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【連載】大石孝次の「音楽な日常」第50回記念企画 トークセッション with 近藤薫

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2016年9月18日に開始し、月2回のペースで更新を続けてきた、アイドルグループ[Stella Beats]のプロデューサー・大石孝次さんの連載「音楽な日常」が、2018年10月14日の更新で第50回を迎えます。
これを記念して今回は、6notes編集長の音楽家・近藤薫が自ら聞き手となり、大石さんと対談。
テーマを3つに分け、連載について、仕事について、そして今後について、大石さんのお話を伺いました。
場所は、都内の音楽スタジオ。終始リラックスした雰囲気で1時間を超えて繰り広げられたトークセッション、完全収録です。


■セッション1:連載50回

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近藤「連載50回、ありがとうございます」
大石「こちらこそ、どういたしまして」
近藤「すっかり6notesは大石さんのオフィシャルWebみたいになってますけど(笑)」
大石「まぁそういう感じですよね。主戦場という形になったから、好きなことが言えるなっていう」
近藤「大石さんの連載、ずっと見てきましたけど、いい意味で予想と違ったというか」
大石「(笑)」
近藤「もっと仕事の様子とか、『こういう思想とか理念で僕はやってます』みたいな、こってりしたのが来ると思ったんですけど」
大石「そういう方向で考えてたんだ」
近藤「そうなんですよ」
大石「結構音楽感のある話ってことですよね。作家なのか、アーチストなのか、プロデューサーなのか、そういう立場で話をね」
近藤「でもタイトルの『音楽な日常』ってだけあって、大石さんの人間味とかが見えて。普通の人が見られない部分が出てて、それが面白いなって」
大石「ブログとかFacebookとかの代わりになってる感じも若干ありますよね。ただ、内容はリアルタイムの話ではないので、トピックスとして最近の話はあっても、発表されるまでには少し時間があったりするから、今日あったことをお伝えしているということはないですけどね」
近藤「大石さんは普段ブログとかやられてないから、そこで皆さんが見られてよかったんじゃないかなって」
大石「前はいっぱいやってたんですけど、だんだんやらなくなっちゃいましたね」
近藤「原稿上がったって連絡いただいて、ちょっと時間ないから少しだけ目を通そうって思っても、面白いから最後まで読んじゃうんですよね(笑)」
大石「すいませんね(笑)」
近藤「で最後の『これに合う音楽』みたいなのをパッと入れるところがね、とてもいい連載になってるなぁと」
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大石「そうだねぇ、『音楽』ってタイトルで言ってるのに音楽以外のこと書いてるから、どう音楽に結びつけようかなって、無理やり力技でね。ただ、いろんな音楽が好きだから、その時のネタに絡んだというか、紐づけられたものは紹介したりはしてますけど」
近藤「それがすごくて、ただ好きな音楽とかじゃなくて、そのストーリーに合った音楽をチョイスしてるところが、引き出しの多さを感じて、驚きましたね」
大石「古いものをたくさん知ってるんでね」
近藤「めちゃくちゃ幅広く聴かれてますよね」
大石「元々アナログのレコード屋さんだったんで」
近藤「あ、そうなんでしたっけ」
大石「アナログのレコードからちょうどCDが発売されるくらいの時期にレコード屋さんに勤めてて。中古もやってるお店だったんで、古いレコードを販売するにあたって、綺麗に掃除するんですよ。右から左に売るようなお店も中にはあったけど、うちは結構こだわりのお店だったんで、一枚ずつ洗って。それでダメだったら捨てちゃうわけ。お金出して買っても、これは売り物にならないってやつはザクザク捨てちゃうんですよ。そういうお店にいたんで、もう何万って単位で曲を聴いてるわけですよ。実際針を置いて、聴いてみてっていうのをやってたおかげで、古いものに関してはめちゃめちゃ知ってるんですよ」
近藤「いやぁそれはそうですね」
大石「それで、うちは専門店とちょっと違って何でも売るレコード屋さんだったから、ジャンル選べないんですよ」
近藤「なるほどそれで。『こんなものまで聴いてるんだ』って思いました」
大石「それこそ古くはSP盤からね、ラテンだろうが邦楽だろうが何だろうが、レコードとしての最後の販売物くらいまではちゃんと聴いてたからね。CDになってからは掃除の仕方が変わったから、聴くものがわりと偏るようになっちゃったけど、古いものに関しては全部針を通して確認してたからね」
近藤「プリアンプを処分されたって書かれてましたけど、今はレコードを聴く環境は?」
大石「今も聴ける環境にはしてますよ。全然聴かないですけどね。今となってはレコードってもう大事なものになっちゃってるから、ものすごく慎重に扱うんですよ。だからそれがめんどくさくて、寝かしてますね」

