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【連載】芳田賢明「memorygram」第4回

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ライカの話(3)

みなさんこんにちは。
イメージングディレクター/フォトグラファーの芳田賢明(よしだ たかあき)です。
ラジオのレギュラー番組だと思っていろいろ書いてみる、連載「memorygram」第4回です。

別のライカへの買い替えを考えている知人からライカM9を借りて、みなとみらい、渋谷、表参道とスナップを行い、その数時間でM9の使いやすさ、撮りやすさにすっかりハマってしまった私。

「これでRAWデータも良かったら完璧だよなぁ」と思いつつ自宅へ戻り、すぐにデータをMacへ取り込みます。
デフォルトの現像パラメーターが当たっている状態では、パッと見は普通のデジカメの画(とはいってもCCD特有の色乗りではありますが)。
しかし、画をつくり込んでいくと…驚きました。

デフォルトの状態では一見わからない、〔トーンの豊かさ〕と〔色の深み〕がどんどん出てくるのです。
それまであらゆるカメラのRAWデータで苦労していたこの2点が、いとも簡単に出てくる。
「マジか」と衝撃を受けました。「今までの苦労は何だったんだろう」、「最初からライカにしとけば良かったんじゃん」と(笑)。

私の現像方法は、一度オリジナルのテンプレパラメーターを一括で当てて、そこをスタートに微調整を加えていくのですが、多くの場合はそれが微調整では済まないことが多い。
しかし、ライカの場合は本当に微調整で済むのです。

トーンの豊かさについては、ハイライトの描写において強く感じます。
ハイライトを豊かにしようと露出を落としても、多くのRAWデータでは「トーンが出てくる」というよりは「単に暗くなるだけ」になりがちです。
しかし、M9の場合はどんどん表情が出てくるのです。
そこで、ライカのRAWデータは、ハイライトの描写を大事にする、すなわち少しローキー気味に仕上げるというのを心がけています。

L5000805

デジタルカメラは、明るく鮮やかで光沢感のあるような色表現は得意なのですが、特に赤・緑・青において、深みやコクを出すのが苦手です。

例えば、赤色のニットやマフラーといったものは、革のブーツやバッグと違い、鮮やかで光沢感のある質感ではありません。光を吸収する糸が織られてテクスチャが構成された、ふわっ、もこっ、とした存在です。
その質感を表現するには、色の深みを出すことが非常に重要です。

木々の緑も、逆光が透過してくるような黄緑の表現はデジタルカメラは得意です。
しかし、順光や斜光が入り、他の葉の影も受けながらグラデーションになっていくようなディテール、黄色味の強い緑から赤みの強い緑、そしてグレーへというような描写には、色の深みを出すことが必要で、これも簡単にはいかないのです。
私がいつも現像で苦労する部分の半分近くはこの「色の深み、コク」の表現なのですが、これもM9のRAWデータであれば、ほとんど思った通りに出てくるのです。

L5000845

さらに、M9の良いところ。これはレンズに起因するところでもあるのですが、もう3つ挙げたいと思います。

光に敏感であること

M9で撮影していると、肉眼で見ている以上に光の機微、表情が写し取られるということを感じます。
光を粒として捉えたくなる、あるいは、水蒸気が目に見える、空気が写る、そんな感覚です。
例えば、朝や冬場に横から入ってくる光、雨上がりの空気の中をささやかに伝う光、こういったやさしい光が持つデリケートな表情を、しっかり受け取ってくれるのです。
これまでの撮影で非常に印象に残っているのは、教室や体育館に差し込む光だけで撮影をしたときの何とも言えない儚さ、そして、霧雨がパラつくロケにて写し取られた雨粒と、複雑な表情で光る路面の儚さです。
ここまでの情緒は、一般的なカメラではなかなか捉えきれないのではないかと思っています。

L1006679

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組み合わせるレンズに収差が残っていること

現代の最新レンズは、高い分解能で画面周辺までシャープに、収差も極力排除するというコンセプトでつくられているものがほとんどです。
しかし、レンジファインダーカメラのレンズは、開放絞りで使えば“ちゃんと”収差が残っているのです。
この「あいまいさ」が、私の「memorygram」の考え方と合致します。
その場を正確に記録したいのであれば、最新のカメラとレンズを使って、ピクセル等倍で画面の隅々まで確認すれば良いでしょう。
しかし私が撮りたいのは、これまでお話ししているように「記録」ではなく「記憶」ですから、写りすぎないことはとても重要なのです。

L5007023

ピントがズレるのも良い

M9はピントもマニュアルですから、ピントよりもシャッターを優先するような場合では、少しピントがズレた状態で撮影することになる場合もあります。
しかし、これがまた良いのです。
もちろん、全部が全部OKカットにはなりませんが、ピントがズレているからこそ良い、というカットも中にはあります。
まあこれも「memorygram」の考え方に対して、という話ですが。

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それでは、また次回。

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