど男に寄せないでほしい」っていうお話で、長いままで。それで、次の2月の舞台のビジュアル撮影が1月の舞台が終わった次の日くらいで、髪を切るタイミングがなくそのまま撮影になったんですね。それで2月の舞台も「そのビジュアルを変えないで本番はお願いしたい」っていうお話だったので、これも長いままで。でさらに、この舞台の本番4日前くらいに今の舞台の撮影が入って(笑)。本当はこの舞台はショートで挑みたくて、長いままで撮影に行って「やっぱり今回も切れないか…」って思ってたんですけど、もう99%ダメって言われることを想定して、稽古初日に演出家さんに「髪を切りたいんですけど…」って聞いたら、「いいよ、全然切っていいよ! 役づくりとして自分の見た目を変えるのってすごく面白いし」って言ってくださって。今回はボーイッシュでサバサバしてて、男子よりも女子のファンが多いって役なので、尚更切りたいなって思ったんです。本当は年始から切りたかったんですけど、タイミングが合わなくて切れずにいて、やっと念願のショートにできたっていうことですね」

──役づくりが理由で、演出のタイミングで今になったってことだったんですね。

針谷「そうですね。「演じる上で切りたい」って感じでしたね。伸ばそうと思えばエクステとかいくらでも付けられるんで。役ですね。「男装したいから切りたい」みたいな。思ったより男装が本当に楽しくて(笑)。男装女優でもいいなっていうくらい男装楽しくて。周りからは「ヤンキーっぽい」って言われたんですけど(笑)」

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──人生の中ではロングだった期間の方が長いんですか?

針谷「全然長いですね。生まれてから小学校6年生まで髪切ったことなくて、ずっとロングで。中学生になって、ソフト部だったんで髪が邪魔で、初めて切ったんですけど、肩につくかつかないかくらいの長さで。高校入ってからは、今までと同じくらいの肩よりちょっと下みたいな長さをずっと保ってて。なのでここまで短くしたのは人生初ですね。2年前切ったときももうちょっと長かったんですよ、サイドも伸ばしてたし。バッサリショート、って見えないようなカットにしてたので」

──ロングとショートだとどっちがファンの方の反応が良いですか?

針谷「どうなんだろう…意見がバラバラすぎて(笑)。女の子は「ロングが良い」って言う子が多いですね。でも「ショートカッコいい」って言ってくれる子もいる…(笑)。ただ、2年前にショートにしたとき、お客さんがすごく増えて。「私きっとショートの方がいいんだ」ってそのとき思いました(笑)」

──お客さんの数ってそんなに変わるものなんですね(笑)

針谷「めっちゃ増えましたよショートにしたら。びっくりしました。TIF当日もチェキの列めっちゃ長くて。やっぱりショートカット好きの人が増えてくれましたね。ショートの女の子って少ないからなのかな。「こんなに増えるんだったら、もうちょっと前からショートにしとけばよかったな」って思ったくらい増えましたね(笑)。逆にショートにしてから「ショートカット興味ない」って言って来なくなる人もいましたけど(笑)」

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──6notesでは針谷さんの卒業ライブ以来の取材になりますが、アイドルを卒業して、舞台女優として活動を始めて、今どんなことを感じていますか?