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近藤「それと映画もお好きですよね」
大石「昔、映画の会社にも居たしね(笑)」
近藤「言ってましたね(笑)」
大石「少年時代から映画が大好きで観に行ってたから。その話も書いてると思うんだけど」
近藤「『ベスト5を選べって言われたら選べない』って書いてましたもんね」
大石「選びにくいですねぇ。自分にとってのベスト10とかはもちろんありますけど、どれを1位にするのって言われると非常に難しいですよね」
近藤「確かに。音楽もそうですよね」
大石「ジャンルがっていうのもありますしね、このジャンルで好きなのはこの辺とかって。ロックなんて選べないでしょ」
近藤「そうですね」
大石「ベスト盤を5枚選べって言われてもね、相当悩んじゃいますよね」
近藤「よく『無人島に持っていく一枚は』みたいなこと言われますけど、無理ですよね」
大石「『だったら持って行きません』って言いますよね(笑)『もうないほうがいいわ』みたいな」
近藤「『これ聴いちゃうとこっちも』ってなりますしね」
大石「『これしか聴けないんだ』と思ったら辛すぎますよね」
近藤「それだったら逆に音楽がない方がね」
大石「なければないで、現地のもので創造する方がメインになってくるんじゃないかなって気がします」

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近藤「それともう一つが『食』ですね、『食』」
大石「それはもうね」
近藤「こだわり強いなぁって思って」
大石「昔はさらに温泉とかね、いろいろあったんですけどね。わりと若いうちに凝ったんで、今はもう仙人みたいな気持ちになれるから、ゆったりとした気持ちでやってますけどね」
近藤「お酒も飲まれますもんね」
大石「酒もめんどくさいですよ。相当なこだわりがあるんで(笑)」
近藤「お詳しい感じですね」
大石「うるさいですよね。嫌だなって思いますよ自分でも。ただまぁ今は自分で楽しむだけにしてるんで」
近藤「でもそういう知識とかがあると、若い子たちと話すと『へぇ』って言ってくれますよね」
大石「『へぇ』って言ってくれるのは若い子じゃないですね」
近藤「(笑)」
大石「若い子からすれば『うるせぇジジイだな』って思うだろうから(笑) 結果的にうるせぇジジイだしね(笑)」
近藤「いやいやいや」
大石「仕事柄若い連中と付き合ってるじゃないですか、しかも本格的に若いわけですよ。高校生くらいの子も身近に居るわけで、そこから20歳過ぎくらいの子たちが居るじゃないですか、それからしたらもう父さんよりも上の世代ですよ。そうなってくるとね、俺が何か言ってもうるさいから聞く耳持たないんだよ」
近藤「いやいや、ちゃんと聞いてくれてると思いますよ、内容があるから。内容がない人は『ただのオッサンだなぁ』と思われるかもしれないですけど」
大石「『うるせぇな』とは思ってると思うんで(笑) だからあんまり余計なこと言わないって思って、最近は言わないの(笑) だから興味が合って話が合うのは、もっと上の人たちですよね」

