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【連載】大石孝次の「音楽な日常」第58回

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「For フルーツバスケット」

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冬、というか年末年始になると思い出したように観たくなる作品があります。
TVアニメシリーズ作品の「フルーツバスケット」です。

この作品がテレビでオンエアーされたのは18年前。
この年は自分にとって一大事な事件が起きた年です。
そして世界にも衝撃が走った大事件の年です。

振り返っても人生の中、これほどアホみたいに仕事をしていた時期はないというくらい、一言でいえばワーカーホリックに陥っていた時期です。
それもかなり重症で、仕事をしていないと不安になってしまうほど、スケジュール帳が真っ黒じゃなければ安心できないほど。

思い出すと怖いです、その精神状態。友達と遊びに行ったときに言われました。
友「お前、少し仕事の事を忘れた方がいいよ」
私「忘れてんじゃん、だから今一緒にいるんじゃん」
友「今仕事のとこ考えてんだろ」
私「…(気付いていなかったが考えていた)」
友「ちょっと働きすぎじゃないの?」
こんな会話をしたことが忘れられません。
無自覚でしたが、かなり仕事に精神が侵食されていたんですね。

そんな年の夏の終わり。
慢性的な疲れ(風邪みたいな症状あり)が抜けず、大分疲弊して過ごしていたのですが、仕事中にものすごくぐったりした日がありました。
その日に会った取引先の方に「大丈夫ですか? かなり顔色が悪いですよ?」と言われる始末。
今でも忘れませんが、渋谷マークシティの道玄坂に出る通路の自動扉の前で立っていられなくなり、横のスペースに座り込んで動けなくなりました。
それでもその後、休んでから飲みに行きましたが(笑) そうとうに調子が悪いのに体力に任せて自覚がなかったのです。

でも調子は悪かったので22時くらいに家に帰ると、あの恐ろしい光景がテレビに映っておりました。
世界貿易センタービルから煙が立ち上っていたあの映像です。しかも生放送。
いったい何がそこで起きているのか、早朝のマンハッタンでは事情がつかめていない模様です。
とにかくその状況をテレビ越しに注視しておりました。
すると、横から飛行機がビルに突っ込むというあり得ない事が起きてしまったのです。
パニックでした。いったい何が起きているのか、情報は錯綜し状況は悪化の一途。
そしてついにはビルが崩壊してしまう恐ろしい実況中継を観る事に。
本当に起きている事なのか分からないほど、恐ろしい現実を目の当たりにしたのでした。

翌日、かなり悪い体調を引きずって都内でテレビ番組の撮影。
スクリプトも作っていたのですが、事前に渡してあったので撮影を見守るだけにして、現場でぐったりソファーに沈み込んでいました。

その時、撮影に参加していた声優のこやまきみこちゃんが「救急車呼んだ方がいいんじゃないですか?」と。
それでもそこまでの自覚がなく、周りから見るとそこまでひどい状態になっていたんですね。
しかしその場で救急車を呼ぶ判断はせず、車で自宅まで送ってもらいました。

自宅に帰って寝ていたのですが、一向に具合が良くなることもなく、結局夜に救急車を呼んで病院に行く事に。
彼女の「救急車」という言葉がなければ、救急車を呼ぶ事すら頭に浮かばないほど具合は悪化しておりました。
なので彼女は私の救世主なのです。サンキュー! きみこー!!!