針谷「アイドルって、暗黙の了解で「ある程度の年齢いくと厳しい」みたいなのがあるじゃないですか。だからみんな、卒業してソロで動く子もいれば、年齢を気にしない女優業とかモデル業とかに専念していく子もいて。その中で私は女優を選んだんですけど、「アイドルを好きな人はアイドルにしか興味がないのかな」ってすごく感じて。舞台をやるでも、チェキ会とかチケット販売イベントとか、ふれあう場所がないと来てもらえないことが多くて。そもそもチェキ会が生まれたのがアイドルの現場だって思うと、やっぱりみんなアイドルが好きなのかなって。素直に演技を見たくて来るって人は、やっぱり舞台でついたお客さんがほとんどで。舞台で知ってくれた方は「次の演技も見たい」「こういう演技を見たい」って来てくれるんですけど、元々アイドル始まりの人って「衣装かわいいから行くね」とか「握手会あるならそこでチケット買いに行くね」とか、そっちに目線を持って行かれることが多くて。何とも言えない気持ちになるというか…。やっぱりアイドルじゃなくなると興味がなくなるものなのかな、みたいな。卒業してすぐにSHOWROOMの配信をやったときに、「目標とするものは何ですか」って質問があって、「指原さんみたいになりたい」って言ったんです。一人でも出て行けて、一人でも需要があって、アイドルっていう目線じゃなく見てもらえる。今は川栄李奈ちゃんも女優業で成功していて、でもそれってAKBだからとかじゃなくて、女優さんとして見てもらえてるなって思うんです。今の私だと「お客さんがゼロになってもいいから、そういうふれあう場所をなくして舞台だけに専念する」ってしたら、今来てくれてるお客さんが相当減ると思うんですよ。これまでもう舞台を6〜7本やってきて、尚更それを感じるようになって。最初のうちはアイドルの頃のお客さんが「舞台も見に行くね」って言って来てくれてたんですけど、回数を重ねていくうちに、演技を見たいって思う人じゃないと舞台は来なくなる。それを、完全に舞台女優としての活動と立ち位置に切り替えた方がいいのか、今みたいな感じの方がいいのかっていうのをすごく悩んでいて」

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針谷「私、(元SUPER☆GiRLSの)八坂沙織さんと仲良くさせてもらっていて、八坂さんは舞台を始めてもう4年目とかなんですけど、今は舞台女優としてだけで動いていて、アイドル的なことは全くやっていなくて。そこに切り替えるまでに年数もかかるのかなとか。もうすぐ卒業して1年だし、舞台メインでやっていきたいし、あまりチェキ会とかをズルズルやってていいのかな、とか、自問自答の日々が最近続いてます。でもアイドルをやってなかったら、きっと舞台女優って道を考えつくこともなかったし、今でも来てくれる人も居なかったって思うから、アイドルをやってたことは大事なんですけど、どこまで「元アイドル」ってことと連れ添って行くのかっていうのを、すごく今考えてますね。いつまでも「元アイドル」って言われるのもあれだし。これは舞台女優に切り替えたアイドルはみんな思ってると思うんですよね。「『アイドルの君しか好きじゃない』っていろんな人に言われる」とか、「アイドルのときあんなにいたお客さんが、舞台になったらこんなに減った」とか、ガールズ舞台やってるとみんなそれは言うので、みんなそこに直面するときが来るなと思って。いくら「演技を見てください」と言ってもアイドルにしか興味がない人は来ないし。難しいところですよね。かと言ってじゃああと10年アイドルで居られたかって言われたら絶対難しいじゃないですか。アイドルじゃなくなってもステージに立ち続けるって道を選ぶには、絞られてくるというか、舞台とかモデル、タレント業に行く、いろんな道はあると思うんですけど、アイドルで居続けるっていうのは難しい。逆にもうアイドル卒業と同時に芸能界を引退した方が正解だったのか、でもステージに立ってる姿を見たいって言ってくれるお客さんもいるし。難しいなぁ、って思いながら今舞台をやってます。私はもう「元アイドル」として見てほしいんじゃなくて、自分一人を今年からは「舞台女優」として見てほしいんです。去年までは正直、卒業して半年間とかはそういう目で見られるのは当たり前だと思うから、そんなに意識してなかったんですけど、2018年はもう1月から舞台だったし、舞台女優としての自分を見てもらいたいって思うんですけど…。ただ、元アイドルじゃなかったらそもそもこんなに役ももらえてないし、元アイドルですごく助けられる部分と、元アイドルだったからこそ、これからどうしていったら良いのかな、っていう」