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近藤「対談にあたって、改めて最初の方から読ませていただいて。当たり前ですけど、いろんなことを経験されて、今の大石さんの作品とか仕事があるんだなと」
大石「あんまり変わってないですか、テイストは」
近藤「テイストは変わってないですけど、背景にある生活感が(笑)」
大石「(笑)」
近藤「仕事に対する理念とかは当然ビシッとしたものがあるんですけど」
大石「生活感変わってますか(笑)」
近藤「引っ越してるじゃないですか」
大石「ああ、最近ね」
近藤「16年ぶりに引っ越すっていう」
大石「お客さんに『引っ越したんでしょ』って言われて、『なんで知ってんの?』って(笑)『自分で書いてんじゃんよ』『ああ、書いたわ』って。『ゴミがすごかったんでしょ』って言われて」
近藤「45リットルのゴミ袋が40袋とかって」
大石「1回で捨てたのが40なだけで、それを3回くらいやってるんですよ。引越の翌日もまた戻って管理人さんなんかと話しながら処分したんだけど、『まだあるんだ、すごい荷物だね』って言われるくらいすごかった」
近藤「これは持って行こう、これは捨てよう、っていうのはどういう切り分けをしたんですか?」
大石「入んないものはもう泣きながら捨てるしかないねってものと、大事だと思ってたのに魂が抜けて、抜け殻になってるものとかもたくさんあったりして。でももう引っ越さないといけないから処分しなきゃいけないっていう、選別の作業に入るじゃないですか、その時ってもうただただ選別するマシーンになるわけで。だけど後からしたら『あれ、あったよな』って言いながら、『そうかあの時処分したんだ』って思い出して泣くんですよ。もうしょうがないですよね」
近藤「僕もちょっと前にプチ断捨離したんですよ、倉庫の中とか。そうすると、音楽制作をがっつりやってた頃があったんで、プラグインの箱とか」
大石「ものすごいいっぱいありますよね」
近藤「ソフトの箱とか、あれって今はないじゃないですか、ダウンロードするようになったから。今となっては元箱とか全部いらないんで、そういうの全部捨てて。『昔は取っておかないともう一回インストールできなかったんだよな』みたいなのは結構ありましたね」
大石「それはソフトウェアだけど、ハードもあるじゃない。スタジオワークをする人たちはハードウェアが地獄のようにあったわけじゃないですか。借りればいいんだけど買っちゃうものもあるじゃないですか。昨日もスタジオで話をしてたんですけど、スタジオの主人が作家に『これって何か知ってます?』って、スタジオの中にあるモノを指して言うわけですよ。それで上から順番に説明して、『これ昔、スタジオになかったら絶対商売にならなかったんですよ』っていう。一つ一つが大きな機械だったけど、それが全部いらなくなったんだよねって。ツールス使ってたって全部プラグインでどうにかなっちゃうわけですよね。この40年くらい、山のような機材をみんな抱えて生きていたわけじゃないですか(笑)」
近藤「今のクリエーターが知らない機材ってのはありますよね」
大石「山のようにありますね」
近藤「本当にコンパクトになってますしね」
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大石「さらにビンテージとかになってくるとまた話が違うわけじゃないですか。『これ昔ビートルズが使ってたのと同じやつなんだよ』みたいな話をすると、50年前の機材ですよね。それを維持して使えるようにするためにはメンテナンスをマメにしないといけないけど、もう部品もないし。フェアチャイルドとか、ああいうものの部品はもうバラしてパーツにする以外方法がないんですよね。でもそういうものって本当にいるのかっていう。骨董品的な意味合いだったりもするし、マイクとかもそうですけどね。『100万円のマイクなんているの?』って(笑) 難しい判断ですよね。『いつ使うの?』って言われたときが一番困るじゃないですか。『確かに』みたいなね」
近藤「デジタル系のものは基本的に古いものは新しいものには勝てないですからねぇ。ギターなんかはビンテージがやっぱり良いんだよっていうのはありますけど」
大石「特にアンプとかね、HAとかもそうだし」
近藤「シンセとかキーボードとか、コンピューター系はどうしても思い出とか骨董品になっちゃってますけど。そこら辺の境目がね」
大石「スタジオマンからするとまた全然感覚も違うわけじゃないですか。これはいるんですよ、いらないんですよ、みたいな話がいっぱいあるからね。機材レンタルの会社とかも仲の良いところがあるけど、『大変だね』『大変だよ』って(笑)『持ってるだけでも大変だから』って。全部メンテナンスしてるんだから、大変だわって思いますよね。例えば昔はSSLみたいな、ドバーンと大きなミキサーがどんなスタジオにもあった」
近藤「でっかいスタジオがなくなるときに、処分品が格安で出てたりしましたよね」
大石「処分品の中で一番いらないのがSSLになっちゃうんですよね。中でも台がいちばんいらない。そこに1個ずつチャンネルが刺さってて、それをバラして、また使いやすく混ぜたりしてやってたけど。でも最後面白かったのが、ツールスがメインになってきたときに、みんなSSLの上にMac置いてたでしょ(笑) これが究極の形なんだなって思って。全てが変わるって思ったもんね」
近藤「本当ですね」
大石「そのツールスすらまた変わるわけじゃないですか、別のものも出てきたりして。また業界がそっちの方向に変わっていくかもしれないし」
近藤「そんな時代を大石さんは生きてきたんだなっていうのを」
大石「あなたも生きてきたけどね(笑)」
近藤「(笑) というのを記事で見させていただいたということで。とってもいろんなことを感じられる記事を、ありがとうございました」
大石「ありがとうございます」


