PX1VLを買った
みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第58回です。
次から次へと押し寄せるマルチタスク、9月末のゴールがなんとなく見えてきました。
とりあえずこの暑いのをなんとかしてほしいですね。
さて、PX1VLを買いました。
PX5V2を8年くらい使ってきて、結構長い間検討をしましたが、やっぱりエプソンだなと。
正直、PX5V2でプリンターとして完成形に近いものになっていて、後継機種でそこまで変わるとは思っていませんでした。
PX1Vのスペックなどを見ても、そこまで劇的な変化は感じない。
が、比べてみると全く違いますね。ちゃんと進化している。これは使ってみないとわからない。
いちばん衝撃だったのは、光沢ムラの軽減です。
顔料プリンターは紙の光沢とインクが乗った部分の光沢とで差が出てしまう宿命があり、PX5V2でも困るくらいかなり出ます。
それでキヤノンはオーバーコートで軽減させているのですが、エプソンの現行機種にはそれがないため、次はキヤノンかなとも思っていました。エプソンで光沢紙はダメだと言う写真家もいるくらいです。
それがPX1Vになって、オーバーコートなしで相当軽減されていてびっくり。中間調〜シャドー部に関してはほぼ改善されている感じ。すごいです。
オーバーコートをしたらしたで少し質感がナチュラルでなくなる弊害もあるので、それを考えると、1Vの出方はかなり良い線を行っていると思います。
「エプソンはオーバーコートがないからダメ」と思っている写真家、普通にたくさんいるので、ここはエプソンもっとアピールした方が…。
ただモノクロでの光沢ムラはまだもう少し頑張ってほしい。カラーならいいんですけどね。
とはいえ、現実問題モノクロを光沢紙で出すことがそんなにあるのか、ということもあるので、実質的に問題ないのかもしれません。
次に思ったのは、色とトーンがかなりナチュラルになったことです。
5V2のプリントだけを見てる分には特におかしな感じはしないのですが、並行して使っている染料のEP-50Vと比べるとちょっと「あれ?」と思うことがありました。
言葉で表現するのが難しいのですが、色とトーンに少し軋みを感じるというか、無理をしている感じがあるというか。
これも1Vで改善されています。より繊細で豊かなトーンが出るようになって、EP-50Vよりも良く出ます。
中間調〜シャドーの光沢ムラが改善されたこともあって、シャドーのトーンも締まりがありつつかなり丁寧に出ます。
締まりや黒の適切な色バランスは顔料でないと出せないけど、光沢ムラやオーバーコートのムラでシャドーのトーンがうまく出ない、というのが現実だったと思います。
それがかなり改善されました。これはつまり、これまで意識していなかったシャドー際のきわどいトーンに切り込んでいけるということ。これは大きいです。
そして、純正のプロファイルでちゃんとモニター通り出ます。
5V2では結局プロファイルを自作しないとダメで、さらに補正で追い込む必要がありました。
1Vだと今のところはですが、純正のプロファイルで補正もせずにいけます。これはとても助かります。
(もちろん、モニターを適切にハードウェアキャリブレーションしている前提の話です)
5V2と比べて1Vは、データに忠実に出力するということが、より無理なくできるようになった印象です。
こういう変化ってすごく地味で、スペックで伝えるのも難しく、実際使ってみないとわからないんですよね。
私自身、教えている学校でサンプルを作成したり、学生のプリントを見たりすることでわかったところもあります。
でもプロは、そういう地味なところにこそ価値を感じます。飛び道具的な機能ではなく、道具としての本質的な部分の進化。
もちろん、画像が良くなければどんなに良いプリンターを使ってもダメです。
が、100点の画像を作れたのなら、100点のプリントをいかに作れるか、90点からどこまで追い込めるかはプリンター次第になってきます。
思った通りの気持ち良いプリントができると、プリントのモチベーションも高まります。
どんなプリンターを使っていても、使う用紙のコストは変わりません。それなら少しでも良いプリンターで出した方が良いですよね。紙がもったいない。
プリンターはカメラと比べて進化のスピードが遅く、その進化もわかりにくい。それでも着実に進化しているんですね。
下取りもできなければレンタルもできないプリンターは比較検証や買い替えが本当に難しい。
その仕組みを作ることができれば、もう少しプリンターも売れるようになると思うんですけどね。
ちなみに、PX1VとPX1VLはサイズの違いです。1VがA3ノビで、1VLがA2ノビ。今後の制作でA2のプリントを作る予定があるので1VLにしました。
1VLは従来のA3ノビ機の筐体サイズでA2ノビまで出せるという、驚きのサイズダウン。
ただ、そのために素材や機械的な部分に影響が出ている感じは否めません。給紙機構についてもかつて結構不具合があったみたいで。
ひとまずは使っていって、耐久性についても検証できていくと思います。
【プロフィール】
芳田 賢明(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/
芳田賢明 著、プロカメラマンに向けた[仕事に即役立つ本]
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