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【連載】大石孝次の「音楽な日常」第132回

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『心にぽっかり穴があく』

今年も3月11日がやってきました。
早いのか遅いのか、あれから11年が経ちました。
様々な思いが取り残されたままかもしれません。
思い出すことを憚られるかもしれません。
それでもこの日は訪れます。

あの日は東京で仕事をしていました。
事務所の席に座っていました。
突如、襲われた揺れは激しく、天井にむき出しで吊るされた大型のエアコンが落下してきそうです。
ビル1階の事務所と横にあったスペースに居たワークショップに来ていた人達全員で外に逃げました。
ビルの前は大きな通りで、そこには近所中のビルからあふれるように人が出てきました。
見上げればビルの谷間。再び揺れが起きたらビルのガラスが降ってくるかもしれません。
しばらくその場で過ごした後に建物の中で落下物に気を付けようという事になりました。

道路は大混乱と渋滞。普段なら車で15分程度の場所から戻ってくるのに、その日は3時間以上かかっていました。
その後は更に酷い渋滞になっていくことに。
電車は運行を止め駅には人があふれ出しました。

新宿駅は閉鎖されて、新宿御苑や近隣の学校のグラウンドに一時退避の指示が出されました。
既にパニック状態の中で、新宿御苑に待機していた人から連絡が入りました。
寒空の下、数時間待っていてもなにも情報が入らないと。
事務所はおかげさまで電気は通じていて暖房はあり、トイレも使えるのですぐに来るように伝えました。

2時間ほど経った頃、その日、撮影のために押さえていたスタジオをキャンセルするために伺いました。
有名なライブハウスに隣接されたスタジオだったので、どんな状況になっているのかも気になっていました。
状況が状況なのでキャンセルはやむなしという事で、キャンセル代は免除されました。
その夜に開催予定だったライブをどうするべきか、スタッフ内でも喧々諤々している様子。
携帯電話も繋がらない状況なので仕様がありません。

その時、何が起きているのかどんな状態なのか、まだ知る由もなかったのです。
事務所に戻る途中、早く仕事を切り上げた会社員たちが、電車が停まってるから仕方ないと言いながら居酒屋に入っていきました。
その時はそれも正解だなと思っていました。
携帯電話が繋がらないため、公衆電話には長蛇の列が。
自分は地震の揺れを感じて避難行動をしながら家族に電話をして安否を確認しました。
その後、通話はしばらく出来なくなってしまいましたが、その前に安全の確認が出来ていて一安心でした。

事務所に戻るとネットでニュースライブが観られるようになっていました。
そこに飛び込んできた映像は、見たこともない恐ろしいものでした。
立ち上がった水の塊が港や町、空港などへ流れ込んでくるものでした。
事務所にはテレビはありますがビデオの再生用で地上波の放送は受信できません。
今何が起きているのかリアルに実感できません。
今のネット社会や環境が一気に発達するきっかけになったのかもしれません。

不安を感じ、直ぐにコンビニに食料を買い出しに行きました。
店内には同じ考えを持ったOLさんがいましたがまだそれほど多くはなく、必要な分は確保できました。
事務所にいた人もまだ危機感が足りていなかった状態だったのかと思います。
時間が経つにつれて、自分の身の回りに起きていることに対する実感が湧いていったと思います。

夕方、表が暗くなった頃、近所のハンバーガーショップに行きました。その時はまだ営業していました。
その帰りにコンビニに寄ると、棚から食品は一切なくなっていました。
そして新宿通りを四谷方面から新宿駅方面に、渋滞で車が詰まっている車道を含め人の群れが一気に向かって歩いて来ます。
その状況に恐怖を感じました。その流れに逆らって歩くことは出来ないくらいの人数と勢い。

駅に向かってもJRも地下鉄も私鉄も未だ動いてはいません。
心理としてやはり駅に向かうのは分かります。電車が動くのを待つしかないのですから。
これは事務所に泊まるしかなさそうだと考え、こっそりと近所の銭湯に向かいました。
するとこの状況ですから臨時休業の張り紙が。
この時、普通以上にがっくりした気持ちになりました。何か気持ちや心が折れたような。
外の寒さと暗さがだんだんと沁みてくるようになります。

この後、まず地下鉄が運行を再開しました。そして私鉄も。
横浜在住の身としては、帰宅ルートが全てつながるのを待ち、22時過ぎにようやくルートが確保されたことを知り、帰宅にトライいたしました。

地下鉄を乗り継ぎ渋谷駅に到着した時はびっくりしました。
地下の通路や階段に電車の再開を待って溢れた人、人、人。
映画やドラマでは見たことはありますが、現実のこの状況は恐怖でしかありませんでした。

当時の東横線の渋谷駅ホームは大きな階段を上がったところにありましたが、その階段は立錐の余地がないほど詰まっていました。
ゆっくり数段ずつ時間をかけて上へと向かいます。
電車は順次運行されていますが、全て各駅停車で運行されスピードもゆっくりと進行していました。
その状況でも1時間くらいで乗車することが出来、乗り換えをする横浜駅まで行くことが出来ました。
横浜では市営地下鉄が夜間運行をしている情報があったので、地元まで運んでくれました。
4時間以上かかりましたが、自宅に戻れたことに感謝いたしました。

やはり今でも、あの日のことは鮮明に覚えています。
あのような体験はもう2度としたくありません。
その後に待っていた体験も思い出したくないような事が沢山です。
このようなことが起きないことを願いつつ、警戒を怠ることもありません。

当時の映像を見返すと恐怖が甦りますが、目をそらす訳にはいきません。
年に一度、その日のことを忘れることなく思い出し、被災者の方への祈りを捧げる日にいたします。

それでは最後にこれを聴きながらお別れです。
ケニー・ドリュートリオで「When You Wish Upon a Star」。

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