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──元々メディアでの露出が多いアイドルさんだと、仮に歌って踊る活動から役者活動に転向しても、それを見かける媒体が、テレビならテレビって形でさほど大きく変わらないから、そこまでファンとして抵抗がないのかなっていうのは思いますね。ライブ活動をメインでやってきたアイドルさんだと、活動の場がライブハウスからお芝居の劇場に変わるわけで、さらに現場での接触の機会もなくなってしまうと、ファンとしては「どうしたらいいんだ」ってなってしまうのかな、っていう。

針谷「ライブと舞台だと料金も変わってきますしね。大きな対バンだったら例えば3,500円で何十組って見れて、好きなグループが5〜6組一気に見られるけど、舞台って高いとチケットが7,000円とかして。だいたい2時間公演、舞台の中に目当ての子がポンっていて、周りの人を全く知らなくてその子しか興味がなくての7,000円だと、高いって感じるだろうな、って。ダブルキャストとかで出番がちょっとしかない、だけどチケットは7,000円、それでも来てくれる人はいて、本当にありがとうって思う分、「これだけしか台詞がなくて申し訳ないな」って気持ちもあるし。でも、最初から舞台で勝負してる子ってそこから始まるじゃないですか。ダブルキャスト、台詞一言、そこから始まって、お客さんがついていって売れて、って。その技術とかに追いつくには、元々アイドルで演技の勉強も全くしていないわけだから、尚更人一倍努力が必要だなって感じて。女の子だけの舞台だと、ぶつかり合うのが難しかったりして、仲良くなっちゃうんですよ。でも、仲良しこよしのまま進んじゃうと、どうしても熱量が感じられないのが嫌で、今も稽古中とか「ここのシーンこうだよね」とか「お客さんこのシーン絶対退屈しちゃうからもっと変えたい」とか言っちゃうんですけど、「やる気あってすごいね」とか言われて(笑)。でも、今まで定期公演を2,000円で見てたって人が、7,000円払って見に来てくれるって、めっちゃ高いって思うんですよ。それも接触がないなら尚更。今までは接触まで入れて5,000円でできてたものが、距離も遠い、会話もできません、でも7,000円、ってなったら、その分すごく満足して帰ってもらわないといけないって思うし。だから、アイドルのときよりも大変な気がします」

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──アイドルの頃と今と、一番違うところってどんなところですか?

針谷「自分にとってアイドルは、衣装も曲もダンスもステージも用意されて、「やってください」って言われたものをこなすものだと思うんです。自主企画じゃない限りは事務所側やスタッフさんが用意してくれたものをやるっていう。だから、アイドルをやってた頃は恵まれてたんだなって。舞台になったら全部自分だし、劇場づくりからバラシまで手伝ってっていう。私、12月に出た舞台でヒロインをやらせていただいて、そのとき「主演とヒロインはやらなくていいんだよ」って言われたんですけど、こういう場は経験しないとダメだって思って、全部手伝ったんです。劇場の照明もでっかい脚立登って外したりとか、クギ集めしたりとか、全部やったんですけど、舞台を作り上げるってすごく大変だなってわかって。それが大変だなって気づけなかったら、ワンマンライブやるにも、装飾が大変なんだとかそんなに今まで意識できなくて、逆に「ステージ全然装飾されてない、悲しいね」みたいな目線だったのが、舞台をやって裏方の大変さをすごく感じて。それに、舞台は一人勝負というか、自分で勝負できなかったら何にもならないので。誰かが仕事を用意してくれるわけでもなく、オーディションも自分だし、役を作り上げるのも自分自身だから。アイドルよりも生き残っていくのが難しい世界だなって感じます。上に行くには尚更。だから、名前を知られる舞台女優になるには、もう場数を踏むしかないなと思って、なるべく月1本舞台出るようにして、いただいた案件は全部受けて、自分でオーディションを探して行って、そうやって今はやってます。場数を踏んで、まずは舞台のお客さんや演出家さんに名前を知ってもらって、そうやっていかないと、そもそも仕事が来なくなるし」

