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【連載】大石孝次の「音楽な日常」第26回

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「脳の隙間の問題」

一つの大きなイベントが終了しました。
開催までの時間は何かと日々奔走しておりましたが、それ自体が日常化していた為に、気付かないうちに視野が大分に狭くなっていたというか、思いのほか余裕のない時間を過ごしていたことに今更ながら気づきました。

意欲というものは内から発生してくるものですが、年を取るようになると知らないうちに優先順位をつけ、無理な意欲は抑制するようになります。
それでも無意識の抑制にも限界が来ると、姿を変えて欲求を満たそうと別のベクトルで行動を起こそうとします。
よくある「ストレスがたまった時についついしちゃうこと」なんていうものがそれだと気づきました。

振り返ってみると、忙しくなった、切羽詰まった、余裕がない、そんな時についやってしまう行動があります。
ここ最近、確かにその行動をよくしており、その結果を検証しながら「…なるほど、そうだったか」と納得。
以前に同じ行動をとった時のことはしっかり覚えている訳ではありませんが、きっとそんな風にどこか似たような精神状況だったのでしょう。

精神的に落ち着いてきますと、いよいよ見えるものが違ってきます。
同じ景色を見ていても、目に映るものが変化いたします。
その変化に気付いたときも、見逃しや見落としがあったであろうことに、一抹の悔しさを感じます。

簡単に言うと「損」をした事になりますので、ヒラメキやアイデアの損失は大きなロスなのであります。
ロスをし続けている時は全く気付いていない訳で、損自体しているのも分かりません。
実際、損したかどうかも、時すでに遅しで検証のしようもありません。

たまたま出会った人に「休みは何をしているか」と聞かれ、返す事が何もなくてビックリします。
休日も日常の作業をこなして一日が終わっておりました。

年を重ねていきますと、自ずと脳内の引き出しの中身は増えてまいります。
余裕のない時にそこに新しいものを詰めようとしてもつっかえてしまい、無理やり押し込めば反対側から昔のモノがこぼれ落ちていきます。

引き出しのサイズは決して一定ではありません。大きくも小さくもなります。
押したり引いたりを繰り返していれば、次第に中身が整理されて隙間が出来てくるものです。
しかし、引き出しの出し入れが少なくなって取り出すものが少なくなると、新しく入れる作業も自然と怠ってしまうようになります。

頭が回っていない、目の前のことで精一杯でいると脳が停滞しているような状況になるのです。
実はそんな時に、素晴らしいヒントや題材を、見逃したり見落としたりするものなのです。
勘が働かないのもそんな時だったりしますね。
なんとも勿体ない事です。

敏感さや繊細な感性は磨き続けなければ、すぐに曇ってきてしまいます。
日常性の中でどこに身を置いて日々過ごすか、その精神性がクリエイティブな感性の在り方に大いに影響いたします。

停滞した脳の活動を新たに刺激して、徐々に回転させていかなければなりません。
残された時間の中で何を生み出すことが出来るのか。
自ら何かを背負い、また先へとノロノロと進みだすのです。

若かりし頃の無軌道な意欲はなくなってしまいましたが、墓碑銘に刻むためのものと向き合うことになるかもしれませんね。

カズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞され、それにインスパイアされて今回は書いてみました。

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