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【連載】大石孝次の「音楽な日常」第17回

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先日、久しぶりに先輩のお宅に深夜に訪問し、音楽を聴きながらお酒を飲んで様々な話をする会をいたしました。

このコラムでも以前に触れたのですが、和食、鍋、日本酒にはJAZZは良く合うのです。
この日もビル・エヴァンスのピアノをBGMに話は盛り上がって参ります。

盛り上がると言ってもワイワイ騒ぐような感じではなく、昔話なども交えつつ近況だったり面白かった出来事など語り合います。

お酒が進んでいくと、いつも徐々に昔の音楽の話に華が咲きます。
主に1950年代のロック黎明期から70年代の黄金時代にかけての話が中心となります。

その日の気分で選択されるBGMのアーティストの話、曲の話、メンバーの話、歌詞の話、演奏の話、関係性の話、アーティストの噂話など…
内容は行き当たりばったりでアルコールに後押しされながら、よたよたと展開いたします。

その日は生シラスとホタルイカの2大季節の味覚を堪能しながら、ビールから日本酒へと進んでいきました。

最初のテーマに上がったのは「ジム・クロウチ」
ジムの曲を聴きながらアメリカの歌の話からスタート。

続いてはアルバート・ハモンド(イギリスからアメリカに渡ったアーティスト)
「落ち葉のコンチェルト」という曲の『邦題』について話は過熱していきます!

この曲の原題は「For the Peace of All Mankind」訳すと「全人類の平和のために」となるのです。
原題と邦題の「落ち葉のコンチェルト」との差はいったいなんなのか?
というところから話題は混迷していくのでありました。

この曲はスローで切ないバラード曲です。
この曲調を原題と整合性を取ることが出来ずに、雰囲気を重視してこの邦題が付けられたのではないか? というのが、昔からの定説になっております。
今でいう都市伝説的な事柄として地味に語り継がれているのであります。

その当時、レコードを発売する際に原題に邦題を付けるのは、レコード会社のディレクターの作業でした。
そのセンスでレコードに与えるインパクトやイメージ、セールスに直接影響する大切なファクターなのでありました。

アルバート・ハモンドは「カリフォルニアの青い空」がヒット。
日本でもヒットし当時の西海岸ブームの代表曲となりました。

西海岸⇒カリフォルニア⇒カリフォルニア・ドリーム

この図式は日本で鉄板の定番になっていった訳であります。
まだまだ日本とアメリカも関係性が色々と途上であった時期ですが、アメリカに対する憧れがまさに膨らんでいた時代です。

音楽的な情報も様々に流入してきており、文化的な情報も大量に紹介されるようになっていきます。
「カリフォルニアの青い空」の歌詞の内容は、その曲が作られた事情を知ってみると、日本で思われているようなそんなに呑気な状況では決してありません。

しかし、日本の楽曲にはない洋楽の持つイメージ先行なインパクトや印象は、ある意味、その曲を自分の在り方や受け止め方で完成された脳内完成型洋楽の形成なのであるのではないかと思います。

青い空と聞けば、爽やかなイメージを持つのはあくまで日本人的な感覚なのです。
歌詞の意味より受け止めた印象。このスタイルは英語圏ではなかなか起きない発想なのであります。

この当時のシングル・レコード(アナログのEP版)のジャケット裏面は様々な仕様がありました。
アーティストの紹介、英語歌詞、対訳歌詞、など、発売形態に沿った各作品に合わせた作りになっていたのです。
なので、歌詞が和訳で掲載されているものばかりでは決してなかったのです。
ゆえに、その曲の本当の歌詞の意味は分からないまま自己流に解釈して楽しんでいた曲が物凄く多かったのであります。

発売時に使われたキャッチコピーや邦題は、非常に日本的な解釈の仕方であり、欧米にはない多様で繊細、微妙で曖昧な考え方ならではの発想なのです。
欧米、アジアでもそうですが、感情や感覚に白か黒しかなく、どちらとも言えないという選択がありません。

それに比べて日本には曖昧などっちでもないとか、などの中間的選択肢があるのです。
「思いやり」のような微妙な感覚は繊細で多様な日本独特の文化なのです。

話は戻って、飲んで喋っているので話の内容は時間が経つにつれて頓珍漢になっていくのですが、そんな中でも「落ち葉のコンチェルト」は非常に難しい問題作なのであります。
これは時代を超えた「曖昧な話題」として語り継ぐべき題材なのかもしれません。

史実に基づいてしまうと、この手の話は急激に冷めてしまうネタなのであります。
現代的な感覚で曲について調べたり、言いたがりの人たちのウンチクを聞いてしまうと一気に盛り下がってしまうのです。
なのでここでは解釈することはいたしませんし、調べたりもいたしません。

時は進み「風のララバイ」という曲が、CMソングとして使用され久々にヒットします。
日本でのアルバート・ハモンドのラストヒットでありました。

この曲もキャッチコピーに、その当時を彷彿とさせる「エンドレスサマー」という「イメージ先行」な言葉が使用されております。
エンドレスでサマーな内容ではなかったのですが、リフや曲調がエンドレスなサマーなイメージを掻き立てる訳ですね。

人の心象に与えるイメージと印象、それが日本的洋楽との付き合い方なのです。
洋楽が日本に入り込んできた時代からそれは変わることなく連綿と受け継がれているのです。

そんな日本的な繊細さで、これからも世界の音楽と付き合っていきたいと思います。
因みにではありますが、アルバート・ハモンドの曲は、どれも割り切れない切ない悲しみのある内容であります。
それを楽しんで聴いていただくのも勿論、お薦めさせていただきます。

それではまた次回お逢いいたしましょう。

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