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【連載】芳田賢明「memorygram」第25回

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「フィルムっぽさ」の正体

みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第25回です。

「(デジタル撮影だけど)フィルムっぽく」という言葉をよく耳にします。
あるいは「フィルムライク」みたいな言葉だったり。

デジタルはフィルムよりも現物に忠実な色調表現なのは確かだし、同じフォーマットで比較すればデジタルの方が圧倒的に解像度が高いのも確かで、良くも悪くも「デジタルはリアルに写りすぎる」と言うことができます。
また、「自分の色」を出すために、RAW現像をフィルム時代の暗室作業に位置づけ、自分なりの画づくりをすることも重要です。このとき、「フィルム写真の出方」が一つのリファレンスになるのも事実です。

そして、ここ数年のデジタルフォトの色調は、InstaramやVSCOの影響を受け、より「フィルムっぽい」と称される画づくりが行われるようになっています。

しかし、その「フィルムっぽい」画づくりは本当にフィルムっぽいのか、疑問に感じることがしばしばあります。
さらに追究していくと、その「フィルムっぽさ」とは一体何なのか、とても曖昧な定義になっていると考えられるのです。

私自身、撮影をデジタルに完全移行したのは2004年。それ以来、「私が好きな『35mmのネガプリントっぽい画づくり』をいかにデジタルで表現するか」を未だに追求し続けています。
「フィルムっぽい」なんてアバウトな言い方はしません。それは、好みや目指すものが明確だからです。

そもそもデジタルに移行した当時はまだ、「写真」に対して「デジタル写真」があったわけで、「フィルム写真」という括りはありませんでした。レトロニムですね。
写真にはネガがありポジがあり、35mmがありブローニーがあり大判のシートフィルムがあり、微粒子があり高感度があり、デーライトがありタングステンがあり、そしてポラがあり。
またフィルムをライトボックスで見るのか、あるいは紙焼きで見るのかによっても全然違うわけです。
それが異なれば「っぽさ」は全然違うわけで、それがわかれば「フィルムっぽい」という言い方がどれだけアバウトかがわかります。

いま言われている「フィルムっぽさ」とは何かを考えると、大きく分けて
「写ルンですっぽさ」…ピントがあいまいな、全体にぼやっとしたような、粒子粗め
「大判フィルムのネガプリントっぽさ」…トーンが豊か、解像度高め、淡い色味、粒子を感じない
「ポラっぽさ」…色は濃い目だけど、あまり正確でない感じ
あるいはこれらがミックスされたものといえるのかな、と思っています。
この3つだけ見ても、それぞれ画づくりの方向性は違いますし、「フィルムっぽさ」と言う人の中に、8×10のカラーポジっぽさを指す人を見たことはありません。
Instagramが流行る前は、クロス現像やLOMOっぽさを目指す画づくりがありましたが、最近は見かけません。

何が言いたいのかというと、「フィルムっぽい」と言うのであれば、Instagramだけを見るのではなく、本物の銀塩写真を観ませんか? ということ。
「フィルムライク」と検索したり「フィルムっぽいRAW現像の本」を読んだりするのもいいですが、自らフィルムで撮ってみるのが一番なんですよ。
それも写真屋さんからデータで受け取るのではなく、なるべく大きな紙焼きで受け取りましょう(ネガの場合)。
特にモノクロ写真では、美術館に収蔵されるようなオリジナルのゼラチンシルバープリントを観察するのがいちばんです。

「フィルムっぽく」するために「粒子」と称してノイズを入れる人が多いですが、フィルムや印画紙への粒子の入り方をわかってやっているか?
「フィルムっぽく」するためにRGBゼロをトーンカーブで持ち上げる人が多いですが、紙焼きやフィルムの特性曲線や最大濃度をわかってやっているか?
色味(色温度、色かぶり、個別の色相や彩度)に関しても同様ですね。

本物を見れば、「いわゆる『フィルムっぽさ』というのは『インスタっぽさ』かもしれない」ことに気づくはずです。

画像加工は画像を壊すことです。それを「画づくり」と区別するのは、それが表現として成立するかどうかです。
多くの写真を観て、他人に流されない、ポリシーのある画づくりをする人が一人でも日本に増えることを願っています。

語るだけはいけないので、先日撮ったばかりの一枚を載せておきます。
L1040026

ここ最近はM9-P+エルマリート28mmの組み合わせにハマってます。


【プロフィール】
芳田 賢明
(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/


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芳田賢明 著、プロカメラマンに向けた[仕事に即役立つ本]
「誰も教えてくれなかった デジタル時代の写真づくり」
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