■セッション2:仕事

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近藤「僕と大石さんが近いなと思うのは、音楽プロデューサーもクリエーターも運営もやられていて、いろんなことをやっているというところなんですが、大石さんは肩書きを聞かれたら何と答えているんですか?」
大石「フリーター」
近藤「ああ、自由にいろんなことをやってるということですね(笑)」
大石「そうですね(笑)」
近藤「なるほど」
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大石「僕が業界に飛び込んだのが28歳で、それまではレコード屋だとか、それに絡んだ仕事とか、バンドもやってましたけど、制作もやっているメーカーに就職したんです。その会社がやっていたのは、映画の制作・配給、Vシネ、アニメーションで、そこにさらに出版だとか音楽だとかいろんなものを手がけるようになった頃。ただ、自分の仕事は制作ではなく営業だったんです。だけどせっかくメーカーに入ったんだし、つくれる環境にいるのにつくらないのはいけないと思ったから、つくるための勉強をしようと思ったんです。それで、自分のやっていた仕事とは全然違う分野だったんだけど、アニメーションのプロデューサーになりたい、なるしかないなと思ったんです。それも1年間でなってやるっていう野望を持って。だけど、僕は営業部の人間で、つくってるのは制作部で全然別の部署。予備知識はあったけれど実戦は知らないから、自主的に見て覚えるしかないということで、自分の本来やってる仕事以外の時間で、丁稚のように、勝手に行って勝手に勉強してたんですよ。そこのボスが僕のことをかわいがってくれて、ボス付きのような形で『行っていいすか?』って言ったら『おお、勝手にやっていいよ』みたいな感じで、勉強をとにかくしたんです。ただ会社だから、営業部の僕が暴走したところで絶対制作なんてできるはずがないんですよ。制作部の中でプロデューサーが生まれて、ディレクターが居て何が居てってなるわけで。だけど、おかげさまで1年くらいでだいぶ仕事の構造がわかるようになってきて、会社の仕組みだとか、どうやって会社が成り立って動いてるのかというところが見えてくる。その中で、どこのメーカーでもそうなんですけど、営業と制作って断絶してるんだな、一瞬仲が良いフリしてても実は悪いんだっていうのがわかってきたんです。そこで、僕が徐々に幅をきかせるようにして、営業と制作の橋渡しができる、鎹(かすがい)みたいな立場になっていったんですね」
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大石「で、当時はゲームとか小説をアニメ化するっていうのがすごく流行っていて、僕があるゲーム作品をアニメ化したくて、大阪のあるゲームメーカーと仲良くしてたんです。大阪に行く理由をいっぱいつけて、何かにつけて大阪に行って接触して、大阪のゲーム事情の坩堝(るつぼ)に入って、こっちの会社の仕事を関連づけて、紐づけて、自主的に動いていろんなことをやってたんですよ。そういうアウトローみたいなことをするのは昔から得意だったんだけど、メーカーの中でそれをやる奴ってなかなかいなかったんですよね。だけどそういう勝手なことができる立場にいたんで、それをうまく利用してやってたんです。そしたら何と、まさにその作品をアニメ化するって話が会社で動いていて。だけど、見事にトラブルが起きたんです。本末転倒くらいの大トラブルが起きて、原作元はブチ切れて、アニメの制作は勝手に動いて『原作はそうだけどアニメ的にはこうしないと嫌だ』みたいな、恐ろしい話になった。それでもうこの仕事は止まるぞってくらいのところに行ったときに、火を消せる人間が唯一俺だったんです。原作元とベッタリ仲良くて、そこの社長とも仲がいい。そういう立場の人間が普通では誕生しないところに誕生しちゃってたんですね。で、制作をやってたプロデューサーが匙を投げてしまって、誰かに変わらなければできないって話になったときに、そのアニメのボスと自分の上司が、俺のデスクのところにやって来たんです。『珍しいなこの二人が』と思ったら、ボスが『Oくん(上司)さ、悪いんだけど、大石をこの作品のプロデューサーにしていいか?』って勝手な話が俺の後ろで始まって、上司から『お前そんなこと頼まれて、自分の仕事に影響出ないのか?』と聞かれて。『出ずにできると思いますけど』『そうか、じゃあ、お願いします』みたいな感じになって、ある日突然『プロデューサー大石』が誕生しちゃったんです」
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近藤「へぇ、大抜擢な感じですよね」
大石「大抜擢。全く関係ないのに。だけど、僕がやれば火は消せるし、制作側の交渉もできるから、別にもう一人現場を見るプロデューサーを立ててくれて、全体を見るのが大石みたいな話が成立して、そこから作品づくりが始まったんですよ。だから慌ててコンテを全部見直して、『これはダメこれはダメ、全部直してください』みたいな話を、言ってみれば素人なんだけど、やるわけですよ。進んでるところも全部直すから、いろんな人が入って来て文句言ってきたりとか、いろんなことがあったんですけど、まぁなんとかその作品はOVAとして4作出して、4作ともCDTVでは1位を取ったっていうところまで売れたんです。それで今度は、僕は営業部だから、営業の立場でこの作品をセールスするにはどうすればいいかっていうところに行けたわけ。だから一番面白かったのは、僕がその作品をプロデュースしている間、いろいろあって立場が変わって、最後はこの作品を自分がお店に営業マンとしてセールスしに行ってたんです。そこまでできたって人は、多分世の中でほとんどいないはずですよ」
近藤「そこが今の『全部をやる』っていうところに繋がってるんですね。つくってプロモーションして…」
大石「最後自分で売ったっていうね。グッズをつくったり、イベントもやるし、司会もやるでしょ。で後になってその作品をもう一回別の会社でつくり直したときは、テーマソングも全部自分でつくってたから。作詞も作曲もやって」
近藤「フリーター大石さんの完成ですね」
大石「まさにフリーター」
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近藤「そんな歴史があったんですね。それで、音楽プロデューサーの道に入られたということですか?」
大石「そうですね。アニメをやってる当時から、お店の中で自主レーベルをつくって、そこで『わらしべ長者企画』っつって、いろんな声優さんとか知り合いの子に『何か描いてくれ』って紙渡して描かせて、僕が印刷代を出してまずは同人誌をつくって、それを売った利益でまた違うものをつくるみたいな企画をやってたんです。それが最終的にCDつくったりとか、プロモーションビデオつくったりとか、いろんなとこまで発展していくんですけどね。途中からは会社からも認めてもらって、会社のお金でやるようになったんですけど。でも社内で勝手にレーベルつくって、それを会社で売ってくれ、流通に乗せてくれって商品登録のマスターをつくってやったら営業から呼び出されて、『テメェ何勝手なことやってんだ』って(笑)『大丈夫大丈夫、売れるようにはしてるから』って(笑)」
近藤「でもその時も、いわゆるサラリーマンですよね」
大石「サラリーマンです」
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近藤「サラリーマンでそういう動きできる人ってあまりいないですよね」
大石「いないね、だからもう不届者ですよね、会社の連中からすれば」
近藤「でもそれで評価が上がっていくってことですよね?」
大石「最初のうちは認めてもらえないし喧嘩もしましたよ。すごく自分の立場が不利になったこともあれば、イジメにもあったんですよ。元々胃潰瘍があって、大きな穴が3つ、ある年の8月に胃カメラ飲んで発見されたんですけど、12月には7つに増えてた(笑)」
近藤「(笑)」
大石「ものすごい超絶なストレスをかけられて、ド酷いイジメにあったりもしたんですけどね。それにもめげずにやっている若さがありましたよね、あの頃は」
近藤「それができる人は少ないですよね」
大石「で、結果その後倒れるっていうね。死にかけるっていうオチもついてますけどね」
近藤「そこで培った大石さんのパワーなんですね。それがスパイシーっていう所以ですか(笑)」
大石「そうそう、『スパイシーさん』として活動してたのはそういうこと」
近藤「そういうことですか」
大石「別名で、みたいなね。その後にラジオやりたいと思って、どうやったらラジオの制作ができるかとかって入り込んでって、そこでラジオというものを巧みに使ってプロモーションするという。CDをつくりながら、そのCDを歌わせる子のラジオ番組をつくって一緒になって喋って。自分が喋りたいだけだったみたいなもんなんですけど。だからわりと幸せですよ。勝手なことをやれたから」
近藤「でも、普通はそれをやろうと思っても誰かに止められて、諦めちゃうじゃないですか。それがそのままできちゃうっていうのが、大石さんの人間力じゃないですか」
大石「環境づくりをしたところもあるし、付き合ってくれた人もいたというのもありがたいし。その都度、出会う人がいるんですよ」
近藤「キーマンみたいな」
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大石「そう。その人とうまいこと絡んで。でもその人はみんなやがて居なくなる。出会っては消えていくんだけど、その都度必要とされる人とうまいこと出会って。大きく儲かるようなことは一つもやったことないですけど、自分としてはやりたいことはやれてるんで、ラッキーですよね。その分大変なこともいっぱいありますけど」
近藤「ではその後が完全な音楽業界ですか?」
大石「そうですかね。ここ数年、気づいたらもう7年くらいアイドルやってるんだよね」
近藤「それまでアイドルの制作とかには関わってなかったんですか」
大石「ラジオの制作をしているときに、週に7番組くらいつくってた時期があるんですよ。その頃、初めてアイドルさんの番組をスポットでつくれって話になって。アイドルなんて会ったこともないし、『はぁ、すごいなぁ』みたいな感じで。それがアイドリング!!!の元メンバーの子だったんだけど、2本その子で番組をつくったんです。台本から何から全部やって。そのときにプロダクションの人と『やってみたら面白かったですね』っていう話になって、それなら『このまま終わらせちゃうともったいないから、番組として続けた方が』って話したら『そうですね』って乗って来てくれたんですよ。で、その子がもう一人アイドリング!!!の子とお笑いのコンビを組んでいて、M-1にも出てたんですよ。それで『今年も出る』って言うから、じゃあそれの応援もするような番組をつくろうかって感じで始めた番組があって。そこで主題歌としてCDもつくった。それがアイドルと初めてちゃんと絡んだ仕事でしたね」

