「ライカはレンズだ」について
みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第26回です。
早いもので、ライカを使い始めてから約6年になります。
「求めていたカメラにようやく出会えた」とライカを使うようになって、光と陰影の見え方が明らかに変わりました。まさにライカに写真を教わっているような感覚です。
ですが、レンズまではライカのものが使えるだけの財力がなく、サードパーティのレンズで撮影してきていました。
1本だけなら頑張ってライカレンズを買うこともできましたが、それよりも代表的な焦点距離をサードパーティで揃えて、一通りの撮影をできるようにすることを選びました。
そこから本当に自分に必要な焦点距離を見極めてから、ライカのレンズを買おうと思ったのです。
ライカはボディの特性だけでも十分素晴らしく、他のカメラでは得られない写真が撮れ、撮影のたびに感動してきました。
しかし、ベテランの先輩フォトグラファーとライカの話になると、必ず伺うのが「ライカはレンズが良い」ということ。
「いつかはレンズもライカに」と思いつつ、「レンズでそんなに変わるのかなぁ」とも思っていました。
ライカで使っている焦点距離はほとんどが50mmで、7:3くらいの割合で35mmもという感じです。
好きで使っていた50mmのレンズは収差の残ったオールド感のあるレンズなのですが、それだけに逆光のシルエットや点光源にパープルフリンジが出てしまうのが玉に瑕でした。
絞れば消えていくのですが、意図して大口径レンズを使っているのにそれでは意味がないわけで、場合によってはレタッチを入れつつ使用していました。
そんな中、ある撮影でまたやはりパープルフリンジが出て、ついに決意します。「ライカレンズ行ってみるか」と。
まず購入したのは、最も使うであろうズミルックスの50mm。現行のアスフェリカルです。
M9-PとM10でテストを繰り返し、描写特性を確認、RAW現像のパラメータを詰めていったのですが、「なるほど、これはすごい」と。
簡単に言うと「ボディの性能を引き出すには、やはり純正のレンズなのね」という感じ。開放から桁違いの解像力と収差の少なさ、そして色味の良さ。
解像力が高いから人肌には向かないと思いきや、まつ毛などの輪郭をきちっと出すだけで、肌のディテールが強調されるわけでもない。そして何よりボケが綺麗で、シャープさとの対比がものすごい立体感を出す。
6ビットコードでレンズが認識されることで、RAWデータの時点でシェーディング補正がかかり、EXIFにレンズ情報が残るのも地味に助かります。
「ライカ使うならレンズもライカにしたほうがいい」という先輩方からのアドバイスの意味を、ようやく理解したわけです。
そして満を持して迎えたデビュー戦は、おなじみ、みやのねりさん(https://twitter.com/1wan2nyan3)。
作品撮影としては約1年ぶり。仕事の撮影では何度かご一緒していましたが、コロナ禍でなかなか作品撮影ができず、今回感染対策を行いつつ撮影となりました。
繊細な描写ととろけるボケがつくる立体感。奥行きのあるふんわりとした描写です。
立体感が出るということは、存在感も出るということ。脳内の記憶描写にも近い気がします。まさにmemorygram向き。
こってりとした色乗りも私好みです。この風合いをデジタルで出せるなんて…!
逆光での透明感がまた素晴らしい。フレアの入り方も絶妙です。嫌な収差もなくすごくナチュラル。
こんな胸騒ぎのするような写真、ライカじゃなきゃ撮れないと思うんですよ。
まだ写真の仕上げが終わらないので、速報という感じで先行してご覧いただきました。
準備が出来次第、Instagram→Webサイトと掲載していきます。
実は旅用にエルマリートの28mmも購入して、年始にGoToする予定だったのですが、感染拡大の状況からさすがに断念。
溜まった作業を一気にこなす年末年始になりそうですが、時間があったら都心の人の少なそうなところへ撮りに行こうかと思っています。
【プロフィール】
芳田 賢明(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/
芳田賢明 著、プロカメラマンに向けた[仕事に即役立つ本]
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