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【連載】芳田賢明「memorygram」第54回

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自分の写真のルーツ

みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第54回です。

私が写真を表現として強く意識することになったきっかけは、もう30年近く前の話。中学時代に受講していた進研ゼミの情報誌の表紙でした。
毎号、現役中学生のポートレートなのですが、まだ今のようなスターになる前の蜷川実花さんが撮られていて、その写真に衝撃を受けたのです。
初めて好きになった写真家は間違いなく蜷川さんで、私のポートレートのルーツはここにあります。

当時の本はもう処分してしまっているのですが(今となっては残しておけばよかったと)、Webで検索しても出てきませんね。
蜷川さんが進研ゼミの情報誌の撮影をしていたというのは、蜷川さんのファンの方でもあまり知られていないのではないかと思います。
20年近く前にお会いしたときにそのエピソードを話したことがありますが、驚かれていました。笑

もう一つ、私が写真を意識することになったきっかけを思い出す機会が最近ありました。

ドラマ「警部補 古畑任三郎」のサウンドトラック。
「警部補」と付いているので1stシーズン。これもほぼ30年前ですね。
https://music.apple.com/jp/album/%E8%AD%A6%E9%83%A8%E8%A3%9C-%E5%8F%A4%E7%95%91%E4%BB%BB%E4%B8%89%E9%83%8E-%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF/1231386662

当時小学生だった私が、友人たちと企画して実現させた初めての催しが「古畑任三郎」の劇でした。
これもある意味、その後に続くライブや展示のイベントのルーツともいえます。
オリジナルの脚本で上演したのですが、劇伴が必須ということで、学校の公衆電話から「曲をもらえないか」とフジテレビに電話。まだ河田町の頃。ネットも携帯もなかったですからね。
サウンドトラックというものを知らなかった私は、フジテレビの方から「CDになっています」と教えてもらい、地元のレコード店に買いに行ったのでした。

田村正和さんが主演で、そのインパクトの大きいドラマですから、ジャケットにも田村さんが出ていると思いきや、薄暗い街の写真。
ブックレットにも田村さんは登場せず、街のスナップが続いていく構成。
今となれば、契約の関係で出演が叶わなかったのだろうなどと思えますが、当時の自分にはとても不思議でした。ドラマのスチールを使っているとかならまだしも、スナップの世界観がドラマと違うんです。
でも、その写真に妙な魅力を感じたのを今でも覚えています。
今なら、「人がいない街に感じる人の気配のようなものが写っている」と言語化できますが、見たことのない種類の写真に、言い知れぬ感覚を覚えたのだと思います。

最近偶然、Webでこのジャケットを見かけたのですが、「懐かしいなぁ…あれ? ここ知ってるな…あー、ガーデンプレイスだ」と。
右の建物がウェスティンホテルで、左がマンションです。まだ建設中。
当時はここがどこなのか全くわからず、どこだろうとも思わなかったのですが、見てすぐわかるようになったんだなと、自分がそれだけ歳を重ねたことにも気づいたり。

こうして書いていくうちに、もう一つ思い出しました。

NHKの「みんなのうた」で放送された、大江千里さんの「秋唄」。
https://www.nhk.or.jp/minna/songs/MIN199810_01/
これも25年前、ちょうどPhotoshopを使い始めた頃です。

アニメーションや動画ではなく、写真のスライドショーで構成されている映像です。
歌詞に合わせたスナップで、当時の同世代くらいの女の子が写っていました。
これも妙に刺さったんです。こういう写真を自分も撮りたい、と思ったんじゃないかと。

この1年後にデザイン系の高校に入り、写真を勉強し始めるわけですが、少なくとも高校時代にこういう写真は撮れなかったですね。
大人になってライカを手にしてやっとイメージに技術が追いついてきたような感じで、でももうその頃には目の前から青春が消え去っていて。

というわけで、「警部補 古畑任三郎」のサウンドトラックと「みんなのうた」の「秋唄」、これが私のスナップのルーツかもしれないな、と。

長らく写真を続けてきて、写真のいろんなことを勉強してきていますが、写真のことを知るほど、写真のことを考えるほど、「撮りたい」という衝動から離れていくような気がします。
何が楽しくて撮ってたんだっけ、とわからなくなることもあります。
でも、学生の作品とかを見ていると、その純粋な視点から思い出すんですよね。自分が忘れかけていたものを。
それと同じように、自分の写真のルーツを忘れずにいておいて、たまにそこを振り返ることで、自分の写真の根っこのようなものを再認識できるのかもしれません。

それとお知らせ。
雑誌「コマーシャル・フォト」さんに久々に寄稿しています。
4月14日発売、コマーシャル・フォト 2023年5月号、特集「プリンティングディレクターに聞く 印刷現場とのコミュニケーション」の「商業印刷物の場合」を執筆しました。
入稿データや色見本、色校正について、フォトグラファーからよくいただく質問や、より良い印刷をスムーズに行うためのアドバイスを書いています。
http://www.genkosha.co.jp/cp/backnumber/5172.html
ラボや印刷所へ入稿される機会のある方、ぜひチェックしてみてください。


【プロフィール】
芳田 賢明
(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/


dgpc_cover
芳田賢明 著、プロカメラマンに向けた[仕事に即役立つ本]
「誰も教えてくれなかった デジタル時代の写真づくり」
好評発売中

(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4870852349/
(honto)
https://honto.jp/netstore/pd-book_29714615.html
(ヨドバシ・ドット・コム)
https://www.yodobashi.com/product/100000009003153309/


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