──アイドルのお客さんと舞台のお客さんって、結構客層が違うじゃないですか。そうなると、アイドルのお客さんに舞台に来てもらうには、舞台の面白さを知ってもらうことが大事なのかな、と思うんですね。で、「その面白さを知るには、一度実際に舞台を見に行かないとわからない」だとちょっとハードルが高いのかもしれないですね。例えば、一人芝居の動画を配信するとか、同じ台詞を表現の仕方を変えてやって見せる動画とか、手軽に見られるものを提供して、そのきっかけを作ってあげるのは一つの方法かも、と思いました。

針谷「そう、一人朗読の動画を上げたくて、家でちょっとずつ撮ってるんですけど、声優さんのオーディションも台詞を読んでのオーディションになるので、それだったら誰でも聞けるなと思って。Twitterだと載せられる分数が決まってるから、短編で何個か載っけようかなと思ってます」

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──舞台のお仕事を始めたきっかけっていうのは何かあるんですか?

針谷「私はもう声帯結節とか喘息があったり腰痛があって、自分の身体的にも「このまま続けてて大丈夫なのかな」って不安がある中ずっとアイドルをやってたんで、卒業後に芸能を続けるかどうかすごく迷って。でも応援してくれる人がいる限りは、自分が何か返せるものがもっとあるなって思って、自分発信で何かできたらいいなって思って舞台を始めたのがきっかけです。1ヶ月半舞台が空いた時期があって、その時に治して声帯結節も取れて、そのおかげで喘息が出ることもなくなって、そこまで激しい運動もしないから腰が痛くなることもなくなって。「今、自分超元気です!」っていう状態でステージに立っていられるので、今まで3年間いっぱい応援してくれたおかげでこうして今も活動できているから、これからは舞台を通していろんな仕事を増やして、みんなにお返しをしていきたいんです。それに、ファンとの交流の場も、ネットでの配信だけじゃなくて、オフ会みたいに直接喋れるイベントを企画して、それもなるべく料金を安くして、内容も凝縮して開催してます。チェキだって本当はお金取らずにやりたいって想いもあるし。ただ、私としてはお仕事そのものを見てほしいんですけど、「ガールズ舞台は応援できるけど、男性の共演者がいると見たくない」っていう意見もあって、嫌な気持ちにさせずにお返しするっていうのも、難しいなって思ってます」

──確かに、全員に納得してもらって、満足してもらうっていうのも難しいですよね。

針谷「それともう一つ、舞台をやりたいと思ったのは、アイドルを辞めていった後、どうにもできなくなっちゃう子ってたくさんいると思うんです。すごく売れてるグループにいた子が辞めて、一年後とかにあまり有名になっていないところで復帰する子もいれば、普通の仕事を始めたけどやりがいを感じられなくて辞めてく子も多いし、またアイドルをやりたくてもできない子もいたりとか。(針谷が所属している)アークジュエルの先輩たちは、グループを卒業した後に事務所に残ってソロで活動していく人って少なくて、アイドルとは別の道に進んでいく先輩があまりいなかったから、自分が先導者になろう、って思ったんです。「アークジュエルでアイドルをやり切ったけど、芸能は続けたい」って人が出たときに、舞台の道もあるって考えられたら、生き方が変わってくるなって思って。だから今後は「アークジュエルで舞台やってる人と言ったら針谷」みたいな存在になりたくて。やっぱりみんないつかは卒業するときが来てしまうし、でもファンの方ってその後もその子の応援は続けたいじゃないですか。そこに舞台女優って道があったら、ファンもタレント側もまだ夢を追いかけ続けられる、そういう道を作りたいと思って。特にアークジュエルは舞台に出てる人が少なかったので、私はその先導者になりたいなって」

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──事務所自体は別にアイドル事務所ってわけではないですもんね。

