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【連載】大石孝次の「音楽な日常」第75回

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アメリカンコンプレックス2

80年代は明るい時代でした。
その明るさは単純な明度の要素と、古い時代から抜け出す力みたいなものが急速に動いたからでしょうか。
その後にやって来るバブル景気に向かって、人々の気持ちも日本的な陰からアメリカ的な陽へと時代がシフトしました。

いち早くトレンドとしてその情報発信をしたのが雑誌。そして敏感にヒットチャート物を定着させたFMラジオ。
その後に遅れながらTVが追い付く、そして至極簡単に追い越していく訳です。

でも実際、あの頃の海に行って感じていた日差しは今と違って白く澄んでいました。
風も湿度が適当で気持ちよかったのです。

スクーターに乗って134号線へ、しょっちゅう向かって行きました。
鎌倉の鶴岡八幡宮から真っ直ぐに海へ進んでいくと、突き当りは滑川のT字交差点。
突き当りを右へ行けば、稲村ケ崎から江ノ島へ。左に行けば、逗子、葉山から長者ヶ崎へ。

その当時は逗子方面に進むと逗葉新道が完成したばかりで、新道の建設費回収の為の料金所がありました。現在はありません。
その料金所ですが、スクーターも通行料を支払うのです。
原付免許しかまだ持っていない時分、料金所を自力で通る事はここ以外にありませんでした。
料金所の窓口横にスクーターを停めて、ジーンズのウォッチポケットに準備しておいた10円玉を一つ渡します。
窓口の係の方から領収書を受け取ってポケットに突っ込んで新道を進んでいきます。
その頃は原付はヘルメット着用義務がなかったので、サングラスだけして綺麗な自動車専用道を走りました。
何とも言えない気持ちの良さでしたね。

バイクがもっと大きければもっと楽しかったでしょうが、今出来る全てを謳歌している気分は他と変えられないものでした。
幾つものアップダウンとカーブを抜けると逗子海岸に到着します。
逗子海岸に入り込む大きなカーブの手前に小さなPAがあります。
そこのWCに寄って休憩し、そのままさらに海岸沿いを進みます。

逗子海岸は波が穏やかで風があるのでウインドサーフィンの基地になっています。
キラキラ光る海に浮かび上がる、セールのシルエットが綺麗でした。

海岸線を抜けると右折して、すぐ先右手のデニーズに滑り込みます。
ここが当時の自分たちの応接間のように使っていた場所です。
初期のデニーズのテイストが満載だった頃は、本当に日本離れしていた雰囲気が気持ちよかった。

スイングドアを開けて中に入ると、ヒヤッとするくらい効いている冷房が有難い。
店に入って左手に並んでいるボックスが定位置でした。奥のテラスや外の海が見える席はお上りさん用。
壁にかかっている絵、布地のカバーソファ、メニューブック、カウンター席や出来上がった料理のウォーマー、カップソーサー、etc。
何かにつけてアメリカナイズされた内装や調度は気持ちよく過ごせます。

デニーズ1号店の上大岡店は誕生以来使っていたおかげで、デニーズは生活の中にあるスペースになっていました。
原付から車に移動手段がスライドすると、湘南に来る頻度はさらに増えました。
平日夜や週末、多い時は週に3回くらい通っていました。
近すぎず遠すぎない距離なので、気軽なドライブで仲間と集まっては必ずやって来ました。

平日夜の逗子デニーズは人も少なく、ゆっくりのんびりと語らうにはあまりに都合が良すぎました。
特に僕らが好きだったのはモーニングのセットメニューです。
卵二つをお好みの調理法で、ハッシュドポテト、トースト、コーヒー、オレンジジュース。
スクランブルエッグか目玉焼き。その日の気分で選択します。
別メニューのフレンチトーストも大好きでした。
スクランブルエッグとハッシュドポテトにケチャップをたっぷり付けて。
サニーサイドアップならバターを塗ったトーストの上に乗せて。
この時はテラス側の席で眩しい朝の光に照らされながら目を細めて食べるのもいいですね。
昼はデニーズコンボかジャンバラヤ。笑っちゃうほど大好きな定番メニューです。
スタッフのユニフォームも定番のモノから、夏が近づくとアロハっぽいシャツに変わりました。
そんな世界観が僕らの生活とマインドとして、ずっと浸透している時代がありました。

若かりし頃の思い出の場面です。
ライフスタイルという言葉がよくフィーチャーされた頃で「自分らしさをコピーの中から選択せよ」みたいな風潮がありました。
迷ったり抵抗しながらも自然とそうする事を学んだのかもしれません。
今のような誰かがやっているのを真似する事より、だれよりも早く先駆けとして情報やスタイルを取り入れる事。
事情や情報にアンテナを張りキャッチしている事が優先されました。
最近では当たり前に言われますが、それが「感度の良い人」と言われ始めた人種が誕生しました。
それも80年代に誕生した事柄でしょうか。

バブルの頃はもうどうでも良い感じに世の中がなっていましたが、その中で自分たちのあり方はその前の時代に比べると随分と軽くなっている気がしました。
でも、もう時代が変わってしまったのです。今の時代に繋がる土台がその頃から出来始めているのです。
時代は良い方へ向かったんだかどうかは分かりません。でも選択はされたのですね。

そんなふうに新たな見えない混迷が始まった時代を象徴するような名曲が誕生していきます。
80年代は新たな才能の宝庫でもあるのです。
その中でも世界的に爆発する《いわゆる一発屋》が数多く誕生します。
この人たちは決して一発屋ではありませんが、日本での知名度や評価は1曲を除いてほぼなかったのです。
良い曲を沢山歌っているんですがね、チャートアクションにあまり関わらなかったのが日本での評価に繋がっていた時代なので。
確かに北欧のアーティストはなかなかチャートシーンには登場しにくいのです。
その意味でも革新的なグループであった『a-ha』

今回ご紹介するのはa-haのなかでも珠玉の名作と思っている「Hunting High and Low」です。
ノルウェーのアーティストではNo.1の知名度と言っていいでしょう。
独特の感性と感覚をもったグループで、特筆して80年代サウンドの伝道師のような存在です。
ファッションとサウンドのバランスもよくカッコよかったですね。
なんと来年の3月に日本公演があるとの事!
1stシーズンの楽曲を再現するライブになるそうです。
この曲もきっとやってくれる事でしょう。

それではお聴き下さい。
a-haで「Hunting High and Low」

https://www.youtube.com/watch?v=s6VaeFCxta8

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