「コマフォト」にグラフを載せた意味
みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第23回です。
9月15日に発売された雑誌「コマーシャル・フォト」2020年10月号、解析特集「照明機材・解体新書」の執筆・撮影を担当しました。
コマフォトさんにはこのところ、カメラバッグの特集や自作ギアの特集でご紹介いただいていましたが、特集全体の執筆は2019年4月号以来となります。
★本日発売★
コマーシャル・フォト10月号https://t.co/ANjw0sspXG解析特集「照明機材・解体新書」では、定番のストロボから、汎用性の高いモノブロック、話題のLEDなどさまざまな照明機材をテスト。
それぞれの性能をグラフ化して掲載。フォトグラファーのインプレッションと合わせて解析します。 pic.twitter.com/L5tJf6gpQ7
— COMMERCIAL PHOTO(コマーシャル・フォト) (@genkoshacp) September 15, 2020
内容としては、定番で使われる電源部(ジェネレーター)独立のストロボと一体型のモノブロックストロボ、そしてLEDライト、また特徴的なストロボヘッドとオンカメラフラッシュまで、合計15機種のテスト撮影を行うとともに、それぞれの光量や色温度、演色性などを測定し、そのグラフまで掲載するというものです。
編集部からお話をいただいたときは、「本当にやるんだ!」と驚くと同時に、数値でのクオリティ管理が疎かになりつつあると同時にLED照明の普及が進む今、「コマーシャル・フォト」でこの企画を行うことの意義深さを感じました。
カラー23ページわたる意欲作、その内容は本誌をご覧いただくとして、ここではその企画への想いを記しておければと思います。
写真というものは、画像によって何かしらのものごとを表現するものですが、そのインプットからアウトプットまで、あらゆる機器や技術を用いるため、芸術・美術としてだけでなく工業的な側面を帯びています。これは映像や音楽でも同じです。
そのため、芸術作品として写真での表現を行うのであればともかく、仕事として商業写真(コマーシャル・フォト)を制作する以上、数値によるクオリティ管理を避けて通ることはできません。
例えば、カタログに掲載される切り抜き商品写真のスタジオ撮影を考えてみます。
こういった写真は、統一された条件で膨大な数の商品を撮影することになります。画像の色が商品と合っていなかったり、商品ごとに明るさがバラついていたりしては、カタログ用の商品写真としての機能を果たせません。また、制作日程によっては複数のカメラマンで撮影を同時進行したり、追加撮影が後日発生したりすることもよくあります。
つまり、被写体・カメラマン・撮影日が変わっても、OKと決めた条件で安定的に撮影ができなければならないのです。
これは芸術としての写真とは対照的な写真の姿ですが、これもまた、社会が写真に求める役割の一つであり、プロのカメラマンが必要とされる理由の一つです。
そういった撮影では、感覚だけでなく数値で条件を設定し管理することで、効率的な撮影と確実なクオリティ管理ができます。写真が工業でもあるおかげで、機材を統一し、被写体・カメラ・照明の位置・距離を統一し、光量と露出を統一すれば、おおよそ同じように写真が撮れるわけです。
メジャーがあれば距離を測ることができ、露出計があれば光量を測ることができ、カラーメーターがあれば光の色を測ることができるので、同じ撮影条件を再現できるのです。
そして、その光量や光の色といった特性は照明機材によって異なり、設定を変えたり連続的に発光させたりするとある程度の変動が起こります。目視では気づかない変化でも、撮影画像には反映されます。そのため、使う機材の特性を知ることや、その特性に基づいた機材の選択が必要なのです。
ここまで読んでいただければ、なぜいくつもの照明機材の光を測定したグラフを「コマーシャル・フォト」に載せる必要があったのか、ご理解いただけると思います。
今回の執筆にあたって、相当な時間と手間をかけてあらゆる切り口で「光」を測定しましたが、これは単なる趣味の話だとか、マニアックな記事ということでは全くありません。
「光の特性を見極め、管理する」ということは、私が提唱しているイメージングディレクションのテーマにある「クオリティの高い撮影」を構成する一要素です。
そもそも撮影しているものは「被写体から反射してきた光」や「光源から放たれている光」であって、どんなにカメラやレンズにこだわっても、そこにどんな光が入ってくるのかがまず問題です。
クオリティ管理に数字を使うことで、撮影に確実性・安定性・再現性がもたらされ、レタッチの手間が減り、結果的によりよい写真を早く楽につくれるようになります。
そういったことを、仕事として写真を制作している読者の方々に今一度伝えよう、というのがこの企画の趣旨なのです。
さて今回も、みやのねりさんにモデルをお願いしました。
⭐️おしらせ⭐️
本日9/15発売の
COMMERCIAL PHOTOさん
コマーシャル・フォト10月号の
解析特集「照明機材・解体新書」にモデルとして参加させていただいております!どっひゃーーー‼️😳カメラマン芳田賢明さん!今回もとっても素敵に撮っていただいております‼️https://t.co/oLoppE4ydZ#コマフォト pic.twitter.com/b2vdu3qJkg
— みやのねり👐🌞 (@1wan2nyan3) September 15, 2020
スタジオでのストロボ比較、LEDライトの特性を活かした室内撮影、そして夜のロケと、大半のページに登場していただいています。
撮影の趣旨やイメージを踏まえて相談しつつ、パートごとに衣装やヘアメイクを変えました。
夜のロケでは、初めてソニーのミラーレスを使いました。本当ならいつものライカを使うのですが、TTL自動調光のインプレッションも必要ということで、レンタル屋さんで借りました。
あの小ささで、あのAF、あの画質、すごいもんですね。敢えて一眼レフを使う必要は確かにないかもしれません。多くのフォトグラファーがソニーに乗り換えた理由がよくわかりました。
また、今回もフォトグラファーの小室さんに静物撮影をお願いし、スタジオ撮影のバックアップもしていただきました。
切り抜きの製品カットや操作部の寄りカットにも手抜きなし(操作部のLEDランプをきれいに見せるための撮影や、グレー〜黒をしっかり見せるためには一手間が必要です)。
そして何より扉の見開きカットは、日付が変わる寸前のスタジオで小室さんと2人、半ばハイになりながら撮影した思い出の一枚。これもさりげなく手が込んでいます。
2ページ分の静物撮影パートでは、洋酒のミニチュアボトルを撮影。スタイリングに今回もデザイナーの砂坪さんに入っていただきました。私は数字取りで手一杯で、ここの撮影には残念ながらチェックでしか参加できませんでしたが、3人で蒸し暑い雨の中、ミニチュアボトルを探して新宿を歩いたのが良い思い出です。
今回は23ページというボリュームで、お力添えをいただいた方々に今まで以上のご苦労をかけてしまいましたが、良い記事になったと思います。
「コマーシャル・フォト」2020年10月号、木村拓哉さんの表紙が目印です。ぜひお求めください。
http://www.genkosha.co.jp/cp/backnumber/4584.html
【プロフィール】
芳田 賢明(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/
芳田賢明 著、プロカメラマンに向けた[仕事に即役立つ本]
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