針谷「そうなんです。事務所自体はアクアルナ・エンターテイメントとしてタレント事務所があって、その中でアークジュエルっていうアイドルのコンテンツがあるということなので、普通にタレントがいてもおかしくないし、いろんな人がいていいと思うので。だから(星野)愛菜さんみたいにソロで歌手やってますって人がもちろんいていいし、はるる(橘はるか)さんみたいにラジオとかMCでやっていきますっていう人がいていいし。もっと事務所としてもそういういろんな道が開けていった方が、所属する女の子もいろんな道を目指せていいなって思うから、私は舞台をもっと広げていきたいなって思います。小劇団の舞台から、大きなガールズ舞台から2.5Dまで、いろんな幅でやっていけば、事務所側に来るお仕事ももっと増えるだろうし。アイドルを卒業していった子たちが夢をまだ追い続けるには、舞台はいいなって思います」

──一般的にはアークジュエルさんは、アイドルの事務所っていう印象が強いと思うので、それが今後、アイドルのその先も事務所の中で考えていけるようになるっていうのは、良いですよね。

針谷「みんなそれぞれアイドルやりながらもいろんな夢があるじゃないですか。アニソン歌手になりたいって子もいれば、いつかはソロデビューしたいって人もいるし、モデルやりたい、とか。みんなアイドルを経た先の目標があると思うし、事務所もそれを支えてくれて、叶えさせようとしてくれるので、だったらもっと自分で道を拓いていった方が、先に繋がるなって。来月、アークジュエルのイベントでピアノの演奏で出るんですけど、告知したときにやっぱり言われますもん、「針谷まだアークジュエルいたんだ」って(笑)。グループを卒業した=事務所からいなくなってるものって思われがちだから、そうじゃないんだよっていうのを伝えたいし」

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──そうすると、事務所を辞めてフリーの立場で女優の道を、なんてことは考えなかったんですね。

針谷「そうですね。最初はちょっと考えましたけど、でも事務所を辞めてフリーになったら今後に繋がらないなって思って。これからもこの事務所でたくさんのアイドルが生まれていくし、メンバーの入れ替わりもたくさん起きるけど、アイドルが終わったらそこでタレントの命も終わりってなるのは、夢がないっていうか。みんなアイドルをやるからには夢を持ってる子たちが集まってくるわけだし、夢をもっと広げていくには、いろんな仕事をできる子が一人でもいれば視野も広がるしって思って。だったら私は事務所を辞めずに、ここで舞台女優業を一人でも貫いて、「アイドルを辞めた後、私も舞台やりたい」って思ってくれる子がいたらいいなって思う。それで実際めめたん(錦織めぐみ)さんとか、はるるさんがアリスインプロジェクトに出て、ちょっとずつだけどそれが見えてきて、嬉しいなって感じます。卒業した後も夢を追い続けられる場所があり続けたらいいなって思って、事務所を辞める気は全然ないですね。ここに残りながら、いろんなことをしていけたらいいな、って」

──すごいですね、事務所や後輩のことも想って…

針谷「もちろん自分が舞台やりたいからですけどね(笑)。アークジュエルがアイドル事務所だって思われてるってことは、前向きに捉えればアークジュエルって名前が知られてるってことだから、フリーになった途端それを失うのであれば、ここに所属してるっていうことを保ちながらやっていこうっていう。それに、舞台側の人も「元アイドルの子ってヒロイン以外やりたがらないし」とか「元アイドルってだけでプライドが高い子もたくさんいるし」とか「元アイドルの子はシタッパの仕事を手伝わない子も多いし」とか、結構言われて。でも「そうじゃなくて頑張ってる元アイドルの子がいるっていうのも知ってもらいたいです」って言って、劇場づくりからバラシまで手伝ったりとか。そしたら、劇団の人も「元アイドルでもこんだけ真剣にやってる人がいるんだ」って思ってくれたら、「元アイドルの子どんどん使おうよ」ってなってくれるかもしれないし、元アイドルで女優やってる子たちも仕事増えるし。そうやってどんどん繋がっていけばいいなって。だからオーディションもいっぱい受けて、ハングリー精神で、出たい舞台は全部取ってくくらいに出てって、どんどん名前広げて、アークジュエルをアイドル事務所としてじゃなくて、タレント事務所として見てもらえるようになったらいいなって思いますね。もっと舞台やる子が増えてほしいし、芸能活動のジャンルを広げたいです。アイドルで終わりです、って寂しいじゃないですか(笑)」

