表現と技術
みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第30回です。
4月15日に発売された雑誌「コマーシャル・フォト」2021年5月号、解析特集「フルサイズミラーレスカメラ解体新書」の執筆・撮影を担当しました。
2020年10月号の「照明機材・解体新書」に続く解体新書シリーズです。
好評発売中!
コマーシャル・フォト2021年5月号https://t.co/aLM2XfSCav【解析特集】
フルサイズミラーレスカメラ解体新書ユーザーの多い
3つのメーカーの合計8機種
フルサイズミラーレスカメラを
同条件でテストし、
その特性を検証しました。撮影・解説:芳田賢明#SONY#キヤノン#ニコン pic.twitter.com/sz9sKgAXkK
— コマーシャル・フォト / 5月号特集は奥山由之の映像世界 (@genkoshacp) April 16, 2021
ソニー、キヤノン、ニコンのフルサイズミラーレスカメラ計8機種のテスト撮影を行い、色再現・階調再現・解像力・高感度ノイズの実測グラフまで掲載した、カラー35ページの大特集です。
同じ環境での撮影・計測による数値化により、これまで感覚的にしか認識していなかったカメラの特性が明確になります。
またそれにより、定説の裏付けが取れたり、逆に固定観念が覆されたりということもあるのではないかと思います。
興味深い結果が得られていますので、ぜひ本誌をご覧ください。
今回の特集は、8機種をそれぞれ同条件で検証する=同じような写真が8回続くので、正直、ページをペラペラとめくるだけで「なるほど」とはならないはずです。
「読もう」としなければ、何を言いたい特集なのかわからない、何も面白くも感じないと思います。
人によっては「こんなの『写真』じゃない」「こんなのは『表現』じゃない」と感じるかもしれません。
そこでここでは、写真の「表現」と「技術」についての考え方を記しておきたいと思います。
「SEDAモデル」というものがあります。
企業が機能的価値と意味的価値の統合的価値を生み出すための枠組みとして、経営学者である延岡健太郎氏が提唱しているものです。
S…Science、E…Engineering、D…Design、A…Art、これらが四象限に配置されます。
写真というものもこれに当てはめられ、特に商業写真においてはこれら4つのバランスが求められると私は考えています。
Science…光、色、視覚、心理など、見える・伝わる・感じる原理・教養について
Engineering…カメラ、レンズ、照明、モニタ、プリンタなど、見せる・伝える・感じるための道具・機材について
Design…編集、構成、設計、意匠など、見せる・伝える・感じるための方法・手法について
Art…美学、リズム、対比など、見せる・伝える・感じるための教養・感性について
ざっとこんなふうに言えるかなと。
それぞれに専門家が存在することは言うまでもなく、それによって写真というメディア・芸術が成長し豊かになっています。
しかし、これらのバランスが適度に保たれていないと、表現のメディア・芸術としての写真の成長は止まってしまうでしょう。
写真は芸術(Art)ともいえますが、機械制御あるいは電子制御の道具がなければ得ることができない、テクノロジー(Engineering)に左右されるものです。
写真は表現手段ですが、それは作家からの表出(Art)だけでなく、何らかの意図や目的を達成するために活用されるもの(Design)でもあります。
写真を効果的・印象的に伝える(Art)(Design)にあたっては、それに必要な光や色や視覚について(Science)知っておく必要が生じます。
つまり、写真というものは元来工芸的なもので、表現と技術は表裏一体といえるのです。
「解体新書」の企画はいわゆるメカマニア特集ではありません。ましてスペックを競うようなことが目的なのではありません。
写真をArtやDesignとして扱うプロフェッショナルが読む雑誌だからこそ、EngineeringやScienceの要素もバランスよく伝えていきたい。それが仕事のクオリティを高めることにつながる。
そういう意図を持った特集です。
技術の進化によって、EngineeringやScienceがわからなくても写真(画像)が得られる時代になりました。
ならばもうフォトグラファーにはEngineeringやScienceは不要なのか。私はそうは思いません。
プロフェッショナルだからこそ、ArtやDesignを生み出していくにあたって、どれだけEngineeringやScienceを活用できるか。
それがプロフェッショナルのプライドであってほしいし、クリエイティブというものはそういうものであってほしいと思うのです。
というわけで。
今回もモデルはみやのねりさんです。
本日発売の COMMERCIAL・PHOTOさん 解析特集(撮影・解説/芳田賢明さん)モデルとして載せていただいております〜‼️☝️☝️☝️🔥本屋さんでもネットでもお買い求めいただけます是非みてください😳 pic.twitter.com/QbC1PIdE2D
— みやのねり👐🌞 (@1wan2nyan3) April 15, 2021
午前のロケ、昼のスタジオ、夜のロケと大活躍。撮影の意図を踏まえ、衣装やヘアメイクを変えています。
制作チームは今回も、静物撮影の小室さんと、静物撮影スタイリングの砂坪さん。
扉の見開き写真は、実はスローシャッター+懐中電灯でライティングしています(私が当てています)。初めて明かしましたが、誰か気づくんでしょうか(笑)。
そして今回は、計測や評価に正確を期すため、学術的観点から研究所の杉山さん(すごい人です)にも協力いただいています。
「コマーシャル・フォト」2021年5月号、巻頭特集は奥山由之さんです。ぜひお求めください。
http://www.genkosha.co.jp/cp/backnumber/4726.html
【プロフィール】
芳田 賢明(よしだ たかあき)
イメージングディレクター/フォトグラファー。
「クオリティの高い撮影・RAW現像で、良い写真を楽につくる」をテーマに写真制作ディレクションを行っている。撮影ではポートレートや舞台裏のオフショット撮影を得意とする。
Webサイト…https://atmai.net/
Instagram…https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/
芳田賢明 著、プロカメラマンに向けた[仕事に即役立つ本]
「誰も教えてくれなかった デジタル時代の写真づくり」
好評発売中
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