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【連載】芳田賢明「memorygram」第38回

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初めての染料プリンタ

みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第38回です。

レタッチやカラーマネジメントに携わっていることもあって、インクジェットプリンタは顔料プリンタばかり使ってきました。今もメインはSC-PX5VII。いいプリンタです。
新機種のSC-PX1Vも気になるは気になるし、従来のA3ノビ機のマシンサイズでA2ノビをプリントできるSC-PX1VLもいいなぁと思います。
ただPX5VIIがいいプリンタで、特に不具合もないので、買い替えようとは特に思わない状況です。

そんな中、染料プリンタを使う機会が何度かありました。光沢紙に合うとか色が鮮やかといった一般的な特徴は把握していましたが、自分の写真をプリントするのは初めてでした。
そこでまあ、実際やってみて体感することの大切さということなのですが、その自然な光沢感に惚れ込んでしまいました。
光沢紙で顔料プリンタを使うと、どうしてもインクの乗り方によって光沢感にムラが出て、自然な仕上がりになりません。特に暗部は、表面を光に照らすと階調が反転したように見えてしまいます。個人的には、これが顔料プリンタの唯一の欠点ではないかと思っています。

染料プリンタは、光沢感は非常に自然なのですが、プリント後に色が落ち着くまでにかなり時間がかかることや、耐久性が顔料より良くないこと、あと自分にとってはその鮮やかさがかえってコントロールしにくい、といったことがあります。光沢感以外はなかなか難しいものがあるのです。
ただ、その光沢感に完全にやられました。その光沢感さえあれば、あとはどうにかしようと思わせるくらいの魅力がありました。

ちょうどちょっとした展示をやることが決まったこともあり、またわりと手頃なプリンタでも一定のクオリティが出せることがわかり、EP-50Vを買いました。顔料と染料での使い分けを考えれば、2台持ちも良いだろう、と。
A3ノビのプリンタも本当に小さく軽くなりましたね。大判プリントを気軽に出せるようになるというのは素晴らしいことです。

セットアップしてまずは純正プロファイルでプリントしてみましたが、ちょっと違うということで、i1Studioでのプロファイル作成へ。
顔料プリンタと同様に、プリントして数十分で測色してみましたが、やはりドライダウンの影響が大きいようで、プリント後30時間で測色することに。2枚測るので、プロファイル作成に2日かかってしまいます。
その条件でいくつかテストしてみて、若干の補正カーブを当てればOKプリントを作成できるようになりました。PX5VIIよりマッチングが良さそうです。

以下、いろいろやってみてわかったこと。
■鮮やかに出る分、データ上の少しの色転びが誇張(派手)されて見える傾向がある。
■用紙の面質がそのまま生きるので、プリントの汚れや擦れ、ローラー跡が目立ちやすい。
■純正写真用紙は前面給紙だと汚れやすいので背面給紙がいい。
■クリスピアは背面給紙だと折れ目が入るので前面給紙がいい。前面では入らないサイズはどうしたらいいのか教えてほしい(多分無理なのでしょう)。
■出力解像度による印象が顔料プリンタと違う。ライトインクの効果があるように思う。顔料の「きれい」と染料の「最高画質」が同じくらいな感じ。
■走査方向に網点が流れる。双方向印刷をやめてもギャップ調整をしても変わらない。出力解像度が上がれば目立たなくなるが、流れてはいる。
■双方向印刷の有無での画質の変化は感じないが、オフの方が表面の仕上がり品質が良い。

この価格でこの品質が出せるのはすごいと思いますが、クオリティを高めようと思うとなかなか手間がかかります。
ただそれでも、自然な光沢感は他に替えられないものがあると感じます。この透明感は顔料プリンタでは出せません。

というわけで、今後は基本的に光沢紙の作品は染料プリンタを使っていきたいと思います。
作品を販売するとか、アーカイバル面が問題になる場合は考えないといけないですが、とりあえず現状の自分にそういう用途はないので。笑

そういえば、M10-Rの実戦投入も徐々に進んでおります。
肝心の同環境での撮り比べができていないのですが、Rの方が階調が豊かな気がしています。気のせいかもしれませんが。
あとやはり常用感度がISO100からなのは嬉しいです。
ただ、M10と比べるとどうしてもノイズが気になります。ISO100でもある程度カラーノイズを感じます。もちろん現像で除去できる範囲ですが。
このあたり、ちゃんと検証してまた書ければと思っていますので。

L7004110
やっと時間を作れて、ずっと行きたかったところへ車で。早くしないとすぐ日が暮れてしまう。
M10-Rにズミルックス35mm。なんだか贅沢な気持ちになる組み合わせ。アポズミクロンへの欲望はしばらく温存しておきます…。
M10とM10-Rを両方持ち出す撮影では、トリミング耐性のあるRに広角を装着しています。
そこで先日の撮影ではRにエルマリート28mmを付けていたのですが、意外にこれもこれでかなり良かったです。


【プロフィール】
芳田 賢明
(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/


dgpc_cover
芳田賢明 著、プロカメラマンに向けた[仕事に即役立つ本]
「誰も教えてくれなかった デジタル時代の写真づくり」
好評発売中

(ヨドバシ・ドット・コム)
https://www.yodobashi.com/product/100000009003153309/
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