病院に運ばれ(結構混んでいた)かなり待たされてから検査を受け、更に待つ事数十分。
すると、当直医の先生がすっ飛んできて「なんでこんなになるまでほっといたの!」と叱責されます。
?なんのこっちゃ?と思いながらささやかな抵抗、「どんなになってるのかわかるわけないでしょ!」
と言うような醜いやり取りの後、更にいくつかの検査の後、車椅子で病室へ搬送、緊急入院。
そしてその夜は「今夜が山だ!」という状況に。

とまあ、そんなこんなの事があり、緊急入院してそこから3週間の病院生活が始まる訳なのです。
その後の事は今回は割愛。若いうちは体力があるから自分の体調を軽視してしまいがちで、実際に身体に起きていることに気付かないもので。
あのまま病院に行かず、家でのたうち回っていたら…多分、お亡くなりになっていたでしょうね。
いわゆるぽっくり病という奴ですよ。怖い怖い。

そこから始まった入院生活でしたが、最初の4日間は絶食で摂取して良いのは水のみ。
目は見えないわ体は動かないわ点滴は24時間だわ、全く何も出来ない状態でした。

それからしばらくして、少しづつ体力と気力が戻って来た時の唯一の友達がテレビでした。
その時の夕方帯に放送されていたのが「フルーツバスケット」。
当時はアニメ業界で仕事をしていたので、番組の良い評判は入っていたのですが、観る事が出来ていませんでした。
入院中のささやかな楽しみに「フルバ」(略します)がなってくれました。

この作品の監督である大地丙太郎さんが主催する「大地会」という集まりに、僭越ながら参加させて頂き、温泉ツアーなどに同行させて頂いておりました。
「こどものおもちゃ」以来のテレ東での大地監督のテレビシリーズだったので興味がありました。
ちょうど入院中に観た回が、主人公達がヒロインを連れ出して温泉旅行に行くお話でした。
作品のキャラも設定も何も分かりませんでしたが、大地会で行った温泉旅を彷彿させるようで、ものすごく楽しく観させて頂きました。
久々に「楽しい」という気持ちが沸き上がってきました。病気や入院という初体験の特殊な環境にかなり凹んでいましたからね。

この回のお話も、ただ温泉ではしゃぐお話ではなく、それぞれに抱える問題や境遇、そこで発揮される優しさや思いやりなど。
作品の奥深さをコミカルに演出する大地監督十八番の味付けに仕上がっておりました。流石っす!
それからは退院後もフルバを観続けるフルバユーザーとなりました。

いよいよ本題の年末のお話。
大晦日が舞台の回があります。なんとも優しさが詰まったお話なのです。
この回は何度観ても泣けてしまいます。

好きな回を今一度観たくて、テレビシリーズのDVDを何本か購入しました。勿論この回はトップクラスに好きな回なので購入しました。
そして昨年末、ふとフルバを全話観ていないことを思い出しました。今更ですし、ダブリが沢山発生しますが、持っていないDVDを集めて買うよりDVD-BOXを買った方がお安い事に気付き購入いたしました。

今年のお正月にゆっくり見直そうと思いました。がっ、まだ観られておりません!
いいのいいの、楽しみは取っておかないと。

話は戻ってこのお正月の回を観ると、なんとなくですがこの時代の空気を思い出します。
病気や仕事もそうですが、911事件の事、その時に起きていた事柄を。

さらに悲劇は私に襲いかっかってくるのでした。
翌年の2月に親友が亡くなってしまいました。
彼は病院にお見舞いに来た時に「俺より先に逝っちゃうなんて思わなかった」と言っていました。
?いやいや、死んでねーし!
そんな話をして半年も経たずに本当に逝っちゃうなんてねぇ。

人生の転機になる時期であった事は間違いないです。
こんな事が起きて以降、馬車馬のように仕事をする事は一切なく、なんとなく今に至っております。
何のために生き残ったのか、その直後はそんな事を考えるようになりました。
結論はいまだに出ておりませんが。

それから時が経ち、フルバの主題歌を歌っていらした岡崎律子さんが亡くなったという報せを聞きました。
フルバはOPを観ているだけで涙が込み上げてしまうシンドロームなのですが、素敵な歌をありがとう、と今でも聴くたびに思っております。

何と今年、フルバがまたアニメ化されるというお話があり、それもなんとなく楽しみだったりです。

という事で、今回の1曲は岡崎律子さんで「For フルーツバスケット」。

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