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近藤「それまである意味正統派とも言える音楽に親しんできた中で、アイドルの音楽の仕事にいくわけじゃないですか。音楽という意味でそこの違いというか、感じたこととかはあったんですか?」
大石「僕はレコード屋だったんで、本当になんでも聴いてるわけなんです。昔のアイドルから、ちょうどおニャン子クラブくらいまではレコードで売ってたから、そういうのも全部聞いてて、その中でどんなジャンルでも好きなものって出てくるじゃないですか。歌謡曲もポップスもロックもそうだし、レゲエだろうがソウルだろうが。そうやって何でも聴いて好きだったから、そういうものに対する抵抗感っていうのはゼロなんです。だからアイドルもたくさん聴いてて、いっぱい知ってるし、好きだったし」
近藤「じゃあもうジャンルじゃなくて、良いモノが好きっていうことですね」
大石「まさにそうですね」
近藤「日本の音楽リスナーって、海外の人から『ジャンルで判断する』って思われているみたいで。『アイドル音楽』『歌謡曲』『ポップス』みたいな感じで好き嫌いをハッキリ分けちゃうねって」
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大石「昔は特に、偏見じゃないけど、アイドル聴いてるのは幼稚だとか、そういう風潮ってあったじゃないですか。今ほどやわらかくなかったからね。だから、変な話だけどアイドル聴くのはオタクだとか、親衛隊やってるのは何とかだみたいな、そういう偏見みたいなのも入ってたと思うんですよね。僕が難しいと思うのは、例えば『B’zはロックなのか、ポップスなのか』と。確かにロックなんだろうけど、平たく見るとポップスじゃんっていう、ポップスの中のロック系みたいなジャンル分けができるんじゃないの、みたいな。じゃあ日本のロックって一体何なの? と。紫なのか、ジョー山中なのか、内田裕也なのか、そういう人たちがロックで、そういうのはロックじゃないポップスだとかって、その辺の線引きってすごく難しかったと思うんですよ。佐野元春はポップスなのかロックなのかって、もうそれって時間とやってるものによって結構印象って変わったりするじゃないですか。だから昔はそうだったんだと思いますよ。今は随分その隔たりがないというか、平べったくなったなと思いますよね。ラップみたいなものがアイドルでも曲中に取り入れられるようになったりもして。そういう意味ではミクスチャーされて、こなれて、昔よりも尖ったものをやさしく聴くことができるようになってるんじゃないですかね」
近藤「そうですね、いろいろ情報も溢れてますからね、聴きやすくなってきてるかもしれないですね」
大石「だからセンスとして日本って独特の音楽性があるけど、そういう意味では他の国に比べて遥かに秀でてますよね」
近藤「アイドルの音楽ってものすごくいろんなジャンルが詰まってますよね」
大石「今は特にそうだと思いますね」
近藤「なので『アイドルのジャンル』って言っても一言では終わらないですよね」
大石「BABYMETALをメタルとして捉えるのか、ガールズポップとして捉えるのかみたいな話もあるけど、海外の人たちは『めたる』っていう気持ちで見てくれるわけじゃないですか。どちらかといえば日本の方がジャンルを分けようとする。だからもう日本人の癖なんですよね」