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──すごく針谷さんらしいお話が聞けたなぁ、って思います。「自分だけじゃなくて、みんなが良くなるのが一番いい」っていう。

針谷「事務所で朗読劇とかやっても面白いと思うんです。なかなかないと思うんで。そういうことやってったら、お客さんにも「舞台って面白い」って思ってもらえると思うし。演技をやるってなると最初は大変なので、朗読劇であれば」

──そういう形で、「ライブハウスとお芝居の劇場の間」みたいなイベントができたら面白いですね!

針谷「今年の誕生日に何かイベントやりたいなって思ってて、「一日復活『じぇるの!』」とかやってもいいなって思ったんですけど、それだけじゃなくて、今演技をやってるからそれを見てほしいなって思って。そのイベントで朗読をやろうってずっと思ってて、社長に相談したりもしてたんですけど。ジュエルビート(アークジュエル所属のグループが出演する、事務所主催のライブイベント)のアイドル朗読劇版のようなイベントがあれば、「演技って楽しい」って、お客さんにもアイドル側にも知ってもらえるなって気がしますね」

──そういうイベントをやろうとしたら、やっぱり事務所に入ってないとなかなかできないですもんね。

針谷「そうですね、場所とかの用意もありますからね。あとは、アークジュエル所属の各グループ2人ずつくらいで出てくれて、それぞれのグループのファンが集まってくれたら、それだけで広がるし。もっとみんなが舞台の面白さを知ってくれたらいいなって思います。私も自分が舞台をやるまで面白さがわからなかったんですけど、自分が出るようになって、共演者の方の舞台も観るようになって、一回観出すとめちゃめちゃ面白くて。一回観たらハマると思うんですよ。一回でいいから観に来てくれたら、舞台が楽しいっていうのを伝えられる自信があります。だからいつも「一回でいいから来てください!」って告知するんですけど(笑)」

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──その「一回でいいから」の伝え方が難しいですよね。「一回観れば面白さをわかってもらえる自信があるから」って想いも一緒に伝わらないと、「一回でいい」っていうのが変に伝わっちゃうな、と。

針谷「難しいですよね。どうしたら観たくなるかな、って。映画みたいに予告編とか流せるわけじゃないし、ネタバレするわけにもいかないし。観に来てもらいやすいっていう意味では、ガールズ舞台はやっぱり足を運びやすいと思うので、ガールズ舞台を観てくれた人が、なるべく次に繋がってくれたらいいなって思うんですけど。ただ、男の役者さんがいるほうが、舞台の面白さは倍増するんですよね。パワーとか熱量が全然違くて。私、1月が男装役だったんですけど、やっぱり女の子だし(笑)。男に見えるように仕草とかめっちゃがんばったんですけど、これが本物の男がやってたらもっと違う迫力だったんだろうな、とか。殴り合いのシーンもあったんですけど、転び方とかも映画の「クローズ」とか見て、転んだ後の血の拭い方とかめっちゃ見たんですけど、やっぱり男には負ける部分があるというか。お母さんが今までの舞台を全部観てくれてて、一番面白いって言ってくれたのがその私が男装した舞台だったんですけど、「お話のストーリーも面白かったけど、女の子が出ずっぱりだとアクセントがないから、そこに男装の子がいるだけでインパクトがある」って言ってて。そう考えると、ガールズ舞台はガールズ舞台の面白さもあるけど、演劇の面白さって、男女が混ざった物語だなって感じますね。演技しててもだし、観ててもだし。ガールズ舞台は見てて綺麗だし、癒されるんですけどね。男女混合の舞台の面白さっていうのも見てほしいなって思いますね。アイドルのファンの方の「男の人のいる舞台は見たくない」っていう気持ちもすごくわかるんですけど、あまり毛嫌いしないで、一つの作品として舞台を観てもらいたいなって思いますね」

