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【連載】大石孝次の「音楽な日常」第85回

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僕らの青春の落書きは

久しぶりに映画「アメリカングラフィティ」を観ました。
数年に一度は観たい熱が高まる青春映画の最高傑作です。
オールズモービルにダイナ—。ロックンロールが流れるラジオ。ホットロッド。
高校を卒業した仲間たちが最後の一夜を過ごすワンナイトグラフィティであり、青春のドキュメントのようなストーリー。

僕ら(仲間を含む)はこの映画を模すかのように、青春の時間を過ごした訳です。

劇中に登場する伝説のDJウルフマンジャックが送りだすロックンロールナンバー。
ご機嫌な流し(街中を車でグルグル回り続ける)の相棒で、今の気分に必要な曲をウルフマンにリクエストする。
リクエストが番組で読まれ狂喜乱舞しご機嫌なナンバーを聴きながら、また夜の街にアクセルを踏む。
あくまで青春時代の小さなお話であり、年を経るとその思い出は一瞬の出来事だったように感じます。

しかし、その瞬間は胸がはち切れそうなやり場のないフラストレーションこそが、二度と感じられない青春という感覚なのだと思います。
若さが持つ狂気という概念は、数々の映画で表現されています。
狂気というと「狂った気持ち」のように聞こえてしまいますが、青春時代に関しては「割り切れない感覚」を指すものと考えます。
モヤモヤしたはけ口のない感覚、当たりようのない苛立ち、どうにもできない焦燥感。
若さゆえの特権として、そのような感覚が用意されております。

感じ方は人それぞれです。そのような感覚を知らずに過ごす人も沢山いるかもしれません。
時代の変化もあるかもしれませんが、そんな「狂気」は数多くの映画の中に登場しております。

「アメリカングラフィティ」と双璧の青春金字塔である「ビッグウェンズデー」
ここにある青春群像も人生の価値観に影響を与えた銘作として君臨しております。
そんな作品達をオマージュするかのように誕生した作品があります。
その中では時代と共に変化した表現になっていますが「狂気」は柔らかい表現に置き換わっていますが、連綿と受け継がれているように感じます。
ビッグウェンズデーの、現代そして女の子版「ブルークラッシュ」も秀逸な作品です。

話を戻して。週末の夜になると友人の運転する車に乗って行く先は2つ。
一つは横浜のベイエリア。まだみなとみらい地区は完成していない時代。
山下町、中華街、元町、山手、本牧、この辺を廻っては時代の空気を吸い込んでいました。

中華街の朱雀門の横にあった今となっては懐かしいアメリカンハウスで、ライムを口に差したコロナをテイクアウト。
通りを渡ってストロベリーファームでホットドッグとチリドッグを買って車で山手へ。
山下町側の山沿いを進んで1ヶ所だけある切通しのスポットへ。
車を停めると完成したばかりの横浜ベイブリッジを目の前に独占できる景色が広がっています。
助手席の窓を全開にしたドアに足をかけて車の屋根に座り、景色を見ながらホットドッグを食べながらコロナを飲んでいました。

もう1つは逗子湘南の海側134号線沿いエリア。
葉山の夜遅くまでやっているパン屋さん(まだコンビニ化されていなかった)は、
近所に合宿でやって来るヨット部の学生たちを相手にした手作りの調理パンが自慢のお店。
ボリュームたっぷりのパンを遅い時間まで売っていたのは、お腹を空かせた若者が夜な夜な買いに来ていたから。
そこで美味しいパンを買って逗子マリーナへ移動し、奥にある堤防の上で星を見ながら食べました。
すると、ドラマのように流れ星が見えたりして。
その日に撮った写真は今でも残っています。

昨今、世の中が疲弊しているのですが、こんな世界中に広がる恐ろしい状況になるなんて考えてもいませんでした。
こんな事が生きているうちに起きるとは信じられません。
日々、その情報で一杯ですし、情報に敏感にならざるを得ません。

アジアは元より、アメリカ、フランスやイタリアをはじめ、世界各国が悲鳴を上げています。
ついにハワイも入国と同時に隔離されてしまう事に。

日本では卒業そして入学の時期です。春という希望に満ちた時期なのです。
こんな季節なのに目に見えない恐怖にがんじがらめにされてしまいました。
もちろん、自分も大いに影響を受けてしまっております。

気持ちが沈みがちな時に、映画は力をくれたり、安らぎをくれたり、とても気持ちの助けになってくれます。
アメリカングラフィティを観て思う事は人それぞれだと思います。

この映画が教えてくれた事を今一度考えてみます。

「通りすぎる日々や時間は
 まったくもって同じ一瞬でしかない
 人生の多くを無駄に過ごしている
 その無駄自体が人生である
 それ故に
 忘れられない一瞬を大切に感じたい」

そんな風に思いました。
そこだけ切り取って考えれば、楽しかった、嬉しかった、悲しかった、辛かった、カッコ良かった、etc.
僕らが大切にしているのは、そんな一瞬の事でしかないけれど、その一瞬を産み出せるように時間を創りたいですね。

ウィルスに行動を制限されるなんて思ってもみなかった。
当たり前の日常を維持する事がどれだけ大切かという事を、9年前に嫌というほど体験していたはずなのに。
だからこそ、こんな時に強い自分たちでいられるはずなのだから。

明けない夜はないわけで、いつその時が来るのかは分かりませんが、すこしでも以前のように戻れることを切望します。
物質文明に毒された日本にあって、今回の出来事でなにが大切なことか、大事なことかを考える機会となりました。

少し手が空いたら、どうぞ映画を観て下さい。
自分にあった作品を見つけて下さい。
その中にはもう一人の自分の姿があるのかもしれません。

それでは最後に、僕らが青春時代に車の中で聴いていた曲達の中から1曲ご紹介しましょう。
詞の内容は悲しいストーリーですが、美しい演奏と心に残る旋律が印象的な楽曲です。
Asiaで「The Smile Has Left Your Eyes」

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