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近藤「大石さんがプロデュースされているStella Beatsさんの音楽をつくったり、クリエイトするときに意識していることってあるんですか?」
大石「今はグループが事務所を移籍して、そこの音楽プロデューサーを立てたから、もうそっちにお願いしてるんですけどね。自分がやってた頃は、まぁその都度どんなテーマでやろうっていうのはあったんですけど、僕はわりとつくってるものに一貫性がありますよ。一定の枠からこぼれられないの。何か挑戦したところでその枠の中から出てないなっていうのは自分でも思いますよね。これから新しくアイドルユニットを立ち上げて動かすんですけど、何も変わんないなって思います(笑)」
近藤「ああ、大石さんの監修だから」
大石「俺のサウンドだねっていう感じはすごくしますね、自分でやりながら。それは作曲家がいてアレンジャーがいて、僕は詞だけしか書いてなかったとしても、出来上がったものはそっちになるんですよね」
近藤「『大石サウンド』みたいな」
大石「になるんじゃないのかなって気はしてますけどね」
近藤「それはものすごくクリエーター寄りですよね。中にはアーティストに合わせて変えてくる人がいるじゃないですか」
大石「でも所詮ね、その枠を出られないんだよな。声優さんでもいろんな曲を何人もやらせてもらったけど、楽器の編成とかアレンジとかサウンドは違っても、振り返ってみると基本的に大きく違うってことはなかったなって気がしますね」
近藤「クリエーター、アーティスト寄りなのかもしれないですね。何をつくっても大石さんになるっていうのは」
大石「最終的にはそうなんだなっていうふうに思うようになりましたね」
近藤「楽しみですね次のプロジェクトも」
大石「そんな変わってないと思います(笑)」
近藤「じゃあStella Beatsファンはそのグループもきっと好きになりますか」
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大石「聴けると思いますよ。Stella Beatsとはテーマが違うんで、持ってるものとか背負ってるテーマが全然違うから、別物ではあるけれども、そんなに極端な違和感はないかもしれないなって思いますね」
近藤「歌ってるメンバーとか、声質とかに合わせて楽曲をチョイスしたりつくったりすることもやっぱりありますか」
大石「もちろんそうだけど、どっちかって言うと、仕上げるときに『どうこの子たちの声を料理するか』っていう方向に重きをおいてますよね」
近藤「合わせてつくるってパターンと、『こういうのを歌えるようになってほしいから』ってつくって、そこまで持って来させるパターンってあると思うんですよね」
大石「特にStella Beatsなんかを見てると思うんですけど、キャリアを積んでいくことによって、メンバーが変わったりするのも影響するんだけど、やっぱり曲が育ってますよ、何年かかけて。ずーっと歌ってる曲もあるけど、いちばん盛り上がる曲とかっていうのは、ずっと人気があったりするし。曲が育っていく様を見ているのは面白いですよね」
近藤「それは素晴らしいことですよね」
大石「メンバーが変わって歌うことによって生まれ変わるなとも思うし」
近藤「それは今後も楽しみですね」
大石「今はクリエーターが変わったから、アプローチが変わってきてる。でも、それも時間が経って育っていくと、『誰がやってもステラビの曲はステラビの曲ですよ』っていうふうになるかもしれない。メンバー本人たちが、自分たちで曲をどう育てていくかっていうところに至ると思うので。そこまで行けば彼女らも一人前なんじゃないのって思う」
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近藤「メンバーが何回も変わられてるじゃないですか、その変わった後の立て直し方とかは何か意識されてるんですか? 例えば主戦力が抜けちゃうことによって、パワーダウンしてしまうグループもあるじゃないですか」
大石「抜けてマイナスとか入ってプラスとかって考え方があまりなくて。抜けてダメージがあるようだったら抜けさせなきゃいいじゃん。抜けることによって新たに足し算ができるようになるっていう方向でなければ、いなくなるとか辞めることに意味がなくなっちゃうので。だからネガティブな卒業とかっていうのは自分の中にはないので。辛いとか悲しいとか、感情論はあったとしても、チームにとっては全てがプラスに動いてるって僕は思うようにしてるから。それで『はぁ』って落ち込んだことっていうのは一回もないですけどね」
近藤「それでやっぱりグループは進化していってるってことですね」
大石「全く違うものになれますからね」