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──もう完全に「女優・針谷早織」として見えています。

針谷「見えてますか(笑)。でも楽しいですよ、演じるの。大人になると我慢しなきゃいけないことってたくさんあるから、それを爆発させられる場所というか(笑)。自分の思っていることを吐き出せる場所だから、泣くシーンにしろキレるシーンにしろ。普段「フーッ」って我慢してるムカついてることとか思い出しながら怒ったりとか、泣きたくても泣けないことってたくさんあるけど、泣くシーンで爆発させられるし。めっちゃはしゃぐシーンとかは、普段はしゃぎたいけど大人だからって我慢しなきゃいけない子ども心を出せる場所というか。世の中で溜まってるストレスを全部吐き出せるみたいな気持ちです。我慢する必要がないから、本当に楽しい。殴るシーンとかも、実際当ててないですけど、普段「コノヤロー」って思うことをそこにバーンって当てるだけで、一気にカッコ良く見える。舞台やってると、稽古して本番やって、の繰り返しで、もう役者の人としか関わらないので、家族並みに毎日一緒にいるし、情もわくし。だから泣くシーンはすごく泣けちゃうし、ムカつくところはすごくムカつくし」

──そうなってくると、だんだん現実とお芝居の境目がわからなくなる感じですか?

針谷「12月の舞台は私がロボット役で、主演の男の人が「君のために僕は拳をもう一度振るう」みたいなお話だったんですけど、なるべく感情がちゃんと入るように、稽古中でも休憩の時間でもなるべく会話するんです。そこがうまくいかないと演技中のアイコンタクトもうまくいかなかったり、お互いの息が合わなくなっちゃうので、なるべく同じ時間を過ごします。お互いのことをわかり合えないとうまくいかないので。3月の舞台は奥さんと旦那さんの話で、そのときもずっと二人一緒にいたし、そうしないと、きっと泣くシーンも泣けないし。だから、演じてる部分8割で、自分自身が2割入りながら演じてるというか。人によって、役を自分に近づける人と、自分を役に近づける人といるんですけど、私は自分を役に近づける方で。なるべく自分自身で演じようって感じですね。「針谷早織がこの子になった」、みたいなパターンでやってますね。だから男装とかすっごく楽しかった(笑)。自分がもし男装してる女だったらこんな感じなんだろうなとか思いながら。すごく楽しかったですね(笑)。5月の舞台は生徒会で、みんなを怒る役なんですよ。「ここは学校なんだから、あんたたち真面目にやりなさい」みたいな。すごく楽しそうだなって思いながら(笑)。自分が上の立場になることは結構多かったんで、学級委員とかやってた頃の気持ちを思い出しながら、楽しみながらやろうって感じですね」

──かなりお時間も過ぎてしまいましたが…どういう気持ちで女優になって、どういう意識で女優をやられているのか、たっぷり聞かせていただきました。ありがとうございました!

針谷「ありがとうございました!」

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【プロフィール】
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針谷はりがや 早織さおり

1993年7月9日 栃木県出身
Twitter
ブログ


Photo & Text:芳田賢明


針谷早織 出演舞台
アリスインプロジェクト「ダンスラインTOKYO」

■日程 2018年5月9日(水)〜13日(日) 全8公演
■会場 品川 六行会ホール
http://aliceintheater.info/
■チケット
■針谷早織予約
http://ticket.corich.jp/apply/91116/104/
■カンフェティ
https://s.confetti-web.com/detail.php?tid=45569&

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