■セッション3:今後

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近藤「音楽の仕事に関しても、プライベートに関しても、今後の話をしたいと思うのですが、また16年同じところに住むんですか?(笑)」
大石「住みません(笑)」
近藤「新たに住まいを構えた場所を選んだ理由って何かあるんですか?」
大石「便利がいいところ、雰囲気」
近藤「ずっと横浜の方だったんですよね」
大石「僕はもう生まれてから横浜から出たことが一度もない人で、東京に住むことはないと思ってたんですけど、一応今東京都民になってしまいまして。ビックリですよ」
近藤「新生活になってから心がけてるみたいなことはあるんですか?」
大石「そんなに変わってないつもりでいますけど」
近藤「お酒減らそうとか」
大石「増えてますね」
近藤「(笑)」
大石「間違いなくね(笑)」

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近藤「今後はStella Beatsと新しい関わり方をされて、新しいグループも始めるということで、展望というか、こうしていこうみたいなのはありますか」
大石「現状では、ないんですよね。フリーターなんで、いろんな仕事が来ればいいなって思いますけど(笑) 今までは会社勤めだったから、いろいろなことができなかったんですよ。その仕事の範囲でできること、ってなるから。そういう意味でのクリエーションっていうのはどうしても制限がかかっちゃってるところがあったから。ただ早くしないと、もうクリエーションできない歳になってるなって感じるんで。脳味噌相当動いてないですね、昔に比べると」
近藤「そういう意味では、ストッパーが外れた本当の大石さんが、この先見られるかもしれないってことですね」
大石「そういうものをやってくれって言われたらできるかもね」
近藤「制限がないっていうのはそういうことですよね。フリーのいいところ悪いところありますけども、自由にできるっていうことで、本当の意味でのフリーターですね」
大石「そうですね。フリーランスなんてそんなカッコいいもんじゃないですよ(笑)『フリーだ、どうしよう』みたいな感じですから。だから全然想像してなかったようなお仕事の話とかが来るといいなぁ、みたいな。そういうのがいっぱい来るようになると、楽しいだろうなって思いますよ」
近藤「今まで一回もやったことない仕事で、『こういうのやりたい』みたいなのってあります?」
大石「うーん。誰か責任者がいて、『これを任せるからやってよ』って言われたい」
近藤「それって今までと一緒じゃないですか?(笑)」
大石「違うんですよ、自分が責任者になってるのが多いから」
近藤「あーなるほど」
大石「『あなたの好きなように思いっきり動いてごらんよ』っていう仕事がないんですよ、もう歳も歳だし。若いうちってそういう感じじゃないですか、『お前がやるの俺が責任持ってやるから』って。『お前が自分で責任持て』ばっかりになっちゃうと、自由にやらせてもらうっていうニュアンスが違うじゃないですか」
近藤「それはキャリア的にも年齢的にもなかなか難しいですよね」
大石「だからどっかの若い人が、俺のことを」
近藤「若い人が(笑)」
大石「だってもうおじさんに言われたっておじさんの仕事しかないじゃないですか。だから若い人が『ベテランの人にぜひ思いっきりやっていただきたいんで』って言ってくれたら嬉しいなと思いますよ。『マジで? いいの? 予算は?』『気にしなくていいっすから!』みたいなことを言ってほしい」
近藤「それいちばんいいやり方じゃないですか(笑)」
大石「だからいちばんいいじゃない(笑) だってやれないもん」
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近藤「まあそうですね、それが理想ってことですね」
大石「理想ですね。それでうまくハマっちゃって『またお願いしますよ!』っつったら『やったぜ!』みたいな。そういう面白そうな仕事がしたいですよね」
近藤「(笑)」
大石「結局知らない間に頭からお尻まで面倒見ながらやってるんですよ。それが癖にもなっちゃってるんで。だから『ここのパートだけ好きにやってもらって構わないんで、お願いしますよ』って言ってほしい」
近藤「それは仕事の種類じゃなくて、もう完全にスタンスの話ですよね」
大石「スタンス。でもどの種類になるかはわからないけど、どこだってやれるってつもりがあれば、『その仕事だったらできる』とか、『これだったらやるよ』とかって」
近藤「そういう大石さんも見てみたいかもしれないですね。本当に自由にというか、リスクを考えず自由にやれるってことですよね」
大石「どうしてもコンパクトになっちゃうんですよ、仕事の仕方がね。守る部分が大きくなっちゃうわけじゃないですか。守んないって言ってるんではなくて、『守るよりも攻めのことを考えた仕事をしてください』って言ってほしいですね」
近藤「確かに。でも、大石さんのやり方とか生き方だったら、そういうふうにしてくれる若者も出て来るんじゃないですか?」
大石「ないですね(笑) そんなバカいないですね(笑)」

● ● ●

 
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近藤「音楽に関しては、新しいものをつくるっていうより、今までのものを継続させて、さらに厚くしていくみたいな方向ですか?」
大石「そんなつもりはないですよ、新しいのやれるもんだったらやりたいけど、クリエーションが落ちてるんだって(笑)」
近藤「でも自分でつくらなくても、クリエーター動かすのもクリエーターじゃないですか。だからそういう意味ではいろんなことができるんじゃないですか?」
大石「そうねぇ、信頼できるクリエーターって言うとおかしいけど、新しくて、尖ってて、凄いもん持ってるな、こいつとやりたいなって人には出会ってないね。いい曲とか面白い曲はあるけど、みんなどこか似てるもんね」
近藤「まぁそうですよねぇ。今若い子たち、何考えてるかわかんない子多いですからね(笑)」
大石「それは(笑) 何とも言い難いので(笑)」
近藤「ミュージシャンの話ですけど、言葉にして伝えてくれない子が多いから。わりと部屋に籠ってずっと音つくってる子が多いから、『音聞いたらすごいけど、喋ってるときは君がそんなすごい子だってわかんなかったよ』っていうことが」
大石「ああ、それはあるかもしれないな」
近藤「だから、実は周りにすごい子がいるかもしれないですよ」
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大石「居てくれたら面白いというか、期待したいですよね。だから、出来てくるものがこっちの想像を超えてるなっていうものは、あんまり聴けてないですよね。前はちょっとそうかなって思う瞬間ってあったけど、今特別すげぇなって思うことはないかな。一つ、ある日本のバンドを『すげぇ、センスいいな』って思って聴いてて、でも『アルバムで聴けるほどじゃないな』くらいのレベルだと思ってたんだけど、この間誰かと話してたときに『あれだって○○の真似じゃん』って。結局洋楽の焼き直しだったりしてるわけですよ。それは知らない人が聴けば新しいものだけど、知ってる人が聴いたら一発で見抜けちゃうわけでしょ。それではダメなんですよね、きっと。もっと面白いものをズゴンと出してほしいよね。破天荒なものが欲しいですよ。ロック系は日本はすごくいいと思いますよ。野心的だし、革新的だし、いろんなことできるけど、みんなすごく上手ですよね。テクニックもあるし、根拠もついてるし、センスもいいし」
近藤「音楽の音だけで新しいものをつくろうとすると、なかなか出尽くしてる感があるから、そこにパフォーマンスだとか見せ方だとか売り方だとか、戦略含めて新しいものってきっといっぱいあると思うから、そこら辺が出てくると面白いですよね」
大石「そうですね。何でハイスタだけ未だにあんなに売れるのかって。分析してる人はいるけど、あの3人じゃないと出ない、あの良さっていうのが、どうやってそこまでのブランドになったのかっていうのはちょっとわかんないですもん。すごいなって思いますよね。あの横山君が、ソロでやってるやつもバーンってくるけど、ハイスタのときと意味が違うじゃないですか。それって一体なんだろうかっていう、ハイスタの良さ。そういうものが多分音楽の芯の部分だと思うから」
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近藤「なるほど。深いですね」
大石「わかりやすい例だと思いますよ。あれ超えられるロックバンド出てきてないもんね。英語でやってるっていうのもあると思うんですよ。海外も行けるし。外国のアーチストが日本人に対して『何で英語で歌わないの?』って言うんだけど、歌えないんですよね。そのコンプレックスね。そういうとこから直していかないとダメでしょうね。だから韓国人の方が英語に馴染んでるから、チャートに入れるわけなんですよね。もう入ってるじゃないですか」
近藤「入ってますね」
大石「今日たまたま昼に新大久保行ってて、飯食いながらK-POPのビデオを1時間くらい眺めてたんだけど、あのセンスは曲もニュアンスも、アメリカの、洋楽のセンスなんだよね。韓国語で歌ってるけど、あれは洋楽から持ってきてるなっていうのが明らかに出てますよね。日本のアイドルとK-POPの差っていうのが、狙い所が明らかに違ってる」
近藤「向いてるところが違うかもしれないですね」
大石「そうですね。でもやっぱり見てて気持ちいいんだよな。かわいいし楽しいし。悔しい」
近藤「まぁ、どっちがいいとか悪いとかじゃなくて、向けてるところが違うから」
大石「そうそう」
近藤「そもそも日本の作家もメーカーも、日本語で歌ってるから、きっと世界では評価されずに、日本のお客さんしかウケてくれないだろうっていう体でつくってるから」
大石「ただ、海外は海外で日本のアイドルを聴いてくれてるんで、もっと持っていき方はあるはずなんですけどね。アニメだってそうだけど、海外の人が一生懸命日本語を覚えて、勉強してやってくれてるわけじゃないですか。だからうまく日本人の方が向き合えてないんだろうなって感じがする」
近藤「なるほど…すみません、そろそろお時間のようです。今後ともよろしくお願いします。ありがとうございました」
大石「ありがとうございました。次回の連載もとっておきのネタがありますから(笑)」
近藤「期待してます(笑)」
 


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写真左から 大石孝次、近藤薫


Photo & Text:芳田賢明

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